オーク
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さて、今回の獲物はオークと呼ばれる豚頭の魔物だ。
ゴブリンと同じく繁殖力が旺盛で、放っておくと際限なく増える。
オークは通常は森の奥深くに巣を作る。
王都から南へ徒歩3日程の距離にある、通称魔の森が今回の依頼の場所だ。
ザザにとってはさほど困難でもない依頼である上、報酬もそれなりだ。
そして何より、ザザにとってこの手の作業は慣れたものなので、特に苦にはならない。
準備を整えたザザは魔の森へと向かう。
森の中は薄暗く、不気味な雰囲気を醸し出していたが、ザザは特に気にすることなく足を進めていく。
しばらく歩くと、開けた場所に出た。そこには既に数匹のオークの姿があった。
どうやら、先客がいたようだ。
オーク達はザザの姿を捉えると、雄叫びをあげて襲いかかってきた。
しかし、ザザは慌てることもなく、落ち着いて対処する。
迫り来るオークの棍棒を最小限の動きで回避すると、すれ違いざまにその首を切り落とす。
更に襲い掛かってくる2匹目のオークの攻撃は、屈み転げることで避け、立ち上がる勢いで空中に跳ね上がり、頭部を切り飛ばした。
これを秘剣・飛竜という。
まあザザが勝手に名付けているだけだが。
3匹目は仲間の死体を踏み越えて、ザザに掴みかかろうとしてきたが、ザザはその手を難無く避けると、逆に相手の腕を掴み、背負い投げの要領で地面に叩きつける。
そして、相手が怯んだ隙を逃さず、喉元に剣を突き刺した。
これぞ邪剣・穿ち鳥。
これもまたザザだけが知ってる秘剣だ。
必殺剣なりなんなりの命名はザザの密かな趣味である。
こうして、ザザはあっという間に4体のオークを仕留めてしまった。戦いが終わると、辺りは静寂に包まれる。
ザザは死体の処理に取り掛かる。
まずは討伐証明となる牙をへし折り、腰の袋へと入れる。
そして匂い消しの粉をふりかけ、余計な魔物がよってきづらいようにする。
作業を終えたザザは、空をみあげた。
日はまだ高いが、森ではすぐ暗くなる。
「戻るか」
ザザは帰路についた。