表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/24

異界の者

 お祭も終わり、人はまばらになってきた。

私達は楽しい余韻で、その場から離れることが出来ずにいた。

二人共言葉少なく、街を見下ろしていた。

何故か、私はもう二度と楽しい事がないような不吉な予感に襲われていた。


 いつの間に辺りの人がいなくなっていた。

「そろそろ帰るわね。」気持ちを抑えてやっと言葉にした。

「ああ、そこまで送ろう。」そう言ったシロウも、少し寂しそうに見えた。

その時、暗闇から人影がふらりと現れた。

よく見ると木村君。だけど、木村君じゃない、と本能的に感じた。

まるで人形のように表情がなく、瞳は数日前に見た時と同じ漆黒の闇。

木村君どころか人間かすら定かではない。恐怖に足がすくんだ。

私を見つけ、引き寄せられるように近づいてくる。


 木村君の視界から私を遮るように、シロウが私の前に立った。

シロウは困惑したように「何が起っている?結界下なのに。」と呟いた。

そして、何か呪文のような言葉を小さく唱えた。

次の瞬間、シロウ自身が神々しい光を放ち、刀を手に綺麗な構えで立っていた。

木村君、怯むこと無く人とは思えないスピードで間合いを詰めてきた。

シロウは、むかえ撃ったが少し遅れ、木村君の拳がシロウの頬を掠めた。

一度は触れることを許したが二度目は無かった。

 シロウは、木村君に向かって斬りかかった。よく見ると木刀だ。

木刀なら人は切れるはずはないがないのに、一瞬本当に木村君は切られたのではないかと思った。


 倒れた木村君を抱え、シロウはベンチに寝かせた。

しばらくして目を覚ました木村君は、何も覚えていなかった。

しかし、纏っていた異様な気配はキレイに祓われていた。

彼は、介抱していた私達に迷惑をかけたと、お礼を言った。

そしてシロウを見て「彼氏なの?」と聞いた。

シロウと私は顔を見合わせた。

シロウは私から目を話さず「彼氏かは知らぬが、俺にとって大事な人だ。彼女を傷つけることは許さない。」と強い口調で言った。

木村君は、シロウの抑圧感に『二度と近づかない。』と約束をして帰っていった。


 私はまだ状況が理解できずにいた。

「あれは本刀だったよね?何故人が切られたように見えたの?」

「木刀だが、ここの御神木の樫の木で作られた木刃だ。人は切れないが、悪霊や異形の者は切れる。」

私は理解出来ずにいた。

色々聞きたいことは山積みだけど、何から聞けば良いか分からない。

しかも門限はとうに過ぎていた。

明日出直して話を聞く以外無かった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ