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烏ノ騎士ノ復讐譚  作者: イトセ
1/1

原初の悪意

是非とも読んで貰えたらな、と。

投稿は不定期ですが1500字位のペースで。

人は、自分と違った者を虐げる。

それは、神話の時代が終了し、人が固有の進化を遂げた今でも変わらなかった。

自らと同じ者と郡体を築き、枠の外側に対し徹底的に痛めつける。

例え思想が薄い者が居たとしても、それは周りや親から押し付けられる。時に、子供の悪意というのは留まるを知らない。

「さとからでていけー!」

「でていけー!」

金色の髪、尖った耳、鋭い犬歯、凡そ『イエヴォ』と呼ばれるヒトガタの1種の子供が宣言する。

限度を知らぬ子供達の悪意が、異端を苦しめる。それは良く見る光景だった。

放物線を描いて子供の拳大の石が飛ぶ。それは無垢な憎悪を乗せて、対象にぶつかる。

「………って…!」

舗装されていない路上に幾らでも落ちている石が、道を歩いていた少女の頬に当たる。小さく声を漏らすと、手入れされていない真っ黒な髪を揺らした。

「でていけー!」

「でていけいみごー!」

揃いに揃って罵声を飛ばす。

彼らが『忌み子』を理解しているのかは定かではない。しかし、確実に篭った憎悪は標的の少女を傷つける。

深紅の血が、切れた頬から垂れる。

「るっせぇ!ばーか!」

反撃とばかりに少女は叫ぶ。

手入れされていない、ぼさぼさの、漆黒の髪の間から、異質な血色の眼が覗き、睨む。

その異様な雰囲気に、虐めの主犯たる子達はたじろぐ。

もしも、彼女の事を知らない人が見たのなら、こう称するだろう、『悪魔の子』と。

「う、うるさい!でていけ!」

しかし先程までの威勢は無い。

優勢を崩した彼らを一瞥すると、彼女は郷の外へ続く道を歩いていった。



「スパーク!」

ギリギリ雨風を凌げるレベルのボロ屋。その蝶番の外れかかったドアを少女は蹴破り、育て親の名を呼んだ。

「おー!帰ったか。」

声の主、中年の男が囲炉裏で無精髭を擦りながら鍋を掻き混ぜていた。

「塗っとけ。マシにはなるさ。」

男、スパークと呼ばれた彼は一瞬で少女の頬の傷を見抜いて、脇の棚から薬瓶を取り出し、少女に放った。

「ん。」

少女は慣れた手つきで受け取ると、蓋を開けて中の薬を頬に塗った。

薄緑の薬が入った瓶を軽く閉めると、彼女は棚に戻した。

「髪、伸びてきたな。」

「ん…。確かに。」

スパークにそう言われて、彼女は髪を弄る。

長らく水でも手入れしていない、黒い髪。しかし、どことなく艶やかな雰囲気を纏っていた。

前髪あたりを弄っていた所、ふと彼女は頬に触れて気づいた。

「もう治ってやがる…。」

投石され切れていた頬の傷が、跡形もなく消え去り白い肌を見せていた。勿論、スパークの傷薬の効能の範囲ではない。

「やっぱコイツの所為か?」

そう言って見たのは右手の甲。彼女のそこには、禍々しい、どす黒いアザが居座っていた。これが、イエヴォの子供達の言う『忌み子』の由縁の1つ。その他は類を見ない奇怪な髪と眼の色だが。

「…いーや、ただのアザさ。偶然だよ。」

「……ま、現役霊術士サンが言うなら間違いねーな。」

意地悪な笑みを少女は浮かべ、スパークの差し出したスープの入った木皿を受け取る。そんな様子を見て彼は一言。

「良し、今日の狩りは川の方まで遠出するか。」

「ほんと?」

川、と聞いて彼女の眼が輝く。彼女は、郷の外の川が好きで稀にスパークに連れられ聴くせせらぎの音が心地よいのだ。

「狩りを教えたらな。」

彼は何時もの日課を終えたらと忠告しておく。

そうと決まれば、だ。

黒髪の少女は匙で薄小麦色のスープをかき込んだ。

こんな物を目に通して下さって本当に感謝しか無いです…。

本当に…。

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