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VOICE  作者: らんぷー
6/12

緑 Side

AM8時


体が重い


今日も作業所には行けそうもない



作業所を休んで5日


昨日生理がきて、少し体調は良くなってきた。


私は 生理前に、とてもメンタルが不安定になる。

頭痛とダルさと一緒に、抑うつ気分に襲われる。


生理がくると回復するんだけど、今日はまだ作業所に行くことはできなかった




「起きてる?作業所には電話しておいたからね?お母さん、仕事行ってくるよ」



部屋のドアを少しだけ開けて、そう言うと、お母さんは慌ただしく玄関を出て行った。



私は手を伸ばして机の上にあるイヤホンをつかんだ。


またベッドに寝転んで


スマホを開く



配信アプリVOICE




好きな配信者さんが昨日、配信をしているはずだ。


録画ボタンを押す


イヤホンをして 目を閉じた。




「こんばんは!ハルです。今日、試験でした。結果は…笑

昨日も配信してたから、できるわけないよねー!笑

追試、頑張るよ〜


今日も公園から配信してるんだけど、11月、めちゃめちゃ寒い!!

ブランコ冷たい〜!!

でも、歌うよ!リクエストしてね!」


しばらくして、ハル君がアカペラで歌い出す。


ハル君のあたたかい歌声に体中が包まれる。


私は目を閉じて、ただ身を委ねた



ハル君は、大学生だ。

実家暮らしみたいで、だいたい夜9時ころ、近所の公園のブランコから配信をしている。


配信中、ほぼ歌を歌っていて

私は ハル君の歌を聴くのが 生きている唯一の楽しみだった。


いつも200人くらいのリスナーさんがいて、思い思いにコメントしたり、リクエストしたり、ハル君と楽しそうに会話しているんだけど、私は一度もコメントをしたことがなかった。


ただ聴くだけ。


課金アイテムも買ったことはないし、ハル君は私の存在は知らない。


でも

私にはかけがえのない  


大事な人。



「寒くて体がヤバいから帰ります!今日も来てくれてありがとう!明日は配信できないと思います。寒くなってきたから風邪ひかないようにね!バイバーイ!」



プッッ


急に静寂に包まれる


私は布団から顔を出した。


目を開いて 天井を見つめる


私も 誰かに必要とされてみたいな



ふと そんなことを思った。



明日は作業所に行こう…







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