朝子 Side
「おはようございます!」
「おはようございまーす!」
「おはようございます」
「おはようございます!」
AM8時15分
就労支援所 風 のドアを職員が開ける。
外で待っていた利用者達が一気になだれ込んだ。
「森君!昨日片付けないで帰ったでしょ!」
朝子がすかさず声をかけたのは、利用者の 森 大地 28歳。
「えっ?そうだった?俺片付けたと思うけど」
「森君の私が片付けたんだよー!」
そう大きな声で叫んだのは、利用者仲間の早川 菜摘 35歳。
「まじで!?」
「森君、片付けはあなたの課題でしょ?まじめに取り組もうよ〜」
朝子は、大地の正面に立つ。
「はいはーい!」
大地は朝子を避けると、逃げるように階段を駆け上がって行ってしまった。
「もぉ〜……!」
作業所は朝から賑やかだ。
風 は
精神疾患を抱える人が、時給をもらい働きながら、就労に必要なコミュニケーションなどを学ぶ事業所だ。
生活のリズムを整え、メンタルを安定させ、一般就労を目指す。
四宮 朝子 26才
ソーシャルワーカー
半年前から、風の施設長をしている。
前任の青山は、去年開所した新しい作業所の管理者になり、そのタイミングで、朝子が施設長になった。
「おはようございます」
8時半ぎりぎりなのに、ゆっくり入ってきたのは、
去年からここで職業支援員として働いている、相原 智也。
「相原君、もう少し早く来てね。利用者さんにもそう言ってるのに、職員がぎりぎりに出勤じゃ、説得力ないでしょ」
「は〜い…気を付けます…」
智也は、めんどくさそうにそう言うと、ゆっくり階段を上っていく。
「急いで!朝礼始まっちゃう!」
「四宮さん、朝からうるさいっす」
抑揚のない喋り方。
感情のない淡々とした態度。
朝子は大きく ため息をついた




