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おれは女子高生  作者: 奥田実紀
37/42

37 またまた告白

 動揺おさまらないまま病室へ入ってきた隆一を、綾香は何も言わずに見つめていた。パンチラ写真の件で、隆一が来づらくなっていることは察していたが、こんなにおどおどしているとは思わなかった。とても反省しているに違いない。

隆一の動揺はラブレターが大いに関係していたのだが、それは綾香には絶対にさとられてはいけない。隆一は綾香の顔をまともに見ず、写真のベタ焼きを無造作に渡した。


「おれが撮った写真の全部」

 隆一に渡された写真を、綾香は黙って受け取り、くいいるように見つめた。何十分かがたった。とても長い時間だった気がする。隆一はその間、下を向いたまま、心の乱れをなんとか鎮めようと奮闘していた。


「この写真…」

 綾香は、ヤワラちゃんも褒めてくれた、理恵ちゃんのさよなら負けの写真を指差した。


「あたしだったら撮れなかった…。いい写真だね…」

 そう言ってまた写真に見入った。綾香が心からそう言っていることが、わかった。写真に対しては、綾香はとても素直だから。隆一は少し心が軽くなった。


「問題起こしてくれたけど、ま、これで帳消しにしてやるか」

 綾香はいたずらっ子ぽい笑いを見せた。隆一は小さくなったまま、黙っていた。パンチラ写真のことは許してもらえた。だが、坂口のことは…。


ああ、こんなことになるのなら、無理やりでもアタックしろと、けしかけてやればよかった。バスケ部の後輩達と、写真部の女子との合コンを企画してやればよかった…。

隆一は自分のおろかさを責め立てた。冷静に考えれば、入院している綾香がアタックも合コンもできるはずがなかったのに。自分にできることは、綾香にしてあげられることは…隆一は必死で考えていた。


「なんでそんなに神妙になってるの?」

 綾香が不思議そうに尋ねる。いつもの隆一なら、許してもらったならすぐに元に戻るはずなのに、今日はずっと変だ。


「え、いや、その…いろいろ迷惑かけちゃったからさ、その…おれがお前にしてやれることがもっと他にないかなって…」

 隆一の言葉に、綾香は驚きのあまり口をぽかんとあけてしまった。


パンチラ写真のことが、そんなにこたえていたのか。あるいは、自転車事故そのものを心から反省しているのかもしれない。病院に来ることができないほど、一人で悩んでいたのかも。綾香は初めて心から許してあげなくちゃ、と思った。


隆一が数日間、病院に顔を出さなかったので、綾香は寂しくてたまらなかった。はじめは、隆一をいじめることで自分を満足させていた。でも、今は、隆一といることで満足を感じている。とどのつまりは、隆一を好きだということを、認めざるをえなくなった。私、隆一が、好き――。


「本当に、そう思ってるの?」

 綾香がじっと見つめると、隆一は真剣なまなざしでうなずいた。

「だったら…」

 綾香は小さな声で口を開く。


「だったら…彼になって…あたしの…」

 綾香の手に力が入った。自分から告白したのは生まれてから初めてのことだった。大胆なことを、よく言えたと思う。

「……え…?」

 隆一は思いがけない願いに、混乱した。


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