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おれは女子高生  作者: 奥田実紀
18/42

18 盗難騒ぎ

 翌日の朝、理恵ちゃんが隆一のクラスにやってきた。父親から借りたカメラを使ってほしい、とさし出したのだ。袋の中には、望遠レンズも数本入っていた。父親が写真が趣味で、何台か持っていて、頼んで借りてきたという。隆一は、ちゃんとカメラはあるから、心配はいらないと説明したが、それでは気が収まらないと理恵ちゃんは訴える。


「お願い、もしね、万が一、同じようなことがあった時のためよ。私の気持ちを思って、これ使って」


 理恵ちゃんは心の底からそう言ってくれている。綾香に相談してみなければ、隆一は返事はできない。放課後まで待ってもらうことで、ひとまずおさまった。


 ところが、その理恵ちゃんのカメラが、消えてしまったのである。それがわかったのは、学食で昼を食べているときだった。カメラが盗まれた、という話題がまたたくまに学校内をかけめぐっていた。


隆一は、朝、理恵ちゃんにカメラを返しており、その様子はさっちゃんたちクラスメイトも目撃している。しかし、いきさつも、朝の様子もわかっていない生徒達は、隆一を疑っていた。理恵ちゃんは隆一に余計な心配をかけたくはなく、カメラをしまったロッカーに鍵をかけずにいたこともあって、隆一には何も伝えていなかった。


 隆一は自分への疑惑を知って、途方にくれた。なんでこう、次から次へと問題が起こるのか。さっちゃんたちは、間違った噂が流れていることに珍しく腹を立てていた。


「こうなったら、盗まれたカメラをあたしたちで見つけるしかないわね」

と鼻息があらい。でも、いったいどうやって? 全員のロッカーやカバンの中を調べることは警察でもない限り、できない。もしそうするなら、まず先生方に事情を話さなくてはならない。隆一の存在がクローズアップされる。それに警察がくると、問題を起こした学校ということで、高総体への参加があやうくなるかもしれない。


ヤワラちゃんが、隆一を見つけてかけよってきた。

「聞いてる? あの噂」

 隆一は黙ってうなずいた。


「杉村さんじゃないわよ、あたしたち、その様子をこの目で見ているんだから。杉村さんはカメラを理恵ちゃんに返したんだからね」

 さっちゃんが念を押した。


「わかってるって。だけど、この学校で盗難騒ぎなんて、初めてだよ。あたしだってロッカーに鍵なんか、かけちゃいないし。ああ、困ったことになったね。今日中にカメラが出てこないと…」


 ヤワラちゃんは眉間にしわをよせた。そのとき、ヤワラちゃんの携帯が小さく鳴った。学校で携帯を使うのは禁止されている。ヤワラちゃんは慌ててテーブルの下にしゃがみこみ、こっそり電話に出た。綾香からの電話のようだ。数分して、ヤワラちゃんは電話を切った。


「綾香がアイデア出してくれたよ。とりあえず、やってみようと思う。カメラがなくなったことが大きな問題になったら、理恵ちゃんは高総体に出られないかもしれないね、って噂を流すの。理恵ちゃんは不安で不安で泣いているって」


「そんなことで、カメラが戻ってくるのかしら?」

 さっちゃんもやっちんも、半信半疑だ。隆一も、同じだったが、綾香がそういうからには何か理由があるのだろうし、今まで何度も綾香の“言い訳”は成功した。それに、ヤワラちゃんが言うように、やってみなければ、わからない。


「おそらく、理恵ちゃんのファンが盗んだんだろうって、綾香がいうの。理恵ちゃんが大事そうにカメラを持っているのを見て、理恵ちゃんのものを欲しくなっちゃったんだろうって。単なる出来心だから、理恵ちゃんが悲しんでいて、高総体に出られないとわかれば、きっと返してくるだろうって」


 ヤワラちゃんは綾香の推理を説明した。確かに、悪気があって盗んだとは、思いたくはない。もし理恵ちゃんのファンだったら、理恵ちゃんの活躍を見たいはずだ。最後の高総体に出られないとわかったら、慌てるだろう。


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