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水心─みなごころ─  作者: 谷兼天慈
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プロローグ

 ゆらゆらと漂うように水の中を泳ぐ。

 あたしは魚。

 こんなキレイな海は見たことがない。

 澄んで遠くまで見渡せる。


 ああ、なんて気持ちがいいの。

 水は冷たいけれど、それが嫌じゃなく心地よく身体を包んでくれる。

 水は冷たいけれど、それはまるで自分の心のようで、誰かの抱擁を待っている。

 あたしの身体を温めてと。


 ゆらゆら漂うように水の中を泳ぐ。

 あたしは魚。

 そう、魚なの。

 だからね、水はキレイじゃなきゃだめで。

 だからね、水がないと生きていけないの。


 もし、水がこの世からなくなってしまったらあたしはどうなるんだろう?

 きっと───きっと、とてもとても辛い。

 心の中にポッカリ穴が開いたように何かが足りないと思うだろうね。


 ああ、なんて気持ちいいの。

 水は世界を包んでくれてる。

 あたしは魚。

 魚だから水がなくちゃ生きていけないの。


 水はいつもあたしを包んでくれる。

 生まれたときからずっとずっと。

 お母さんのお腹にいるときからずっと一緒。

 いつも包んで、いつも見つめて、あたしたちは一緒。


 ゆらゆら漂う水の中を泳ぐ。

 あたしは魚。

 あたしは清らかな水の中を漂う魚。

 いつかは人間に釣られて食べられてしまう、そんな運命が待っている。

 いつか見つかってしまう。


 いつか───


 そして聞こえた声。

 あたしを夢から覚ます声が───



「見つけた」



 時さえも止まった水の中の静けさが終わりを告げる声。



「見つけた」



 そして、あたしは目覚める。

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