第2回米朝首脳会談(評価と課題)
2月27~28日、ハノイで行われた米朝首脳会談は、合意文書の署名に至らず物別れに終わったものの、両首脳間の関係はそれなりに良好に維持され、相互の立場に関する理解促進に繋がり、今後の交渉継続に結び付くものと見られる。
従って核・ミサイル実験の停止状態は、今後とも続くものと見込まれ、日本から見れば(2016~17年、ミサイル実験が頻発し、核実験も行われた経緯にも鑑み)平和が保たれるとの最低限の条件をクリアしていよう。
何れにせよ、北朝鮮の核・ミサイルは、中長期的に解決すべき問題と認識すべきであり、すぐに成果が出なかったと問題視しても意味なかろう。また拉致問題も2回にわたり米国から提起した由であり、この点も多とすべきだろう。
然るに会談の推移に関し、「北朝鮮が米国に対して過大な要求をしたため、合意に至らなかった」との情報を頼りに、理由を探れば、取り敢えず次の通り。
(多くの憶測に基づくので、今後得られる情報によっては、大きな修正も排除されないので念のため)
1.困難な取引条件
(1)今回の米朝首脳会談に関する発表を含む諸情報によれば、北朝鮮は、寧辺の核関連施設の閉鎖・破棄をオッファーし、その見返りとして、北朝鮮の民生用品に係る全ての経済制裁の解除を要求した由である。
これに対し米国は、寧辺以外のウラン濃縮施設にも言及し、情報開示を求めたが、前向きな対応を得られなかった由。
(2)ここで北朝鮮の提案を受け入れ、民生用品に係る全ての経済制裁を解除した場合、寧辺等の核関連施設の取り扱いはともかく、既存の核兵器やミサイルは、全て手付かずで温存されただろう。
(3)米国としては、次の大統領選に向けた準備等、国内事情もあり、出来れば合意文書の形で、目に見える成果を出したかっただろうが、取引条件のバランスがあまりにも悪いので断念せざるを得なかったのだろう。
2.見通しの悪さが不自然
(1)北朝鮮として、仮にこの様なバランスの悪い取引を米国に提案しても、受け入れられる可能性は薄く、会談の雰囲気自体に悪影響を及ぼす事は予測可能だった筈である。従ってこの提案を行い、固執した背景には、何か特別な理由があった可能性があろう。場合により、北朝鮮が本来の意思に反し、強硬姿勢で会談に臨まざるを得なかった特段の事情があり、その結果、会談が調整不能に陥ったのではないか。
(今から思えば、会談直前にスペインで北朝鮮大使館が襲撃を受けた事件が、当初より、北朝鮮関係者に暗い影を投げかけていたのかも知れない。)
(2)他方、米国関係者は、会談以前までは、段階的な非核化に応じる用意がある旨の言動を行っていたにも拘わらず、会談の場で態度を硬化させたとの印象である。多くのメディアは、ボルトン補佐官の参加に原因を求めているが、全般的な印象としては、米側の同席者は何よりも、トランプ大統領が安易に妥協する事を警戒したに違いない。
(3)会談決裂後、北朝鮮代表団は、唖然とし、明らかに落胆した表情で、メデイアに捉えられていたが、場合により、十分予想出来たシナリオだったとしても、現実味を帯びると、やはりショックは大きかったに違いない。
(例えて言えば、合格は到底無理、と予測しながら特定大学を受験しても、その後、実際に不合格を確認すると、やはりショック大きいのと類似の状況か)
3.仮説
(1)非核化の詳細は首脳会談になじまない(原子物理学の専門性)
(ア)多くのメデイアが報じる様に、恐らく米朝両国ともに準備不足の側面があろう。しかし非核化の段取りに関しては、専門知識を踏まえた詳細な検討が必要である為、会談の準備も大変だろう。特に交渉に臨む首脳が、原子物理学の専門家でない場合、現場で裁量の上、適宜対応できる範囲は狭いに違いない。
例えば交渉相手から、予期せぬ要求や提案が出された場合、いかに首脳レベルと言えども、即座に回答を出し反応する事は、困難。従って「持ち帰り検討」となりがちな事も、事実だろう。
(イ)従って一般論として、この様な専門性の高いと目される分野に関し、専門家を交えた実務レベル会談で討議を尽くさずに、小数回の首脳会談で問題解決しようとする事に、そもそも無理があるのかも知れない。
(ウ)例えばIAEAは、この様な問題意識から、米国主導により、核の拡散防止と原子力の平和利用を両立させる目的で、専門知識や技術を持つ組織として設立されたのだろう。
(2)エネルギー安全保障
(ア)北朝鮮ではウラン鉱を産出するので、原子力は天賦の恵みであり、核武装は国土の自然な選択肢と捉えられていよう。すると核・ミサイル開発が招いた国連安保理の経済制裁により、化石燃料の輸入を大幅に制約された今日、皮肉にも代替手段のエネルギー源は、やはり原子力ではなかろうか。
すると非核化に関し、北朝鮮が段階的な手法に拘る理由も理解しやすい。原子炉やウラン濃縮施設等の原子力発電関連施設の閉鎖・放棄に関し、見返りとして経済制裁を解除し、石油や天然ガス等の化石燃料輸入を認めてもらう必要があるし、それが実現しない限り、エネルギー安全保障の観点から対応困難との立場を取ったものと見られる。
(イ)米国から見れば、北朝鮮が既存の核兵器に手をつけぬまま、核関連施設の閉鎖の見返りに経済制裁をほぼ全面解除する構図となり、バランスが如何にも悪かったのだろう。
その意味では、核開発を放棄する見返りに、発電用の原子炉提供を約束した1994年の枠組み合意は、北朝鮮のニーズに十分配慮した内容であり、それを北朝鮮が一方的に破った事に問題の根源が求められる。
(3)中国の圧力
現時点で第2回米朝首脳会談を評価すれば、理由はともかく、合意未成立との結果は、米中首脳会談を控えた中国に有利であり、中国が漁夫の利を得たものと観測されよう。
然らばこの結果に至る可能性も想定しつつ、事前に中国から北朝鮮に対し、
「とにかく強硬姿勢で今回の米朝首脳会談に臨むべし」とのラインで要請が行われ、圧力が加えられた可能性もあろう。
(ア)今年1月、金正恩委員長は訪中し、習近平主席と首脳会談を行っている。また今回は、米朝首脳会談の開催地ハノイまで、長時間かけて中国を通過する陸路を選んだが、この間、中国から強硬姿勢でハノイの首脳会談に臨むよう、念を押された可能性があろう。
(イ)金正恩委員長は、現地到着時から塞ぎ込み、観光もせず、ホテルに籠っていた模様だが、実は在スペイン北朝鮮大使館の襲撃事件もあり、会談の結末について、最初から悲観的だった可能性があろう。
(別の捉え方としては、中国を通る長い鉄道の旅路で、
「先代・先々代からの核武装の方針を貫き、対米戦争再発のリスクを冒し実現させたが、その結果、重い経済制裁を加えられ、国民の困窮を招いている。次の段階として、経済発展を最優先課題に据えたが、その文脈でも、やはり経済制裁は大きな障害。そこまで考えると、安全保障・体制保障の為とは言え、核武装に本当に意味あったのだろうか。あるいは最初から核武装を省き、韓国の様な経済発展路線を採択する手があったのだろうか」
との哲学的な問題に直面し、ハノイの会談を前に、特に経済制裁の撤廃に関し、ますます重い責任を感じた。また、それがハノイ到着後のムードを支配した、とも解釈可能か)
(ウ)現地での米朝首脳間の雰囲気も、特段厳しくなかったと報じられ、またトランプ大統領は、事後の記者会見で「金正恩委員長との関係は良好」と強調していた。もし北朝鮮の交渉姿勢が、中国の要請を踏まえた結果、北朝鮮の本来の意図や対処方針を反映していなかった場合、確かに両首脳の個人的関係は、そこまで悪くなかったのかも知れない。むしろトランプ大統領として、金正恩委員長の硬い交渉姿勢に不自然さを感じ、その理由につき好奇心を抱き、想像力を働かせた可能性があろう。
(エ)金委員長は、帰路も中国を通り列車で帰国したが、北京に立ち寄り、中国の首脳と会談した形跡はない。すると長時間かけて中国国内を列車で往復しながら、中国の首脳と直接会って挨拶を交わす機会がなく、相互に冷淡だった印象を受けるかも知れないが、他方、車内からの電話連絡等は可能で、無関係を装いながら、密に連絡していた可能性は排除出来ない。
(4)在スペイン北朝鮮大使館の事件
今回の第2回首脳会談の直前、2月22日、マドリードの北朝鮮大使館が、複数の人間の襲撃を受け、PC等が盗難に遭い、その後犯人が米国でFBI関係者と接触したと報じられている。もしその通りだとすれば、北朝鮮は、当初より米国の関与を疑い、会談直前に雰囲気が突然悪化した可能性があろう。
金委員長は、中国を通りハノイへ向かう間に、この事件を含め中国側と協議した可能性があろう。
(5)月齢の問題
今回の会談は、2月27~28日、月齢的には月の欠け行く「小潮」の局面で開催されたが、男性同士の会合ならば、月の満ち行く局面、特に満月にかかる日程で開催されるのが、手を結ぶ観点から最善と見られるところ、その意味でも障害なしとしない。(第1回米朝首脳会談の日程も、同様に月の欠け行く局面だった。この様な月の欠け行く局面、特に新月にかかる日程は、むしろ男女の交流に適しており、女性の立場が強くなるとの特徴があろう)
但し悪天候の場合、その様な効果はかき消されてしまうので、不確定要素は否めない。
4. 北朝鮮の視点
仮にハノイの会談に臨むに際し、中国から圧力を受けていた場合、金正恩委員長は、合意成立に至らない場合、経済制裁の緩和が実現しない事を予期しながら、次の様な配慮から、不承不承、中国の意向に沿って対応した可能性があろう。
(1)中国こそ北朝鮮の安全保障・体制保障の要であり、経済的にも強い依存関係にある。
(2)在スペインの北朝鮮大使館襲撃事件により気分を害し、米国の関与さえ疑ったから。
(3)例え今回の米朝首脳会談で合意文書の署名に至らなくても、核・ミサイル実験を停止し続ける見返りに、米韓合同軍事演習が停止される旨の了解を取り付ければ、一応平和が保たれるだろう。
(4)例え交渉決裂に至っても、米国も同様の認識から、最低限のラインは保たれたものと評価し、激烈な反応を示す事はあるまい。
(5)その場合、今後とも、米朝協議が継続可能な、良好な雰囲気の下に会談を終了させる事が重要。
(6)開催地ベトナムとの関係も含め、大きな公的・個人的犠牲を払うだろう。結果的に平和は続くと期待するが、経済制裁は継続され、緩和されない。そこで中国に詳細に報告し、見返りとして中国から安全保障や経済面で、ますます大きな便宜を図って貰う必要があろう。
5.米国の視点
(1)トランプ大統領は、2020年の大統領選を控え、民主党との間で、ロシア疑惑その他の攻防戦に晒されており、この度の米朝会談と時期を合わせたかのように、関係者による議会証言等が行われた。
この様な状況では、目に見える成果が欲しいため、北朝鮮との間で安易な妥協に応じるのではないかと観測され、その様な展開を警戒する論調が強かった。
(2)ハノイでは、北朝鮮とバランスの取れた取引が成立する見込みが薄いと見るやトランプ大統領は、平和維持・継続を取り敢えず確保する為、核・ミサイル実験の停止と引き換えに、米韓合同軍事演習を停止・縮小する旨約束した。
(米国は3月3日、この春に予定されていた毎年恒例の米韓合同軍事演習、フォール・イーグル及びキー・リゾルブの中止・規模縮小を発表)
そして合意文書への署名は見送ったものの、首脳同士の関係は、基本的に良好との印象を残しながら、会談を終了させる事に腐心した。かくして交渉上の立場が弱いのでは、との悲観論を否定したのではあるまいか。
(3)国内政治的な配慮を別とすれば、米国には、第2次大戦後の世界秩序を支えてきたNPT体制に関し、強く擁護する思想が基本にあり、次の通り。
「一般論として、NPTで認められた核兵器国以外の国が、アウトロー的に核を保有する事に見返りを与えてはならず、懲罰すべし。でないと、核兵器保有を試みる国が、後を絶たないだろう。
北朝鮮の場合、NPTを脱退し、核兵器保有に至ったが、その過程で核実験を6回にわたり実施し、その規模の大きさ故、周辺地域に不自然な地震をもたらした。21世紀に入り、地球環境の変化が著しくなり、地震を含む大規模自然災害が頻発する世の中であり、もはや許されないだろう。
従って北朝鮮は、2017年末から経済発展重視に突然舵を切ると発表したが、非核化に応じない限り、これは許容出来ない。むしろ非核化に応じない限り、経済発展は、ままならない事を良く認識させねばならない。加えて朝鮮戦争が未終結との不安定な現実があり、また南北間に分裂国家特有の問題があろう」
従って米国として、安易に米朝交渉で妥協する事は出来ず、北朝鮮がNPT体制の重要性を良く理解するまで、忍耐強く待つ姿勢も窺われる。
(4)更に金正恩委員長との個人的な関係は良好足り得るものの、先方の強硬姿勢に関し、背後には中国の影響力もあろうかと感じ取り、3月に控えた米中首脳会談を意識し、中国との関係にも配慮しつつ対応した可能性がある。
6.中国の視点
(1)朝鮮戦争の経緯
(ア)中国から見ると、1953年の休戦協定は、米・朝・中国の3か国が署名した経緯があり、従って、中国も朝鮮戦争の当事者だった事は明白である。また過去には6か国協議を主催し、大いに貢献したとの認識だろう。
(イ)従って「終戦宣言」を含め、平和に向けた重要な交渉の節目には、中国も当然立ち合い、参加して然るべきと考え、
「平和実現に際しては、中国も、北朝鮮の安全保障・体制保障や経済再建に大きな役割を負うので、明確に参画させよ」との意向ではなかろうか。
(ウ)中国の参加を得ず、北朝鮮と米国の2者だけで大きな取引を行い、技術的に戦争を終結させる様なシナリオは、許しがたいのだろう。
(2)米中関係
(ア)2018年夏、米中「貿易戦争」が、両国の関税合戦により本格化した事により、中国の対米輸出は激減し、中国への直接投資も減少し、2018年のGDP成長率は、6.6%と見積もられている。このため「一帯一路」政策にも悪影響が出ている模様。
(イ)中国は、政治・軍事・経済を含め、北朝鮮に対して多大な影響力を及ぼし得る立場にある事から、北朝鮮の核・ミサイル問題に関し、米国を含む関係者から国連の場を含め、協力や圧力を要請されてきた。然るに中国は、米との関係上、貿易を含む交渉上の立場を強化・拡充する目的で、北朝鮮に対し、ハノイの米朝首脳会談では強硬姿勢で臨むよう、強く要請した可能性があろう。
(ウ)仮にハノイの米朝首脳会談が成功し、一定の合意に至った場合には、中国としてもはや「北朝鮮カード」は使えず、米国との間で取引材料として活用する事は出来ないだろう。
(3)2019年の全人代
2018年の全人代にて、習近平主席は、任期の制限を撤廃されたが、今年3月の全人代では、経済が米中貿易戦争の悪影響に如実に晒されているところ、これをうまく乗り切る必要があっただろう。
然るに現状の早期打開の観点からも、北朝鮮カードを活用可能とすべく、金正恩委員長に協力して貰えれば有り難いので、その旨要請する事に吝かでなかったものと想像される。
7.問題点
(1)中国の参画
(ア)この度の米中首脳会談に際し、中国が北朝鮮に圧力を加えたとの仮説に関しては、想像力を走らせた、憶測に基づいたシナリオで、確たる証拠に基づくものではない。
他方、東アジアに平和で安定的な秩序を回復する上で、北朝鮮の核・ミサイル問題を解決し、朝鮮戦争を終結させる交渉は、最も重要プロセスである。そこで如何に中国に出番を用意し、参画させ、責任を持たせるかとの問題につき、早めに検討すべきだろう。
特に終戦宣言等の象徴的な文書、あるいは批准を要する平和協定等、拘束力のある文書を作成・署名し、朝鮮戦争を終結させるプロセスに関し、戦争の当事者だった中国の参加は、不可欠と考えられる。
(イ)中国は、2018年の平昌冬季五輪に端を発する対話の動きに関し、当初は、健全な方向での進展と評価しつつ模様眺めだったかも知れない。しかしその後、特に首脳レベルの対話を通じて平和的解決の路線が定着するにつれ、如何に中国として当事者の地位を確保していくか、との強い問題意識を持つ様になった筈である。
(ウ)しかし「貿易戦争」と共に米中関係が複雑となった為、米国に対して、朝鮮半島の平和プロセスへの参画に関し、露骨には問題提起しにくい立場かも知れない。従って中国は、取り敢えず北朝鮮への影響力等を通じ、米朝交渉の機会を含め、間接的に意向を反映させようとする可能性があろう。
(2)日本の視点(拉致問題等)
(ア)特に2016~17年、北朝鮮は頻繁にミサイルの発射実験を行い、核実験も実施。核兵器の保有と日本を射程距離に収めるミサイル能力を獲得するに至ったと見られる。このため日本は暫く、日本海のEEZに落下し、あるいは上空を通過するミサイル、更には核実験の余震の恐怖に晒され、精神的な被害者との側面が強い。このため国民の北朝鮮に対する反発も強く、今も続くものと見られる。
(イ)拉致問題に関しては、表面的には、核・ミサイル問題とは直接関係ないかも知れないが、ミサイル発射や核実験の相次ぐ2016~17年頃から、被害者の家族や帰還した被害者が、問題の早期解決を公に訴え、安倍総理やトランプ米大統領にも度々会い、直接働きかけた影響は大きいに違いない。
2018年の平昌冬季五輪をきっかけとして、対話による平和解決路線が定着したが、テンション高く、軍事衝突が危惧される局面でも、彼らは、関係者に冷静な対応と人道的配慮を促し、今ある平和に大きく貢献したものと考えられる。従って北朝鮮は、拉致問題を検討するに際し、被害者やその家族が平和に大きく貢献した事を十分勘案すべきだろう。
(ウ)今や日本は、北東アジアで唯一「民族核」を持たぬ国。第2回米朝首脳会談が物別れに終わったところ、非核化の早期進展は望み薄となり、日本は安全保障の観点から日米関係を増々重視するだろう。米朝関係と日米関係は、負の相関関係にある事が窺われ、数式で表せば、
日米関係(t) ∝ 1 / 米朝関係(t-1)
(エ)他方、日本は拉致問題の解決にも重点を置くところ、将来的に非核化の観点を含め、如何なる段階で日朝の国交正常化を実現させ、経済協力の提供を開始するか、要検討。
(3)米中「貿易戦争」
(ア)昨年夏以降、米中関係は「貿易戦争」激化と共に、特段に複雑となった。この頃から中国の北朝鮮に対する姿勢に変化が見られ、非核化圧力が緩められ、経済制裁の緩和に比重が移っている。
(イ)この様な連鎖関係につき、数式を借りて一般化すれば、
中朝関係(t)∝ 1/米中関係(t-1)
すなわち米中関係が困難になると、中国は米国から要請の非核化圧力を弱め、中朝関係が改善・緊密化するが、その帰結として非核化が遅れがちとなる。
(ウ)この悪循環を終わらせる為、米中間の貿易協議で成果を出し、「貿易戦争」を早めに終わらせ、米中関係を改善する事が望ましい。然るに現在、まさに米中貿易協議の重要局面にあり、3月27日頃に米中首脳会談を控えている。その帰趨は、世界経済への影響多大と見られるので、関係国においては特段に冷静かつ建設的な配慮が必要だろう。
(エ)米国は、米朝首脳会談の数日後の3月2日、予定されていた中国に対する関税引き上げを延期した。
(4)北朝鮮の動き
上記分析が基本的に外れていない場合、北朝鮮は第2回米朝首脳会談後も、来る3月の米中首脳会談を控え、中国の立場を更に応援する可能性があり、一度機能停止したミサイル実験場における復旧の動きも、その一環かも知れない。