4.
あれは6年前の誕生日、ルルドールが10歳になった祝いに隣国からアビゲイル女王が招かれていた。女王は半年前に婚約者を病で亡くしており、本来なら欠席しても誰も文句は言わなかっただろう。しかしアビゲイルは祝いの席に顔を出してくれ、ルルドールは父王より彼女を紹介された。
「ルル、こちらがイール国のアビゲイル女王だ。」
彼女を見た一瞬、時間が止まった気がした。すらりと伸びた肢体、日に焼けた小麦色の肌は健康的でプラチナブロンドがよく映える。瞳は金色に光り、でまるで太陽のように輝いている。10歳のルルドールとは、かなり身長差がある為、見上げないと目線を合わすことが出来なかった。目が合ったその時、『……ごくん!』彼は唾を飲み込んだ。そして、長い時間彼女に見とれてしまった。
「…、……ル?ルル!?どうした?」
父王の声でルルドールはハッとして慌てて挨拶をした。
「は、はじめまして、私は第三王子のルルドールと申します。この度は遠路はるばるお越しくださり誠にありがとうございます。それと……婚約者様の事、お悔やみ申し上げます。」
「ルルドール王子、こちらこそお招きくださり、ありがとうございます。ここ最近、少し塞いでおりましたが、貴方の優しいお言葉のおかげ気が晴れました。」
アビゲイルの声は天使のように清らかにルルドールの耳に届き、柔らかな笑顔は彼の頬を一気に染め上げた。
「ど、どうか私の事はルルとお呼びください、アビゲイル女王さま。」
耳まで真っ赤になり、必死に話すルルドールに女王は目をほそめて言った。
「ふふふ。では、ルル様、わたくしの事もアビーとお呼びください。どうぞ仲良くしてください。」
「は、はい!ア、アビー様!!よろしくお願いいたします!!」
それから二人はすぐに打ち解け、周囲からは仲の良い姉弟に見えるほどだった。