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3.

 その重大ニュースは何の前触れもなくルルドールの耳に飛び込んできた。16歳を迎えて間もないある日、父王と兄達と久しぶりに夕食を囲んでいた時、父王が言った。


「そういえば、隣のイール国のアビゲイル女王が花婿候補を各国から招くらしい。婚約者が亡くなって6年もの間、操をたてていたからな。やっとその気になったようでイールの大臣達もさぞやホッとしたことだろう。」


 父王の言葉にルルドールは愕然とした。『アビー様が結婚してしまう。僕の知らない男のものになってしまう!!そんなの駄目だ!』ルルドールはいきなり立ち上がった。ガシャン!!皿が床に落ちて割れた。父も兄達も驚いた顔をしてこちらを見ている。


「ルル!顔色が悪いぞ。一体どうしたのだ?」


 ルルドールの尋常ならざる様子を心配した父王が声をかける。彼は我に返り、割れた皿を片付けているメイドに詫び、再び席についた。しかし、もうじっとしてはいられない。やっと16歳になった。この日をルルドールは待ちに待っていた。自国で成人と認められるのは16歳からだった。隣国のイールでも16で成人とみなされている。今を逃したらアビゲイルは永遠に手に入らないだろう。


 この6年、彼女に約束した通り、出来うる事は全てやった。それは彼女の隣に並びたい一心での事だった。学問、武術だけではない。彼女を前にしても見劣りしないように肉体作りにも励んだ。筋トレは勿論、ルルドールは元来少食だったが、大きくなる為にとにかく食べた。限界ギリギリまで食べた。そのかいあって、彼の背丈はみるみる伸びていった。依然として細身ではあるが、筋肉は付くところに付き、大分成人の男らしい姿に変貌しつつある。


「父上、ぜひ私をアビゲイル様の花婿候補としてイール国に行かせてください。」


「ルル?何を言っているんだ?アビゲイル女王はおまえより10も年上なんだぞ?」


「はい、承知しております。私は6年前からアビー様をお慕いしております。あの方が助けてくださらなかったら、私は殺されていたかもしれません。あの方は私の光なのです。」


「ルル、気持ちは分かるが、もうすぐおまえの成人の儀が開かれる。それが終わってからでもいいんじゃないか?」


 長男のアルド王太子が慌ててルルドールを諌め、次男のジェイル王子もそれに頷く。


「それでは間に合いません!何がなんでもあの方を私の物にしたいのです。父上、そして兄上方、一生のお願いです。私の願いを聞き入れて、お力をお貸しください!」


「「「うっ!!」」」


 ルルドールのこれでもかというような、うるうるとした瞳を見て、三人は無条件で協力する事を約束させられたのだった……


ルルドールは彼女と出逢った日の事を思い返した。とても美しく高貴で、それに……とても甘い貴女……


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