15 未来に繋げる
遠く見通せるほど澄んだ青空をふらふらと飛ぶ白い鳥は、ずっしりと重い紙の束を目的地の屋敷まで運ぶために必死に飛んでいた。
屋敷に近づくにつれ不安定さは増していき、最後は降りるというより落ちるといった方が正しいのではないかと思う程急降下して、アリシアまでたどり着く。
ちなみにバルトがクッションで受け止めたため、アリシアにも鳥の方にも怪我は無い。
酷く疲労している鳥は、早く受け取ってくれと言わんばかりに自分が運んだ重い紙束――おそらく手紙――をくちばしで突つく。
バルトがそれを受け取ると、いつも休憩する場所まで弱々しく羽ばたいた。
それを心配そうに見ていたアリシアは手紙をバルトから貰いながら手紙の差出人を確認する。
「流石にこの量を持たせるのは……フェリックスかしら、シュテルかしら、注意しないといけないわね」
書いてあった名前は『フェリックス』と『シュテル』の両方だった。
「二人分! だから多いのね」
同時に送るならもう少し量を減らしてとお願いしなくては、と続けたアリシアは手紙を読み始めるが、すぐに首を傾げる。
フェリックスの手紙が最初の一枚、しかも一行だけだったのだ。
「『ごめん、シュテル怒らせた』? 何で私に報告するのかしら」
更に謎なのはこの手紙をその怒らせたというシュテルと一緒に出した事だ。
不思議に思いながらシュテルの手紙を見ると、綺麗な字でこう書かれていた。
「『言いやがったな、丸一日休み取ってそっち行くから待ってろ』……あら」
言ったとはどういうことだろうかとアリシアは考え、そういえばシュテルに『言うな』と念押しされたことをフェリックスに宛てた手紙に書いた。
シュテルは優しいと褒めただけだったのだが。
「『取りあえず課題を出す。絶対に俺が行くまでに終わらせろよ』え、課題?」
手紙をめくるとその下全ての紙に魔術式の問題がびっしりと書かれている。とても興味深く勉強になりそうなのでアリシアはわくわくと胸を膨らませた。
シュテルが何のためにこの課題を出したのかはアリシアにはわからない。わからないが、アリシアを喜ばせるためのものでは無いだろうなと何となく思った。
ほわほわと温かい湯気がアリシアの前に広がる。
シュテルから出された課題を中断し、いつもと同じバルトのアップルパイを食べているアリシアは、先程解いた問題の魔術式のことを考えていた。
「バルト、問題に出てきたのだけど、日記に映像と音で思い出を記録出来る魔術式があるらしいの」
素敵よねとアリシアは楽しそうにしている。
「後でシュテルに教えて貰おうかしら」
アリシアは魔術を使えない為、必然的に記録はバルトの思い出になるが、自分とバルトはほとんど一緒に居るので問題ないだろう。
そう言ったアリシアの言葉にバルトは、喜んでいるような雰囲気で頷いた。
その際鳴ったギギィという固い音に違和感を覚えたが、気のせいかと思考を流す。
「ところで、シュテルが来る日っていつだと思うバルト? 手紙にも課題の方にも書いていないの」
行くまでに終わらせろということは、それまでに間に合わせなくてはならない。
流石に明日訪ねてくる事はないだろうが、なるべく早く終わらせた方がいいかとアリシアは思い意見を聞いた。
バルトは、先日も訪ねて来た先生という立場のあの男が、もう一度休みをとるのは難しいだろうと考え『一週間後』と伝える。
「バルトの予想通りなら十分に期間があるわね」
急いで適当に終わらせないで、きっちり調べて取り組もうと決めながらアリシアはアップルパイを食べ終えた。




