参加者
「わーたーしーはー
今回の司会進行役を勤めさせていただきます
金城と申します
皆様、よろしくお願い致します」
金城はうやうやしく頭を下げる。
「でーはー
皆様には自己紹介をしていただきます」
金城と名乗った司会進行役は、歩いていき、赤いドレスを着用した女性の所で立ち止まった。
「あーなーたーかーらー
時計回りで自己紹介をしていきましょう」
女性は後ろ髪を掻き上げながら、高圧的に睨み付ける。
「あたしは安藤玲子、あんたらはあたしにヘイトを投票させてやるわ」
と、中指を立てて見せる彼女にその後ろにいた白髪の年配の男性が吹き出した。
「なによ、糞ジジイ」
態度が悪いのはヘイトを稼ぐための基本的なテクニックである。
男性は安藤に対して唾を吐きかける。
「ワシの名前は遠山一茂じゃ
お嬢ちゃん、その程度の挑発でヘイトを稼ごうなんざ100年早いぞ?」
下から挑発的に笑う遠山に安藤は頬をひきつらせながら、吐き出された唾をハンカチで拭う。
そんなやり取りの中で、安藤と遠山を放置し、金城は俺に歩み寄った。
「次はーあーなーたーですよー」
金城に促され頷くと俺は印象を付けるために、ゆっくりと安藤の元に歩いていった。
怪訝な顔をする安藤に対して、俺は手を伸ばした。
俺は、力強く安藤の胸を揉んだ。
「俺の名前は京野焼だ
参加してる女性のヘイトは全部俺がもらうから覚悟しとけ」
安藤は痛がり、俺の手から逃れると胸をさすっていた。
ここまで、ヘイトでのアピールしか、行われていない。
そろそろ、ハピネスでの参加者も出始める頃だろう。
そう思った所で、のほほんとしたエプロン姿の女性が手を挙げた。
「次は私でいいのでしょうか?」
少しだけ困ったように傾げて見せる彼女に金城が頷いた。
「わたひ……わち……うぅーー」
噛み噛みだが、今までの自己紹介を見た後で、一般人が気負ったらこうなるのも無理はないだろう。
「わたひは……真澄栄子です」
ようやく言えたと安堵のため息をつく彼女は恐らくはハピネス枠だろう。
安藤、遠山、京野、真澄とこれでようやく半分だ。
残る半分に目を向けると、体をくねらせている男に目が集まった。
その男は細く、骨ばっている。
顔は虚ろに微笑んでおり、涎を滴しながら体をくねらせている。
気味が悪いと思ったのも束の間、彼は言葉を発した。
「クヒヒッーー
ヒハハッーー
来る!来るぅぅぅぅうううううう!!
はぁぁぁぁ……」
関わりたくないと皆が思った所で、目がギョロギョロと動くが、焦点が何にも合わない。
動きながら、彼はボソリと名前を告げた。
「北村秀吉……でぇへへへへへへへ」
毎日これと喋るのか。
そう思ったのはなにも、俺だけではないだろう。
喋らなければ減点。
話さないという選択肢は取りたくない。
そう思っていると、唐突に世界が反転した。
いや、俺の体が回転したのだ。
俺は投げ飛ばされた。
それを認識してから痛みがはしる。
明滅する視界に写るのは、自分よりも一回り小さい小学生くらいの女の子だった。
「田中真弓です!」
元気でよろしい!と、ほめてやりたいが、痛みが先行して声が出せなかった。
「おねーちゃん、おっぱい大丈夫?」
そう伺う田中に安藤はデコピンを御見舞いした。
「これはこういうゲームなんだ
あたしはヘイトを集めるって決めてるから悪く思うなーー」
安藤が最後まで言葉を紡ぐことはなかった。
京野と同じように反転した安藤は背中から床に叩き付けられており、咳き込む。
「暴力はダメだよ!」
と、2名を既に投げている田中が主張する。
安藤、遠山、京野、真澄、北村、田中と残るは2名だ。
金城がその2名へと歩み寄る。
「我が名は黒野剣ーー
現世では漆黒の剣士と呼ばれている
向こうの世界では暗黒騎士をやっていたのだが、勇者との対決の最中、突如覚醒した左手が空間を断絶するほどの暴走をした
俺はその亀裂に飲み込まれ、この世界へと転生した
だが、やはり、我がーー」
長々と語り続ける黒野にげんなりとしたのは俺だけではないだろう。
京野は黒野にめんどくさいという印象を抱いた。
そして、最後が全裸になった。
なんの比喩でもない。
文字通り全裸になったのだ。
「おちんちんぶーらんぶーらん!」
ハピネス枠は真澄か田中だろう。
だが、ヘイト枠はこれで4名で有ることが確定した。
北村と黒野はまだ中立だろう。
あまりの競争率にヘイトを選んだ事を早くも後悔し始めていた。
だが、自分に真澄や田中を凌駕するような愛くるしさは持ち合わせが無い。
つまり、どのみちヘイトで戦わなくてはいけないのだった。
全裸の男は田中の回りをぐるぐると回ると、唐突に立ち止まり、尻を突き出した。
ブッーーリッーー
まさかのオナラかと思いきや、茶色の頭までこんにちわしていた。
「いやぁぁぁぁ」
投げ飛ばされる男はビクビクと痙攣しながら幸せそうに天井を見つめる。
「大久保利光だ
趣味は全裸になって幼女の回りを駆け回ること
至上の喜びは幼女からの手痛いご褒美でふふふーー」