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アウトローに学ぶ異界生存戦略  作者:
1章 異世界で奴隷から神官、そして魔の者への扉を開く
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アウトローに学ぶ異界.4

 この時、フーガ少尉から聞いた話は俺の理解をさほど越えてはいなかった。というより見知った物でもあった。

 少年ならばほとんど誰もが読むであろう漫画や子供向けのアニメやゲームの設定のような小話をいくつか聞いたりしただけだ。

 掻い摘んで言うとドラゴンなどが闊歩する世界。魔法と剣の世界が広がっていると説明を受けただけだ。

 

 他にもフーガ少尉たちの国家の成り立ちなどの神話のような出来事、そして彼らが自分たちを進歩的人類と信仰するに足る近代の奇跡的発展などなどの話は、あまり聞いていて眠くもなったが、まだ現実での勉強のようにつまらないものではなかった。

 普通に歴史なんて物には興味もないし覚える気もないが、これは話が違う。異世界の設定のような物。こういった子供の頃の心に突き動かされるような物なら一度はハマった身なのですんなり概要だけは分かったつもりだ。


 しかし、その中でも問題なのはフーガ少尉(本名をフーガ・コートリーというそうだ)等、自称文明人たちの存在である。彼らの持つ火薬や銃の技術がファンタジーの世界に妙に嫌な現実味を齎していた。

 フーガ少尉の士官先であるブリュータス帝国は、周辺を同じ始祖を持った人種の国家だそうで学術上や便宜上ではあるがタイタニア人と呼ばれ、妖精族と人族の混成種であるハイブリットヒューマンの末裔で構成される。

 特に魔法に関しては他の人種であるならば負けなしと自負しているようである。

 そんな彼らが同種のタイタニア人の国家同士で争ううちに魔法へのカウンターとして発展したのが科学なのだそうだ。


 フーガは俺に簡単な算数や問題や問答などを解かせ、それが出来るとヤヌ族との違いに驚愕と俺への興味がかなり湧いたようだ。(ヤヌ族がどれほど脳筋なのかが窺い知れる。しかし俺より馬鹿のみで構成される民族などいるはずもなく、ヤヌ族にはヤヌ族なりの異なる物の考え方がある事は彼により示された。) 

 それからフーガ少尉の俺に対する扱いは博学的な展示物から異文化を知るための窓のような物へとさらに変化したようである。


 俺は彼の話に興味深げに相槌などを打ちながら数時間を一緒に会話を交わした。

 フーガ少尉は、その探究心に全てを費やすような人間であるようで部下からの評価は決して良いものではないだろうということも感じられた。

 フーガ少尉は自信に裏打ちされた語り口調で、普段人の話など途中で寝てしまうような俺へ自分の研究や野望についても語ってくれたが、俺のとりとめのない質問などにも真剣に耳を傾け、貴様の部族ではこの考え方は一般的ではないのかなどと驚いた様子でありながらも答えてくれた。

 俺とフーガ少尉の会話は極めて友好的なものであったように思える。


 その中でも特に収穫だったのは魔法についての知識だ。

 元より彼らタイタニア人は妖精との混血により魔法や特定の大地より溢れ出すマナへの適性がきわめて高いようで生まれてより数日で魔法を発現させる者もいるそうだ。

 その一方で本来なら魔法適性を持たざる人族から魔法使いが生まれることについても研究をしているようで魔法学の研究者でもあるフーゴ少尉から素質がある者が魔法を発現させるまでのレクチャーまで受けることが出来た。

 このことで俺は彼から施しを受けることを当然のように勘違いしてしまったのかもしれない。


 彼からしたら魔法の扱いに遥かに劣る俺に魔法を教えることは、親が子供に言葉の意味を教える程度の感覚なのかもしれない。

 後になって考えてみると侮られていたのはやはり俺の方であったのだ。


 しかし、その時の俺は調子に乗りすぎてフーゴ少尉の人間性を扱いやすい物と勘違いしていたと思わざるを得ない事件が起こった。

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