プロローグ
知ってのとおり人間社会は場所により様々な発展を辿ってきた。
しかし、変わることなくそこには「持つ」者と「持たざる」者が生まれ、「持たざる」者は一方的に虐げられる既定のルートから抜け出すことなど近年でも難儀な道である。
そして俺の手の中にはその「持つ」者の証があった。
限りなく広がる意識の先、俺が手に入れたものは到底現実では得難い物であった。
俺が手繰る寄せた運命の糸、これは間違いなく俺だけの物だと信じたい。
そうだ。俺は人間の枠を超えて今、魔人となったのだ。
誰にもこの力を渡すものか……
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―――
素朴な疑問。
いくつにも別れる運命の糸の中、どうして自分はこの道を選んでしまったのだろうか……
俺の最後に考えていたことだ。
事務所の外での見張り。金になるから入ったバイト。
そこでいつ来るともしれないお客を確認したら上に報告する。そして……
後頭部を鈍痛が走る。ジリジリとした感覚が頭から広がり、手足にまで痺れが起こる。
地面に倒れこむ中、複数の武装した者たちが事務所の中に入り込む姿が微かに見え……
俺の運命が変わった。
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―――
軋む荷車。馬が土を踏みつける音が響き、カタカタと小粋のいい音を響かせながら揺れる。
「――!」
口には何か猿轡のようなものを噛まされているようで言葉が喋れない。
手足も縛られ何かに繋がれているようだ。身動きすら満足にとれない。
喘ぐように口から唾液を垂らしながら吠える俺の様子に、荷車内で短い槍を肩に寝かせる男がこちらを見やる。
古びて小汚い。それでいてセンスが古めかしくい服装にローブを纏ったその男は、その無精髭を撫でつけながら俺ではなくその先を見ていた。
俺と目を合わせようともしない。馬車の後ろ窓から覗く景色を呆けた様子で見て、何事もなかったのかのように元の姿勢に戻る。
首輪が繋がれ、回すことにすら苦痛を伴う。それでも周囲を伺うとどうやら俺以外にも馬車内にて重々しい手錠などで繋がれた者たちがいるようだ。
誰もが絶望をその表情に宿し、その瞳はどんよりと濁っていた。
全身の痛みが和らぐまでの間、事務所前にいた時と今の状況の整合性を見出そうとしたがどうにもこうにも何も分からない。
俺は考えるのを止めてただただその光景が悪い夢で終わることを望んでいた。




