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VRMMOの錬金術師  作者: 湖上光広
第二章:新たな力
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第十九話:想定内

更新が遅れてしまい、大変申し訳ございませんでした。

*訂正*50㎡⇒一辺の長さが50mの正方形

剣のアクトが敵を切り殺そうと襲いかかり、盾を掲げて防ぐ。

敵は殲滅! とばかりに魔法が吹き荒れる中、一本の矢がその魔法使いを射抜く。

そこは戦場でありながら、まるで舞いのステージのように、あらゆるプレイヤーがリングというステージを舞い踊っている。


第1試合を見ていて俺が抱いた感想はそんな感じだった。


俺が知ってるギルドはブレイズとヴァルキリーだけなので今戦ったギルドもプレイヤーも全く知らない。しかし、試合時間わずか10分程度見ていただけなのに、俺はどちらも応援していた。今の俺はスポーツ観戦に夢中になっているサポーターみたいな心境だった。


やがて決着はついた。どうやらリーダーとなったプレイヤーが死亡したらしい。


「すごかったな」

「いや、まあまあだ」


興奮している俺とは対照的にラインは冷静だった。


「あれでまあまあなのか?」

「連携は上手い。しかし、個々の力が弱い。あの弓使いだけは結構な腕前だけどな」

「そうね。魔法の隙間を狙って矢を射ったのは正直驚いたわ。でも、肝心の矢がそこまで威力が強くないのが問題ね。いっそ引き抜いてみる?」

「それはいいかもな。対価にレアランクの武器3つくらいならいけるか?」


なんだか黒い話をしているが、その意見には俺も賛成だ。どう考えてもあの弓使いと他のメンバーではレベルが違いすぎる。もしかしたら普段はソロで臨時で入ったプレイヤーという可能性もあるな。


「さて、次はちょっと注目だな」


ラインがそういうので空中に浮かぶ対戦票を見てみると、そこに書かれていた片方は知っているギルド名だった。ぶっちゃけブレイズだった。


出場プレイヤーが登場した時は拍手が起こる。それは前の試合でもこの試合でも同じだった。しかし、ブレイズのメンバーが登場した時のそれはまるでちがった。これがトップギルドへの期待というわけか。


しかし、出場しているプレイヤーはそれを受けて少し挙動不審になっているように見える。唯一平然としているのはロウだけだ。


「もしかして、あのプレイヤーたちあまり前線に出ないのか?」

「そういうわけじゃないが、俺たちのように常に視線が付きまとってるわけじゃないからな」

「お前は現実でも常に視線を浴びてるからな」

「マジで!?」

「主に『うるさい!』的な意味でな」


俺の発言によりラインはorz+(T_T)状態となったがブレイズの面々は誰もフォローしない。どうやらここでもラインは自分の立ち位置を確立したようだ。


さて、どうやら準備が整ったようでブレイズ(2軍?)VSモフモフ同好会の闘いが始まった。……モフモフ諦めてないのかよ。


今更だが、リングは一辺の長さが50mの正方形となっている。結構広いがこれくらいないと常に魔法や矢の射程内となってしまうからな。さらにこのリングはイベント用ということで特注品であり、たまに地形が変動するシステムとなっている。


実際、さっきの闘いでは最後の方でなぜか谷が出現したし、今回は最初から森のような感じなっている。なお戦闘の模様は空中に映像が映し出されるので問題ない。


ブレイズは唯一盾を装備しているロウが一番前に出て、その後ろにサポートとして槍使いと少し離れて弓使いが敵の方に向かって歩いている。残りの魔法使い二人と剣士一人は別方面から敵に向かっている。

二つの小隊に分けることで誰がリーダーか分からないようにする狙いか。


一方、相手のギルドは全員が一体となって動いている。前衛に剣士一人と盾職が一人、中衛に弓使い一人、後衛に魔法使い三人となっている。

これも誰がリーダーか一目見ただけでは分からない。これが『周りに囲まれた一人=リーダー説』なら弓使いがリーダーになるが、果たしてどうだろうか?




試合開始からしばらく経つが、未だに戦闘は起こってない。まあ、森の中なのであらゆる方向を警戒し、慎重に進みながらでは当然進行速度は遅くなる。

何人か「さっさと始めろ!?」とヤジを飛ばしているが、正直俺もだんだん退屈になってきた。


しかし、しばらくすると森が不自然に動き出した。

何事!? と観客と出場プレイヤー全員が戸惑う中、なんと急に森が消えた。正しくは森が元のリングに戻った。

俺たちは状況を分かっていたが、リング上のプレイヤーは当然知らず、すぐ近くに敵がいることを知ってお互いに驚いている。


そして始まる大乱闘。


先陣を切った剣士同士は互いの剣をぶつけ合い、モフモフ同好会の剣士がアクトを使用して相手の剣を弾き飛ばす。しかし、武器を弾き飛ばされたブレイズの剣士はアクトの硬直時間を利用して無防備になったモフモフ同好会の剣士の首にナイフを突き刺し、死亡させる。


しかし、次の瞬間剣士はモフモフ同好会側の魔法によって死亡。その瞬間から今度は魔法使い同士の闘いが始まる。

お互い火属性を得意としているのでリング上を火の魔法が飛び交う。お互いの弓使いは先ほどの弓使いような腕前はないようでお互いの魔法使いにアイテムを使ってサポートに回っている。


なお、基本的に制限が無いこのイベントで唯一制限があるのがアイテムの持ち込み量だ。第1回戦が全て終わった後の休憩時間に外の露店で買うなど補充は許されているが、いきなり敵が現れての混乱からかお互い一切の戸惑いも無く利用している。いきなり現れて冷静な判断ができないのもわかるが、この調子なら例えどちらが勝ち残っても上位に上がるのは難しいだろう。チラッと見ればラインもギルドメンバーを見つめながら険しい表情をしている。


魔法勝負は個々の能力の差でブレイズに軍配が上がり、モフモフ同好会は盾を持ったプレイヤーの後ろに隠れた。

それに対してブレイズは一気に攻める姿勢に変えた。弓・魔法が相手の盾の耐久値を削っていき、とうとう砕け散る盾。それは守る術が無くなったことと同じだった。


その瞬間、相手側に飛び込み、アクトを発動させるブレイズの槍使い。槍は剣よりも威力は劣るがリーチはある。さらに聞こえてきたアクト名は貫通に優れたアクトの一つ。例え肉壁となって防がれても貫き通すだろう。


この瞬間、ブレイズの勝利は確定した。







「止まれー!」





同じリング上にいた一人のプレイヤーが声を上げる。そのプレイヤーは持っていた武器を構え、アクトを唱える。


それと同時にブレイズを襲う炎。しかも、その炎は竜巻のように回転している。

【火属性中級】と【風属性中級】の両方のスキルレベルを上げることで成立する合体魔法の一つ、〔フレイムトルネード〕。現在判明している合体魔法としては最も有名な魔法だが、その威力はあのアーシェすら認めているくらいだ。


当然突っ込んでいた槍使いは驚くが、アクト発動中のため避けきれず炎に包まれる。

他のプレイヤーは事前に備えていたロウのアクトによってダメージはない。


そのことに安堵してしまったブレイズは横から飛来した矢によって魔法使いを一人失う。さらに逆方向から襲いかかった魔法が弓使いの命を奪う。

タリサさんの解説曰く【風属性中級】のアクト〔カマイタチ〕。威力が高く、さらに風属性なので相手に見えないが風属性の中では有効射程が短い。


では、それをどうやって成立させたのか。答えは簡単。〔フレイムトルネード〕の中に隠れていたからだ。


【火属性中級】〔フレイムセウル〕。自身の周りを炎に包ませることで全方位からの攻撃を防ぐ火属性にしては珍しい防御系の魔法。この魔法を使うことで〔フレイムトルネード〕の中を突き進んだのだ。


しかし、攻撃に優れる火属性魔法が防御にも優れているなんて都合の良い話は無く、空中の映像に移るそのプレイヤーの指輪の宝石はヒビだらけだ。


しかし、倒した弓使いがリーダーだったようで試合はモフモフ同好会の勝利となった。


優勝候補と言われたブレイズの初戦敗退に多くの観客が驚くも、次第にそれはモフモフ同好会を称える声援へと変わった。


するとラインは席を立ち「ちょっと行ってくる」と言って離れていく。おそらくは先ほどのメンバーの控室に行くのだろう。


「説教かな?」

「間違いなくね。それが目的だったし」


目的? もしかして負けることが?


そんな俺の心境を読んだのか、アーシェが頷いた。


「あの子たち、力はあるんだけど戦闘の経験があまりないのよ。私たちばかりが冒険しているのも原因ではあるのだけどね」

「それで、一度本当の戦闘を体験させようと考えたのさ」

「どんな状態でも油断は禁物ということも教えられたらいいとも思っていたけど、これは相手ギルドに感謝かな」


どうやらブレイズはこのイベントを勝つことではなく、ギルドの強化に利用したのか。まあ、宣伝しなくても名前は有名だからな。


「でも、こんな結果だとせっかくのネームバリューが下がるんじゃないのか?」

「それも想定済み。『単に名前が売れてるから』って言う理由でギルド加入申請してくる奴らはこれを見たことで失望し、全部じゃないと思うけどある一定の数は減らせるわ」


にっこり笑うアーシェに『やっぱり女は怖えー』と俺は思った。

これくらいが今の精一杯。バトルシーンは本当に難しい。

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