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VRMMOの錬金術師  作者: 湖上光広
第二章:新たな力
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第十八話:開幕

先に謝罪を。バトルシーンまでたどり着けませんでした。多少は期待していただいた方々、本当に申し訳ありません。

いよいよPVPが始まる時間が迫ってきた。と言うわけで露店を畳むことにする。

なお、露店をするには〝オーナーカーペット″と呼ばれるアイテムが必要で、敷いたカーペットの上でしか露店を経営できない。つまり、勝手に露店を開くことはできないということだ。


ちなみに俺はこのカーペットを持っていない。俺はシュリちゃんが敷いたカーペットの上で営業していたのだ。と言うのも、シュリちゃんの露店は研磨台しか置いていないからだ。


シュリちゃんの腕前からすれば武器防具を売れば良い儲けになると思ったのだが、鍛冶組は自分の名前を売り込む以上に『自店を持っていないプレイヤーに店を持たせる』ことを目的としているため、シュリちゃんはあえて研磨だけに専念することにしたらしい。

他にも、研磨はあまり経験がないから経験を積みたいという理由もあったそうだ。


そんなわけでスペースが余ってるシュリちゃんのカーペットにお邪魔していた、というわけだ。


「お待たせしました。行きましょう」

「ああ」


カーペットをウィンドウに入れたシュリちゃんと一緒にコロセリムに入る。実はラインに席を取ってもらっておいたのだ。当然シュリちゃんの名前を言ったらすぐに手配してくれた。


ウィンドウから〝チケット″を取り出し、それを半分にちぎる。すると『10秒後に転移します』というウィンドウと『10』の数字が現れ、カウントダウンが始まる。



〝チケット″・イベント専用アイテム・―

ちぎることでコロセリム内に転移できる。



隣を見るとシュリちゃんもチケットをちぎっており、同じタイミングで転移した。


転移される場所はメインゲートと呼ばれる場所で、ここから席へと移動する。なお、席の場所はチケットに書かれており、あらゆるところに席の案内バードが設置されているので迷うことはないらしい。……これゲームの領域越えてないか?


「え~と、私たちの席は……ここ、ですか?」


ボードの前で席を確認していたシュリちゃんがなぜか頭の上に?を浮かべる。どうしたのかと思って俺も席を調べると同じように?を浮かべた。


「あ、アルケさん」


二人してボードを再確認しているときに名前を呼ばれたのでその声の方に振り向くと、初めて見る姿のカナデちゃんがいた。

俺の記憶が正しければカナデちゃんは回復・補助を担当していたはずだ。そう考えると今の服装は正装と言えるのかもしれない。


……と俺が考えれるのはここまでだった。


「え~っと、どうしたのその服?」

「? 変ですか?」

「いえ、とても似合ってます。かわいいです!」


シュリちゃんとカナデちゃんは共に初対面だが、シュリちゃんの「かわいい」発言で緊張が無くなったらしく、まるで仲の良い親友のように話がはずんでいる。


しかし、一方は鍛冶屋とは思えない魔法少女風の衣装。

そしてもう片方は青を基調とした修道着、すなわちシスターの格好をしている。


その二人が仲良く話しているのを見て「ああ、やっぱりここはゲームの中なんだなぁ」と改めて実感する。


「ところで、その服はどうしたの?」

「この服ですか? マスターがくれたんです」

「マスター、さんですか?」

「あ、すいません。 ギルドのマスターなので私はマスターと呼んでいるだけで……」


ライン、なにやってんだ?




カナデちゃんが案内してくれた席はコロセリム中央に設置された特製リング、それを一番よく見える席、すなわち最前列だった。

リングと席は10mほど高さが離れており、さらに視えないバリアーも展開されているため観客が攻撃に巻き込まれることはない。


「お、来たな!」


周りのメンバーと話をしていたラインが俺に気づき、声をかける。


「久しぶりだなコスプレ好き」

「って、なんだよその呼び名!?」

「あれを見たら誰でもそう思うぞ」


俺が指す先には今も楽しそうにシュリちゃんと話しながら歩いているカナデちゃん。


「違うぞ!? あれはこの間攻略した教会関係クエストの報酬で、回復系スキルの能力が向上するからあげただけだ!」

「……アーシェ?」

「何でそこで私に訊くかわからないけど、事実よ」

「ッチ」

「おい! その舌打ちなんだ!?」

「ここいいか?」

「無視するなー!」


騒ぐラインはほっとき、空いていた席に座る。シュリちゃんはカナデちゃんの近くの席に座っていた。この調子ならシュリちゃんにとって貴重なドワーフ族以外のフレンドになっているかもな。


「で、ライン。注目の選手はいるか?」

「いや、選手って……」


ラインは呆れながらも何人かプレイヤーの名前を上げた。上手く話題がそれたようでめでたしめでたし。


「ちなみに、ブレイズはどうなってるんだ?」

「一応、俺たちの次に主力のメンバーとロウが参戦している」

「ロウ? なんで?」

「そのメンバーの盾役が今日ダイブできないからだ」

「せめて盾職って呼んであげなさいよ」


「わるいわるい」「ほんとわかってるのかしら」と続くやり取りを見ているともしかしてと思うが、ありえるのだろうか?


「そこらへんどうなの?」

「どうだろ? 仲がいいのは確かだけど」

「正直、見てる分には楽しいよ。今のところは」


ムルルとスバルはどちらも中立的な立場らしい。まあ、「俺はゲームと一生を遂げる!」とか前に行っていた奴がゲームの中で恋愛するとはとても思えないが。




さて、そんな話をしているとどこからかラッパの音が響いてきた。いよいよPVPが開始される。ラッパの音にシンバルやトロンボーンなどの音が重なり、観客のボルテージも上がり始める。


そして甲子園の開幕のようにパーティーたちが姿を現す。ご丁寧に先頭を歩くプレイヤーがギルドの名前が書かれたプラカードを掲げている。

最初に登場したパーティーはブレイズだった。なお、出てくる順番は前日行われた抽選だったらしい。


プラカードを抱えているプレイヤーは知らないプレイヤーだが、三番目にロウがいた。なお、行進の邪魔になるからか、全プレイヤーは非武装だ。当然防具は着ているが。


しばらくしてヴァルキリーも登場した。しかもプラカードを持っていたのがギルドマスターのカリンさんだった。しかし顔は知られていないようで周りはおろか、他のプレイヤーも特に騒がない。

というかギルドマスターが参加していいのか、コレ? いや、以前聞いた空の話だとカリンさんを男性プレイヤーから守るためにヴァルキリーにしたはずだから、あえてカリンさんを出場させることで他のプレイヤーのやる気を上げる作戦かもしれない。


まあ空、じゃなかったエルジュには効果が無さそうな気がするが。


そして出場パーティーがそろった。その数40。大半がギルドからの選抜だが、中にはプラカードに『臨時魔術同盟』とか全プレイヤーの名前が書いたモノもあったので、パーティーの数=現在のギルド数というわけではなさそうだ。


音楽が止むとリングの一部が陥没し、そこからどこかの軍隊服みたいな服を着た男性と同じような服を着た女性が現れた。


「はじめまして! 今回のイベント進行を務めますクリスと申します! そしてこちらの女性はタリサさんです! 彼女には解説を担当します!」


どうやら運営側のプレイヤーっぽいな。もしかしたら運営本人なのかもしれない。


「ご存知の方もいらっしゃるかも知れませんが、このイベントはパーティーVSパーティーによるトーナメント形式となっております。バトル勝利条件は相手のパーティーメンバーが全滅するか、リーダーが倒されるかです。なお、誰がリーダーかわからないようにするため、毎試合ごとに誰をリーダーにするか選定してもらいます」


なるほど。確かに前の試合と同じリーダーなら集中攻撃されるからな。


「なお公平にするため、各プレイヤーはバトル前にこの指輪を装着してもらいます。この指輪がHP代わりとなっており、プレイヤーがダメージを受けると指輪の宝石にヒビが入っていき、HPが0になれば宝石が砕けます。宝石が砕けたプレイヤーは死亡扱いとなり、リングから控室に強制転移されます。この指輪のHPはすべて同じ値となっております。あと、この指輪はイベント戦闘アイテムなのでアクセサリー枠を消費することはありません」


便利なアイテムだな。【錬金術】で調合できないかな?


「そして、装備・スキルには一切制限がありません。皆さんがこれまで得た力を存分に発揮してください!」


制限無しか。でも工夫次第でクズスキルと言われてるスキルでも十分戦えるもんな。実際、【錬金術】も元はクズスキル扱いだったし。


「それでは、これより第2エリア解放記念イベント“コロセリムPVPバトルトーナメント”を始めます!!」


クリスさんの開幕宣言に多くの観客が声を上げる。さあ、どのパーティーが勝つかな?

次回からこそ、バトルシーン!

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