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VRMMOの錬金術師  作者: 湖上光広
第二章:新たな力
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第十五話:知らないうちに急展開

翌日、昨日の小テストが返ってきて再びの補習の告知が努のHPを0にした以外は大したことが無かった学校課から帰ってきた放課後、ダイブする前に例の掲示板を見てみると書き込みはさらに増えていた。


「新しい情報を書き込んでいるのはやっぱりコイツか」


例のIDの人物。全く正体がわからない謎の人物。しかし、今のところは情報を公開しているだけで特に問題はない。


「何だけど、何だろうなこの胸騒ぎは?」


昨日からやけに変な感じがする。しかもどちらかと言うと悪い感じが。


気にしても仕方ないのでいつものようにダイブすることにした。


そして呆然とした。


「……ナニコレ?」

「やっと来たのね。いいから手伝ってくれない?」


セリムさんが怒ったような声と目で俺に要請するが、逆に俺もセリムさんを問い詰めた。


「おかしいでしょ!? 何ですかこの量!?」


今さらかもしれないがアトリエはそこそこ広い。窯や本棚などを除いても十分な広さがある。しかし、今その3分の1以外は歩くことができないほど大量のアイテムで埋まっている。


「何っていつも通りルーチェからの注文よ?」

「これが!?」


ありえない。いくらなんでもこの量は予備も含めた在庫が全て無くならない限りありえないはず!


「一応、注文された内容を俺にも送ってくれますか?」


最近はセリムさん宛に注文書のコミュが送られているので、セリムさんから残りの注文を聞いている。いつものようにその残りを送ってもらうとそこにはいつもと同じくらいの量が記載されていた。

しかし、それとは別に床を埋めているアイテムがあるのだ。


「私もきちんとした話を聞いてないから現状はアイテムが不足していることしかわからない」

「了解。調合を終えたらすぐに向かうよ」


腕前が落ちてるはずなのにこの量を調合できるセリムさんにも驚愕しながら、俺も錬金窯の前に立った。




何とか注文数の調合を終え、俺はルーチェに向かった。そこには開店初日に戻ったような人の群れがいた。


「とりあえず、裏口から」


開店初日の騒動があったので急遽作っておいた従業員専用の裏口に向かう。しかし裏口と言っても裏手に扉があるわけではない。


俺は近くにある家に向かい、扉を開ける。そこは近所の雑貨屋でアリアさんの店と同じようにポーションなども売っている。

しかしこれは全てフェイク。俺は商品が並べられているカウンターをジャンプで超える。本来ならこの瞬間に『進入禁止エリア』の文字が表示される(アリアさんのように好感度システムによっては例外もある)が、この店において俺にだけは表示されない。


そのまま走り、奥にある階段を上る。その先には一つだけ部屋があり、この部屋は特殊な鍵を必要としている。それは……


「オープンセサミ!」


ちなみにこの言葉、日本語では「開けゴマ!」である。


この扉はアリサさんがオウルに特注した扉で鍵穴が無く、扉に刻まれた魔法陣で開ける仕組みだ。その魔法陣を起動させる詠唱をどうするかと口論していたときにふと思いつき、冗談で言ってみたら採用されたのだ。なぜ採用されたのか未だに不明だ。


というか最近オウルが鍛冶職人から何でも屋になりつつあるな。俺も鍛冶関連はシュリちゃんに頼ってるし。今度フェアリーガード正式装備のメンテナンスでもお願いしておこう。


俺の詠唱、むしろ呪文? に反応して開く扉。その部屋には唯一つのモノ以外何も無い。それは地面に描かれた魔法陣。もはやおなじみとなった転移魔法陣だ。


俺が魔法陣に駆け寄ると光りだす魔法陣。そして俺はルーチェの控室に転移した。


「「「アルケさん!」」」


控室には今日出勤予定のクララさんの他にもマリルさんとクラリスさんもいた。


「三人がそろわないほどいけない状況なんですか!?」


短い間とはいえ三人はここで働いてもらっている。そのため幾ら人が増えたからと言って三人全員が売り子としてそろう必要はない。

しかし、それをしなくてはいけない状況がまさに今迫っているのだ。


「アイテムは問題なく作ってもらった。昨日の状況を教えてくれないか?」




昨日担当していたマリルさん曰く、開店したばかりの時間帯はいつものように売り子さん目当ての客とアイテムを補充したい客が来た。特にアップデートしたばかりとのことでポーション系がよく売れたらしい。


様子が変わったのはCWO時間で0時を過ぎた頃、現実では午後6時頃だ。

そしてそれは『【錬金術】関連情報掲示板』が賑わいだした時間帯だ。


俺は確認していなかったのだが実は掲示板の中にルーチェの記述もあったらしく、【錬金術】を習得した新規プレイヤーが実際に成功したアイテムを求めて殺到。

プレイヤーの人数に対し在庫が足らず、予備の在庫まで解放したため現在ルーチェにはほとんど在庫が無い状態。そのために注文が殺到した、ということだった。


状況を理解したところでその対策を話し合うことにする。幸いにして売り子が全員そろっているので、ポーション・攻撃アイテム・アイスの三部門にそれぞれ分けることにした。


なお、俺は売り子をしない。俺はそれを作っている張本人なので俺が出てくれば余計に混乱させてしまう可能性がある。

売り子の三人には悪いが俺は万が一のため控室で待機……というわけもいかない。


俺はすぐさま転移魔法陣で向かいの家に転移し、急いでアトリエに戻る。

アトリエに到着すると休んでいたセリムさんに無理を言ってお願いし、調合が完了した物をアトリエに運んでもらうことにした。

俺が運ぶよりも直接ルーチェに転移できるセリムさんの方が早い。セリムさんには他にも在庫が少なくなったアイテムの伝言役や俺が間に合わないアイテムの調合などもお願いする。

セリムさんは何一つ文句を言わずそれを実行してくれたので、この日は何とか乗り切れた。


なお、今回の件で運営から特に制裁はなかった。




普段ならまだ開店時間なのを急遽休業にし、売り子三人+セリムさん+様子を見に来たティニアさん+俺で今後の対策を話し合うことにする。

普段は周りに話が聞こえないように『水仙』で話し合っているのだが、今回は急遽の休業に暴動を起こすプレイヤー対応としてルーチェの控室での話し合いだ。そのせいですぐ近くにティニアさんがいるため売り子三人は緊張しているが、そこは我慢してほしい。


「さっそくですが、これはしばらく続くのですか?」


ティニアさんの口調がきつい。さらに目も完全に俺だけに向けられている。視線がレーザーだったら俺は間違いなく死んでいるだろう。


「それに関しては何とも言えません」


確認したところ、第二弾の販売合計は2万台を超えているらしい。そして今日までで売れたアイテムの総数は150程度。初日でも売り上げは60程度だったことから、この2日間の売り上げがいかに異常なのか言う必要はないだろう。


しかも、すでに購入制限は付けてあるのでこれ以上の制限はできない。付けたら今まで買っていたプレイヤーからも暴動が起きてしまうかもしれないからな。


「では、どうするんですか?」


若干怯えながらのクラリスさん。この中では一番最年少なのだから仕方がないかもしれない。しかし、下手なことを言って辞められるのも困る。


となればやはり、俺の方で何とかするしかないだろう。




さて、何とかすると言っても何をすればいいのかわからない。

そこで一度ダイブアウトして例の掲示板をチェックする。


確認するのは更新されてる内容ではなく、過去の内容。ルーチェのことを公開した人物やこの掲示板を最初に作った人物の捜索だ。


そしてその人物はどちらも同じ、例のIDの持ち主だった。


ここから俺が推測したのは、このIDの持ち主は俺と同じように【錬金術】をある程度極めた人物だということ。

残る問題はその目的だ。


(ルーチェを排除して自分が店を持ってその利益を得る? いやそれならルーチェの情報を公開する必要がない。)


考えてもわかるはずがないが、ある程度の予防くらいはできるはずと信じて考える。


しかし、良いアイディアは浮かばなかった。

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