第八話:答え
しばらく追加した話が続きます。
「“全て”だからです」
迷ったのは一瞬だった。気がつけば口から勝手に言葉が出ていた。
「俺にとって『錬金術』は憧れ、いや夢です」
しかし、それはある意味当たり前のことだった。なぜなら、それはいつも思っていたことだから。
「そして“高槻光子郎”という人間がここにいる理由でもあります」
そう、俺は【錬金術】という言葉を見てCWOに興味を持った。
例え馬鹿にされ、誰の共感を得ること無くても、俺にとっては何よりも価値のあるもの。
その気持ちを表現するのに戸惑いなどあるわけがない。
「それ故に、錬金術は俺を構成する大部分であり、俺を動かす原動力でもあります」
それを求めるために、俺は苦手なゲームの世界に自ら足を踏み入れのだから。
「……」
老人は俺の答えを聞いても何も言わず、ただ俺を見つめてくる。
どれくらい経っただろうか、老人がニヤッと笑った。
「よかろう。お主の心意気、確かに確認した」
すると老人は俺の正面に立つ。
高さ的に老人が見上げ、俺が見下ろす形になるが、さっきまでのプレッシャーのせいか老人が実際よりも高く見える。
「主、名は?」
「たかつ……アルケです」
今更気づいたが、この世界での自分は高槻光子郎ではなくアルケだった。思わず周りを見渡す。当然老人以外誰もおらず、ほっととため息を吐く。
「アルケか。その名確かに覚えたぞ」
老人はそう言うと店の奥へと進んでいく。老人が進む先にある杖がひとりでに老人を避ける様子はまるで杖に意識があるようだった。
「2日後」
「え?」
「2日後、また来なさい」
そう言って老人はさらに奥へと進んでいく。
「って、ちょっと待ってください!」
まだ質問に答えてくれてない! ということに気づき、急いで声をかける。
「心配せずとも2日後にきちんと答えてやるわい」
そう言って老人は奥の扉の先へと姿を消した。
しばらく待ったが全く出てくる気配が無かったので店を出ることにした。
「一体何だったんだ?」
店を出て気持ちを落ち着かせる。
そしてある不自然なことに気づいた。
「最近のゲームってあそこまでAI技術進んでるのか?」
確かに最近の電化製品にはAIが入っているのが基本だ。しかし先ほどの老人といい、最初に会ったミシェルといい、どう考えても“人間が動かしている”ようにしか見えなかった。
こういう時に何か比較対象があるといいのだが、電化製品には詳しくないし、ゲームもほぼ遊んでいない。遊ぶにしても将棋やチェスくらいだが、このタイプのAIは単にデータによる経験を計算して行っているだけで、今回のようなことの比較対象にはならない。
「ならば、専門家に聞いてみるか」
俺はチャットを呼び出し、設定をリンクにしてから繋いだ。
≪どうした?≫
≪悪いな。 今大丈夫か?≫
繋いだ相手は自称ゲームに関しては歩く図書館こと、廃人のラインだ。
≪今ちょうど狩りが終わったところだから少し待ってくれ≫
するとパーティメンバーに声をかけているらしく、しばらく間が空く。
≪悪いな。 何があったんだ?≫
≪このゲームにおけるAIについて訊きたいんだ≫
≪AI?≫
頭の中で癖となっている右手を口元に当て考えている姿がすぐに想像できる。
俺はこれまで起こったことを簡単に伝えると、ラインが直接話したいと言ってきたので噴水広場で待つことにした。