表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
VRMMOの錬金術師  作者: 湖上光広
第二章:新たな力
89/229

第十二話:セリムさんの恩恵

先に書いておきますが、この話は前話公開前に完成しており、感想欄のコメントを見て書かれたものではありません。

セリムさんは恐ろしいほど優秀だった。


まず錬金術師としての腕前。本人が元から持っている才能なのか、それともお父様が凄すぎたのか、もしかしたらその両方かもしれない。

ログインする状況によって異なるが、大抵の場合俺がログインするとルーチェへの納品分の調合が終わっている。さらに効力が俺より高い時もあるため、ますますルーチェの評判が上がっており、それによって【錬金術】がさらに注目されている。


さらに採取。転移能力によって一瞬で採取場所に移動して採取し、アトリエに戻ってランクごとの仕分けをし、決められた場所に置いてくれ、また採取に向かう。おかげで使いきれるかわからないほどの素材がある状況だ。


そんなわけで俺はひたすら調合を繰り返している。今挑戦しているのは〝ハイポーション″の調合だ。

新しいエリアは当然今まで以上に強い敵がいる。攻撃手段に乏しい俺には回復力の高いHP回復手段が必須だ。そういうわけで調合を繰り返す日々を送る中、ようやくアップデート当日を迎えた。




「とうとう明日から新CWOだな」


確かに新しくなることには変わりないが、そこまでだろうか?


「そうだよ! 全然違う物になるんだから!」

「いや、それは問題だろう」


アップデートは言うならば改良であって改変ではないぞ。


「銃はあるかな?」

「だから無いと思うよ」


どうやら栞ちゃんは未だに銃の登場に期待しているようだ。おそらく無いと思う世羅ちゃんの意見には俺も同意だ。


そんな感じでアップデートに関しては平和だった。




特に延長も無く迎えたアップデート終了。まあ、学生である俺たちは放課後にならないとダイブできないのだが。


しかし、俺の考えは甘かったことを教室で知ることになる。


「では、出席を取ります」


担任が生徒の名前を呼ぶも、それに答える声は全体の3分の2だ。これはダルいから答えないというわけではない。

では、病欠で該当する生徒たちは休んでいるかと言われるとそういうわけでもない。もしかしたら本当に病欠で休んでいる生徒がいるかもしれないが。


「努までいないし」


そう、休んでいる生徒の大半の理由はCWOだ。そしてそれは二つのグループに分類できる。

努のようにアップデート直後からダイブしている生徒と追加パッケージの購入のためにゲーム販売店に並んでいる生徒。


ちなみに、空はキチンと登校している。まあ一緒に登校したから間違いないだろう。……早退とかしてないといいが。


残念ながらその予感は的中し、昼食は後輩三人組、その中の心ちゃんと世羅ちゃんの計三人で食べることになった。


「全く空のやつ」

「仕方ないですね」

「栞ちゃんも、学校にすら来てないから」


この三人は本当に仲が良く、いつも三人一緒に登校しているらしく、今朝は『学校に行かずCWOにダイブする!』と栞ちゃんからメールがあったらしい。

ちなみに、休み時間にアップデートしてからの掲示板を見てみたが栞ちゃん待望の銃は存在しなかった。


「ところで、アップデート後はどうするの?」

「私たちはもう少しレベル上げですね」

「上の人たち、えっとギルドマスターとか副ギルドマスターとかは新しく開放されたエリアを探索するそうです」


まだ内容が不透明な新規エリアは実力者が、それ以外の面々は個々の強化というわけか。

俺はと言えば早くガラス砂を手に入れたい。

となれば、俺がまずやるべきことは例の蔓の排除か。


弁当を食べ終えたところでチャイムが鳴り、俺たちはそれぞれの教室に戻った。


ちなみに午後の数学でテストがあった。出来は悪くないが、今日来ていなかった連中は補習確定。しかも本来なら休日になるはずの今週土曜日に。俺が通っている学校は第1と第3土曜日のみ授業があるシステムのため、今週は休みだった。

それだけでも悲惨なのに、立ち去った教師の満面の笑みが怖かった。大丈夫だろうか努。




そして神様は平等に罰を与えることに下らしい。

放課後、俺が家に帰ると休憩のためか下に降りてきた空と遭遇した。


「えっと……」


動揺を隠せない空に俺は特売で買ってきた袋を見せ、一言だけ告げた。


「今日は久しぶりにピーマン祭りな」

「いやーーーーーーー!!!!!!」





さて、いろんな犠牲があった気がするが気にすることもなく俺もアップデートが終わったCWOにダイブする。


ダイブすると『アップデート処理中』と表示され、すぐに『処理完了。お楽しみください』と文字が変わり、いつものダイブしている感覚が戻ってくる。


それが終わると俺はいつも通りアトリエにいた。


「あ、おかえり」


そしていつも通りセリムさんが調合を……


「なにそれ?」

「???」

「だからそれはダメ」


と言うか、なぜそれが伝染している?


気を取り直して、ここ最近ルーチェの納品分を調合してくれているので、セリムさんが調合しているのはいい。しかし、その調合に使っている道具が問題だった。


「そんなものどこにあったんだ?」


セリムさんの手元にあるのは秤。しかし、俺はその秤を見たことがないし、そもそも秤なんて使ったことがない。


「これは館に残っていたモノ」

「あの館に?」


どうやら採取する時に近くを通りかかった際に思い出したそうで、回収してきたらしい。よく見れば焼けたような跡があるものの、秤としての機能は失われていないようだ。


「それで、何を計っているんだ?」

「これは調合粉末」


ちなみに使っている秤は片方に重り片方に物を載せて測る、いわゆる天秤だ。


「ところでなんで重さを計ってるの?」

「この重さで効力が決まるから」

「え!?」


驚く俺に対し、冷静に重さを計っているセリムさん。

調合粉末を使う際、俺は調合でできた物をそのまま使用してきた。しかし、よく考えてみれば全ての調合で使う量が同じであるはずがない。

なるほど、セリムさんが調合したアイテムの効力が高いのはこういうことをしているからか。……この反省は次からの調合に活かさないとな。


「そう言えば、アップデートしたんだけど何か変化は?」


以前はNPCがプレイヤーにもダメージが与えられるようになった。となれば、今回もなにか神託が降りていてもおかしくない。


「今まで封鎖されていた場所に行けるようになった」


なるほど、それは大事だ。


「いくつか新しいアイテムが売られたり、新しい店ができたりしているみたい」


それも重要だ。特に新しい店には【錬金術】関連の本や素材があるかもしれない。


「私の能力に制限が付いた」


それも重要……え!?


「具体的には!?」

「転移に関しては今まで行けなかった場所に行けなくなった」

「ちなみに、どこ?」

「魔族が住んでるエリアとか」


どうやらNPCたちの中にはまだ公開していないエリアにも転移できるらしい。まあ、CWOのプログラムの中で生きてる存在だから人間が設けた制限も受けないのかもしれないな。

詳しい話を聞いてみるとどうやら俺が行ったエリアしか行けなくなってしまったようだ。


「他には? 錬金術関連とか」

「もちろん、ある。あなたが知らないレシピ、アイテムの調合はあなたがいない時でも禁止された」


当然と言えば当然か。それが俺の感想だった。

それを許してしまえば俺は本を探す必要もなくなるからな。


個人的はどんなアイテムがあるのかすごい訊いてみたいが、諦める。


「あと、神からあなたにも神託があるって聞いてる」


それがトリガーとなったのか、俺にメールが届いた。相手は運営だ。


『今回のアップデートに関して補足があります。

すでにお気づきかと思いますが、あなたの側にいるNPC“セリム”はNPCの中でも【錬金術】に特化したNPCです。本来なら最初に【錬金術】のランクが最高ランクに達成されたプレイヤーに与えられる特典だったのですが、どうやらあなたのことを気に入ってしまったらしく「他のプレイヤーに仕えたくない。彼としか行動したくない」とダダをこねるようになったので、仕方なくあなたの下に送りました。あなたが受け入れるかどうかは賭けだったのですが、なんとか成功したことは素直にうれしく思います

しかし、現状セリムの能力はゲームのバランスを超えた能力なので、制限を設けることを条件とし、アップデート完了と同時に実行されています。そのため、セリムの錬金術の腕前は【中級錬金術】の高レベルと同等になっています。

 以上がセリムの現状となっています。なお、あなたの【錬金術】レベルが上がることでセリムの枷も外れるようになっています。

 では、今後もCWOをお楽しみください』



セリムさんが異常なのは分かっていたが最速最高ランク到達者への特典だったとは。ということは他のスキルにもそういう特典があるかもしれないな。


しかし、制限をかけてしまったのは申し訳ない。こうなれば一日も早く【錬金術】のランクアップを目指さないとな!


……あれ? 続きがある?


『追伸

 “セリム”は私が創った中で最高傑作とも言える娘の一人です。無碍に扱ったら君のデータをいじっちゃうのでよろしく♪』


…………………………(汗)


「どうかしたの?」

「いや、愛されてるなぁって」

「???」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ