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VRMMOの錬金術師  作者: 湖上光広
第二章:新たな力
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第十話:再会

さて、いろいろあったがアップデートまで一週間となった。


さすがにこの時期になると勧誘騒ぎは終結し、いかにして新規参加者をギルドに加入させるかについて議論しているらしい。


まあ、俺には関係ないが。




「他に何か意見はないか?」

「その前に、何で俺がブレイズの会議に出席しなくちゃいけないんだ?」

「やっぱり、条件3は他の代表を立てた方がいいね。ムルルはどう思う?」

「最近だとマリスあたりが妥当だと思う」

「だから話を聞け!」


ここはブレイズのギルド、ミーティングルーム。そこで行われている新規参加者獲得会議。

なぜか俺はそこにいた。


「ボムの納品に来ただけなのに、なんでこんなことに」

「正直意見が欲しい。我々だけでは似たような意見になってしまうからな」


ロウ曰く、ここ最近同じ議題ばかり行っているため発言の内容が偏ってきているらしく、全く染まっていない第三者の意見を聞こうと決まった時に俺が納品でブレイズを訪れたということ。


「今話している条件3の改正。これに関しては完全にこっちの話だからアルケは無視していい」


無視していいと言われてるが、内情を知らないから発言しなくていいが正しいと思う。


「問題なのは実力者以外の勧誘方法だ」

「実力者以外?」

「実力者は条件3を突破できれば自動的に集まる。しかし、それだけではギルドの規模を拡大することができない」


実際、今のトップギルドは中堅ギルドの拡大を恐れている。質では負けても数で勝てば中堅ギルドがトップギルドに勝つことは可能だからだ。


「今回のアップデートのようにパーティーならまだいいが、これがギルド全体となった時、数が少ないのは結構厳しい」

「言ってることはわかるけど……」


しかし、これは俺にはどうすることもできない。

一番簡単な方法は条件3を排除することだが、それのせいでブレイズに入れなかった今の参加者の不満が爆発する危険性があるためできない。


「まあ、そう簡単に意見なんて出ないよね」


そう言うのはスバル。その発言に他のメンバーも口では言わずとも同意している。


「一応、前につと、じゃなくてラインから相談されて考えていた策があるにはあるんだが」

「「「「「「……」」」」」」


俺のまさかの発言にその場の全員の目が点になった。




俺が提案したのはよく会社で使われている子会社制度みたいなものだ。

つまり、ブレイズ以外にギルドを作り、そこは初心者やレベルの低いプレイヤーでも入れる条件にする。そこで鍛えて上げ、力がついてきたらブレイズに異動させる。

どちらかと言うと、子会社と言うより本店と支店みたいな感じだな。


そんな俺の意見は審議という結論になった。そこから先はブレイズの問題なので俺はお役御免とブレイズを後にする。


「さて、次の納品先はヴァルキリーか」


正確にはエルジュなのだが、なぜかメールに出ないので直接行くことにした。


その先で同じような質問をされたので同じように答えておいた。




「それでどうなったんだ?」

翌日の昼休み、俺以外の全員に問う。すでに努にはヴァルキリーで同じようなことがあったと伝えてある。

努としては「ヴァルキリーのギルドに入れたのか!?」と別の方で驚かれ、そう言えば男子禁制だと思いだし、「入り口でエルジュに会っただけだ」と答えた。

実際、ギルドには一歩も入ってない。


「案としては妥当ということだが、誰をギルドマスターにするかで検討中だ」

「こっちも同じ感じ、かな?」


努の発言に同意するように空は後輩三人組に目を向ける。


「一部では“空さんをギルドマスターに”という声もあるそうですよ?」

「そうだね。私も同意したし」

「私初耳……」


世羅ちゃんが少し落ち込んだ。それを必死でなだめる栞ちゃん。空もその意見は聞いてなかったようで心ちゃんにどういうことか質問している。


「とりあえず、これでアップデート対策もなんとかなりそうだ。この礼はその内に」

「別にいいよ」


努のお礼と言うとゲーム関連になるからな。まあ、【錬金術】関連の情報があればありがたくいただこう。





「ホントに人がいないな」


俺は共通エリア、正確には第1エリアを一人で歩いている。もうこの近辺では満足に経験値が稼げないらしく、最近のプレイヤーはエリアボスがいたダンジョンか第2エリアに行っているのでこの周辺には誰もいない。

まあ、そのほうが好都合だが。


「ここに来るのも久しぶりだ」


俺の視界に移る廃墟。そう、例の館に俺は来ていた。


「あれから多少は変化しているといいけど」


あの時はまだ【中級錬金術】だった。【上級錬金術】になったことで何か変化が無いかと人が来る前に確かめておきたかったのだ。


入り口から入り、まずは一階を捜索する。するとすぐに違う所を見つけた。


「これって、地下か?」


入ってすぐ右の通路。その端にぽっかり空いた穴。そしてその穴から見える階段。間違いなく前に来たときは無かったものだ。


「念のために他の場所も見ておくか」


トラップの可能性もあるので一度屋敷全体を捜索することにする。


結果、一階では最初に見つけた階段があった場所の対角線上の通路と食堂で地下への階段が見つかり、二階と屋根裏部屋は変化なし。


すると三か所見つけた地下への階段のどれを進むかということになる。


他に情報は無いかと周辺を探すも特に何も無し。


しかし、以前の調合石のように【錬金術】関連が必ずあるはずと思い、一度外からも館を調べてみることに。それが功を奏し、館の壁面に何かが書かれているのを見つけた。


そこに書かれていた文字と数字からそれが何を伝えたいかを判断した俺は再び屋敷の中に入り、まずは最初に見つけた階段に〝調合水″を落とす。

すると床がスライドし、階段を隠してしまった。


次に対角線上の通路の階段へと向かい、今度は〝調合粉末″を落とす。

そう、書かれていた文字は調合方法で、俺はそこに該当する調合品を落としていたのだ。

こっちも床がスライドして階段を隠す。


残るは食堂だけだったが、すでに長机が動いており、長机があった場所の中央に魔方陣が描かれている。

魔方陣に近づくとその手前にまたしても調合方法が書かれていた。しかし、その調合方法は俺が知らないモノだった。


『〝調合水(ランクR以上)″×1+〝ポーション(ランクR以上)″×1』


「これは知らない調合だな」


調合自体は可能だと思い、一旦館から出る。

アトリエに戻って調合してみると思わぬモノができた。



〝命の水″・調合アイテム・R

【錬金術】専用アイテム。 ???の調合に使うモノ。



「ここで『???』が出てくるとはな」


この『???』の正体はわからないがどういう物かは分かる。すなわち、俺が知らないアイテムだということだ。


「今は考えてもしょうがないか」


〝命の水″というアイテム名だけではさすがにヒントが少ない。

とりあえずこのことは頭の片隅でも置いといて再び館に行くことにしよう。


念のため、調合水と調合粉末、そして向こうで調合できるように調合石を少し多めに持っていくか。〝命の水″も忘れずに。




再びやってきました館。

中に入ると最初に見つけた階段は隠されたままだったので、そのまま食堂進むと魔法陣は俺が去った時と同じ状態で待っていました。


「俺以外が来たらどうなってたんだろ?」


ふと思い、掲示板をのぞいてみるがどこにも館も魔法陣も出てきていないので問題なし。


ではさっそくと完成したばかりの〝命の水″を魔法陣に垂らす。

すると魔法陣が光りだし、やがて消えた。


「え?」


失敗した? と思った瞬間、長机に置かれた燭台に火が灯る。


全ての燭台に火が灯ると今度は長机が三つに割れ、三角形を作る。

そして俺はその中心に取り残されてしまった。


困惑する俺の足元、正確には俺の少し手前に再度出現する魔法陣。


魔法陣が光りだし、今度は煙まで現れた。


そして煙越しに見えるシルエット。


「お久しぶり。覚えてくれてたかな?」


それはある意味でここに一番ふさわしい、今まで一番謎に包まれた少女の声だった。

今回の話はギルド内の『派閥』みたいなものを『ギルド内での組み分け的な意味で新しいギルドを立ち上げる』と言うふうに言い換えています。

もし、これがMMO的に“絶対にありえない!”ことならば教えてください。

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