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VRMMOの錬金術師  作者: 湖上光広
第一章:ダイブイン
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第七十二話:影響と新たな始まり

老人とシュリちゃんに会い、これでイベント関連の後始末も終わったと思っていた。


しかし、本当に大変なのはこれからだった。


なんと、今回のイベントは運営により動画保存されており、イベント終了から(現実時間で)二日後、それを編集したPVが公式ページで公開された。


動画の主役となったのはブレイズ。まあ、戦闘シーンが一番盛り上がるからそれに対して文句は言わない。

これによりブレイズの評判が上がり、連日加入したいというプレイヤーが殺到し、その疲労からか努は授業中によく寝るようになった。

……普段もどちらかと言うと寝ているから俺以外誰も気にしないが。


そんな中とうとうエリア1のボス部屋が発見され、レイドが組まれることになった。攻撃の要&リーダーに選抜されたのは当然ブレイズ。元βトッププレイヤーとして有名だったラインが集めた精鋭であるため実力があるのに加え、例のPVでその知名度はさらに上がったため誰からも反対意見は無く、レイド会議もスムーズに行われたらしい。


俺は参加していないが、エルジュは参加していたのでその時のことを聞いたのだ。


レイドに参加したのは今存在する全ギルドから選出された8パーティー。少し多い気がするが、またしてもジャイアントデーモンだった場合を想定した編成だった。


あの時は〝グレンダイム″があったからこそ大ダメージを与えられたが本来なら全滅してもおかしくなかったからな。


ちなみに、今存在するギルドは30を超えている。CWOではお金と簡単なクエストさえクリアすればギルドは設立できる。まあ、必要となるお金が結構な金額なのだが。


そして先行部隊、いわゆる偵察隊がいざボス部屋に突入してみれば、そこにいたのはデーモンとデーモンソルジャー。まあ、デーモンは二体に増えてるし、デーモンソルジャーもβの時より多かったらしい。その報告に拍子抜けしたのか、ラインは偵察隊が帰還してすぐに突撃を宣言。一応それぞれの装備もβ時代より強化されていたため、多少は苦労したらしい。

それでも、ジャイアントデーモンに比べれば格下だったからか、ラインの指示により一人も死亡することなくデーモンを討伐し、エリア2への道が開かれた。


これだけ聞けばイベントの順番間違えてないか? と思われるが、ジャイアントデーモンは大きくしただけに対し、エリアボスのデーモンは戦闘スタイルや攻撃方法いずれもβと異なっていたらしいので、実際はエリアボスのほうが苦労したとラインは言っていた。


結果的に討伐できたからいいが、今度からは慎重に攻略してほしいと俺は思った。


エリア2にも街があり、そこで解放された噴水によりボスを倒さなくても転移できるみたいなので、解放された日は多くのプレイヤーがエリア2を訪れ、レイドに参加したプレイヤーたちを称えていた。ここでもブレイズが一番感謝されていた。


こんな感じでブレイズにとっては良い方向で影響があった。




しかし、エルジュに関してはすべてが良しというわけにはいかなかった。


なんでもエルジュや後輩三人組が所属するギルド“ヴァルキリー”は、エルフ族エリア防衛に力を入れる方針だったらしく、勝手な行動をしたとして四人ともギルドマスターに怒られたらしい。

さらにエルジュは副ギルドマスターから一般ギルドプレイヤーに格下げされてしまった。三人組に関しては特に処罰無し。まあ、元から地位が一般なのでそれ以上下げられないということらしいが。減給とかも無いしな。


しかし本人は格下げについて不義を唱えず、むしろ当然だと言っていた。ギルドが決めた方針を勝手に破ったのは自分だからと言っており、誘った俺にも責任は無いと言う。


そう言われた以上、俺にはどうすることもできないが、やはり気になったので実は覗きに行ったことがある。


そこで見たのは楽しそうにギルドメンバー(後輩三人組以外)と談笑するエルジュの姿。実はそのメンバーはエルジュの後任として副ギルドマスターになったプレイヤーらしく、今は彼女の育成を担当しており、その関連で新たに知り合えたギルドメンバーと仲良くしているらしい。


このことはヴァルキリーギルドマスターであるカリンさんから聞いた話だ。

覗かれているのが見つかり、とっさに俺がエルジュの兄であることを告げるとそう教えてくれた。なんでもエルジュにアルケと言う兄がいることはギルドでは周知の事実らしい。……一体何を言ったアイツ?


カリンさんは「格下げはやりすぎだがギルドの秩序を守るにはしょうがなかった」と俺に言い、謝罪してくれた。俺はエルジュもそのことを理解していることを伝え、今後も妹をよろしくと言ってその場を離れた。


その際に、フレンド登録の申請があったので登録しておいた。


それを空に言ったらとても驚かれた。

なんでもカリンさんのリアルは俺でも知っている超有名女子高、所謂お嬢様学校の生徒らしく(ギルド設立時にそのことをメンバーに公表したとのこと)、男とのかかわりが無いカリンさんを守るという目的でギルドの名前を“ヴァルキリー”にして『男除け』を図ったと空が説明してくれた。


なので「絶対にギルドメンバーにはバレないよう注意して」と忠告された。




恐ろしや、女の園。





こんな感じで影響の差はあるものの、どちらも一応は平穏な日々をどちらも送っている。


そして俺は……そのどちらにも属していない、まさに大変な日々を送ることになっている。


原因は当然あのPV。


実はイベント用に作られたページから、俺たちは運営が想定していたイベントの進行とまったく違う道筋を歩んでいたことが発覚した。


『ドワーフ族に創らせた武具を持って魔族がエルフ族エリアに侵攻』

⇒『プレイヤーたちが撃退』

⇒『その後、魔族が野営地としていた場所に設置された転移魔方陣から“牢獄エリア”へ転移』

⇒『ジャイアントデーモン+デーモンウォーリアーを倒してドワーフ族エリアを解放』


これが本来の流れになるはずだった。


しかし俺が〝簡易転移石″の存在に気づき、それを老人が調合してしまうというイレギュラーが発生したことで、先にドワーフ族エリアが解放され、魔族の襲撃は事前にプレイヤーにとって阻止される結果となった。


このことに対して運営は『各エリアには噴水を使わずに他エリアへの転移手段を持つNPCが二人以上配置されていたが、彼らに搭載した好感度システムは非情に上げにくい設定のため、よもやプレイヤーに協力する者が現れるのは想定外だった』と発表。

確かに、あの老人の過去設定は悲惨で、めったに他人に協力しないとアリアさんも最初言っていた。


まさに“【錬金術】は不可能を可能にする”だったのだ。


しかし、そんな事情よりもPVを見たプレイヤーたちが興味を抱いたことがあった。

それは『あの時使われたアイテムらしきモノは何!?』だ。


当然運営は『【錬金術】で調合できる攻撃アイテム』と公表。これにより、多くの後輩が生まれると思ったのだが、ここで問題が発生する。


それは『すでに多くのプレイヤーはスキル枠が埋まっている』ということだ。


そこで彼らが取った手段は俺の捜索だ。

PVですでに顔はバレており、背中の羽から妖精族だとわかっているので、人海戦術を使えばすぐに見つけられた。


そして彼らからパーティー申請やギルド加入要請の申し込みが殺到したが、すべて断っている。


専属になると時間が取られるのもそうだが、せっかく知り合えたアリアさんたちと会えなくなるのが嫌なのも事実だ。


なのでここ最近は【速足】と新たに取得した【隠密】で逃げる日々が続いている。

せっかく空けておいたスキル枠がこんなことで埋められてしまったのには少し苛立ちを感じているが、それは言っても意味が無いので我慢している。今後役立つかもしれないし。


しかし、このまま逃げ続けるのも厳しいのでなにか案はないかと『水仙』で話していると、ティニアさんから提案があった。


「いっそのこと、お店を持ってしまえばいいのでは?」

「お店って露店のことですか?」

「ええ。 他の客人が欲しいのはアルケさんというよりもアイテムなのでしょう? なら、それを買える場所を作れば、彼らも追ってこないのでは?」




この案はそこにいた全員に賛同され、俺は店を構えることにした。


その際、ティニアさんから空いてる店舗があると教えてもらい、そこを譲ってもらうことにした。


場所は噴水広場から少し離れた元雑貨屋で、なんとなくアリアさんの店に似ていた。と言っても一階だけで奥にわずかな住居スペースがあるくらいの小さい店舗だが。


空き店舗になってから少し時間が経っていたのでまずは掃除からはじめた。

その際にアリアさんとアリサさんが店内の装飾を手伝ってくれた。そのせいで店内が少し女性らしくなってしまったが俺の外見が女性なので気にしないことにした。


それとミシェルとフェアリーガードの隊員たちがカウンターの補修や他に必要な機材の運搬を協力してくれた。ボムのお礼だと言っていたがなぜか男性隊員たちがやる気に満ちているのには疑問だった。

それを言うとミシェルは苦笑していた。なぜ?


さらにあの老人からは看板をいただいた。その名は〝ルーチェ″。

後で調べてみると“光”という意味だった。


その意味を知って老人の意図を悟る。『【錬金術】に光をもたらしてほしい』という感じだろう。

なら、その想い、叶えてみせよう。




こうして、俺の新たな日々、俺の想像以上の波乱の日々が幕を開けようとしていた。

少し小話を挟んで第二章に続きます。


ちなみに、ルーチェはイタリア語です。

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