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VRMMOの錬金術師  作者: 湖上光広
第一章:ダイブイン
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第六十八話(番外編):ジャイアントデーモンの心

昨日はパソコンがお亡くなりになり、投稿できずに申し訳ありませんでした。そのため、今日は二話連続投稿です。(ストックはUSBに残っていたのでセーフ!)

我はデーモンの中でも巨大な力を持って生まれた。それ故に、我はドワーフ族エリア襲撃の際、その大将に任命された。


しかし、その力を示すことはなかった。


ドワーフ族と言えば、我ら魔族にも勝る技術の持ち主であり、それ故に制圧には多少の犠牲を覚悟していた。

しかしいざ闘いが始まれば呆気なかった。


確かに武器は優れていたが、その性能を正しく使えている者は一握りだった。

その彼らとて我の配下たるデーモンウォーリアーには相手にならず、想定した被害を大きく下回る損害でドワーフ族エリアの制圧には成功した。


その後、噴水に魔王様から与えられた毒薬を流し、その機能を封じた。しかしその毒薬は我ら魔族には効果が無く、我らは噴水からかねてより創られていた牢獄エリアへドワーフ族たちを転移させ、武器を創らせた。


武器を創らせる際にドワーフ族たちにはある腕輪を装着させた。これは呪具の一つで経験値と言うものを奪うものらしい。

ドワーフ族には武器を創ることで己の力を高めるという特性があり、それを奪うための道具だと聞いている。万が一にでも反乱を防ぐためということだが、我は不満を覚えていた。


我は闘いを望んで生まれた。その願い故に、これほどの力を得たというのにその力を全く活かせていない。


たまにわざと牢屋のカギを緩め脱走させることで、逃げているドワーフ族を狩ろうとも思ったがだれも逃げやしない。全員怯え、隅で丸くなるだけだ。


我は退屈だった。





そんな中で、ある日我は面白いモノを見つけた。


それは他のドワーフ族に比べ小さく、奇妙な服を着ているドワーフ族だった。どうやら女らしいそのドワーフ族はしきりに手を動かしていた。


我はそれが何かわからなかったが他のドワーフ族が話しているのを聞いて理解した。そのドワーフ族はずっと助けを呼んでいるらしい。

しかし、この牢獄エリアは外部との連絡を一切遮断する独立されたエリアであるため、そんなことは不可能だった。


本来ならその行動を止めるべきなのだが我はそれを利用しようと考えた。


配下のデーモンウォーリアーを使い、鉱山へと不足した鉱物の採取に向かわせた。採取するのは当然捕獲したドワーフ族たちだ。


配下の一体が「逃げられるのでは?」と意見を言ったが黙らせた。どのみち、噴水を使えないのでは逃げる場所などないがな。


ほとんどの採取メンバーは適当に選んだが、あのドワーフ族だけは初めから組み込んでいた。そして彼らはデーモンウォーリアーが監視をしている中採取を始めた。

ある程度数を確保できたところでわざと一体のデーモンウォーリアーを呼んだ。それは例のドワーフ族を含む集団を監視していたデーモンウォーリアーで採取状況の確認をしただけだ。

しかし、その間にあのドワーフ族は行動していた。それはすっと行っていたあの動作。間違いなく外部へ何かを伝える手段だろう。

我はあえて話を伸ばし、それが終わるまで待った。ほんの少しだったが操作は終わったようで、改めてそのドワーフ族を見た時、その眼には希望の光を宿していた。

それを見て、我はうまくいったと内心喜んでいた。


なぜ我があのドワーフ族の行動を見逃したかというと、闘いを起こすためだ。


次の計画として魔力の高いエルフ族を襲い、その魔力を奪う計画があったのだが、我は巨体ゆえにすぐ見つかるとその計画から外れていた。


またしても、我は闘いを奪われた。

ならば、我が闘いを起こしてやろうと思ったのだ。


それからは特に何をするでもなく待った。


相変わらずドワーフ族たちを監視する日々が続いたが、我は待った。闘いの炎が灯るその瞬間を。




そしてその時は来た。


儀式のためドワーフ族エリアに向かった配下の者達が予定した時間を過ぎても帰ってこなかった。襲撃があったことを我は知った。


我は配下のデーモンウォーリアーを全員ドワーフ族エリアに向かわせた。ここの守りなど我だけで十分だと伝えたが、我が力を酷使するのに彼らは邪魔だっただけだ。


やがて牢獄エリアに新たな魔力の気配を察知した。

我ら魔族はエルフ族や妖精族には劣るが魔力の使い方に優れた種族だ。だからこそ新たな侵入者、すなわち我が望んだ敵が現れたことに歓喜した。


我は魔法様より授かった姿を消す魔法の玉を使い、彼らの動向を探ることにした。

本来ならすぐさま襲いかかろうかと思ったがそれは少し待った。想像以上に人数が少なく、楽しめそうにないと思ったのもその一つだが、最大の理由は彼らは捕らわれていたドワーフ族たちの救出を始めたのを見たからだ。安心した瞬間に襲い、より恐怖におびえる姿を見てみたいと思ったのだ。

我ら魔族にとって恐怖こそが最高のごちそうだからだ。




やがて彼らは最奥に閉じ込め、作業していたドワーフ族たちの元にたどり着いた。そして、我もそれに続き、彼らの一人が脱出しようとした瞬間、姿を現し大斧を振った。


残念ながら一撃で仕留めることはできなかったが、恐怖の顔を見ることができたので良しとしよう。


すぐさま戦闘が始まった。我が待ち望んだ瞬間が今ここに叶った。







しかし、その熱は徐々に冷め始めた。敵が弱いのだ。


一人強いのがいるが、それ以外はそうでもなかった。デーモンウォーリアーよりは強いだろうが、我と戦うには不十分だった。


そして人数が少ない。元から少数なのは気づいており、せめて数を増やしてやろうとドワーフ族たちと合流するのを待ったのに、ドワーフ族たちは誰一人として参戦しなかった。

たかが7人で相手にできるほど、我は弱くない。その気になればいつでも殺せるので、もう少し遊ぶことにした。




やがて強いと感じていた一人の武器が壊れた。我の盾に剣先がめり込んでいるが、この程度で壊れる盾ではないと無視した。別の武器に変えたようだが、先ほどまでの威力は無かった。


(もう飽きた)


我はそう思い、役割に従って彼らを排除することにした。次はより楽しめることを期待して。




そんな時、直接戦闘には参加せず、姑息な手段で戦闘に参加していた一人の人間が飛び込んできた。我はそれを最初の獲物にしようと手加減無しで大斧を振った。


それをうまく防ぎ、次に盾で攻撃しようとしたがそれは別の人間どもに遮られた。そのまま直進し、我に攻撃をしてくると思いきや、それは我の下を通りすぎた。

疑問に思ったが次の瞬間、我の下で爆発が起きた。それも一つや二つではない。爆発の連鎖に耐えきれず、我は膝をついてしまった。


その瞬間、我は動揺し、歓喜した。


たった一人の人間にここまでされたのだ。密かに一番脆弱だと思い、一番つまらない存在と思っていたその人物は確かに我に傷を負わせた。


(認めよう。 汝は我の最初の獲物にふさわしい!)


その人間が我の膝を登り、我の体をさらに登ろうとする。我は起き上がり、いまだ振り下ろしたままだった大斧を振り上げた。

人間は盾を構え、大斧の攻撃に耐えたが上空に打ち上げられた。


その人間と目が合った。その眼には光が宿っていた。


その眼は見たことがあった。あのドワーフ族と同じ眼。絶望に負けず、希望を持ち続けた者だけが持つことのできる“強き眼”。


その瞬間、我を襲ったのは歓喜ではなく、恐怖だった。急いでこの人間を始末しなければならないと本能に従い、盾で攻撃した。


すると人間は盾目がけて何かを投げた。見たことが無いその丸い物体は盾に当たる寸前に大爆発を起こした。


爆風は我を襲い、盾を襲い、そして放った人間すらも襲った。そして人間はそのまま光の粒となって消えた。


衝撃のあまり我は体勢を崩し、後ろに倒れた。

そして気づいた。




(盾が!)




魔王様より授かった強い魔法抵抗力を持つ盾。この盾がある限り、我に魔法は通用しないはずだった。

その盾にヒビが走っている。その中心は先ほど折れた剣の剣先が刺さった場所。


(まさか、これを狙って!?)


そう考える我の前でヒビは盾全体に広がり、砕けた。


呆然とする我。そこに襲い掛かる攻撃。

我も残った大斧で反撃するが、盾を失った我は攻撃全てを防ぐことができず、やがて最後の時を迎えた。


「これで、終わりだ!」


魔法により大斧も破壊され、最初に強いと感じさせた者が剣を輝かせ突撃してくる。本来ならまだ動くはずだった我だが、その攻撃を受けることにした。


(満足だ)


そう、我の心は満たされていた。


闘うために生まれ、そして闘いの中で死ぬ。これ以上の満足は他にないだろう。


(それでも、願わくば……)


輝く剣が我を貫く。そして我の体にヒビが走る。


我の体が消えていく。

我の目は我を倒し、喜びの顔や安堵の顔で満ち溢れていた。


しかし、我の目に映るのはここにはいない強き者の姿。


(もう一度、かの者と闘ってみたかった)


それを最後に我の意識は途絶えた。

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