第六十四話:攻撃アイテムの力
タイトルにもあるように攻撃アイテムが活躍します。完全無双ではありませんが。
(最近なかなか修正が出来なくてすいません)
《ライン! そっちはどうなってる!?》
《こっちは依然として戦闘中だ! そっちこそ救出した人たちは!?》
《どこを探してもいない。だが、情報は入手した! だからそっちに合流する!》
《わかった!》
リンクで会話しながら俺も中央を目指す。ちなみに文字入力用のウィンドウは開いていない。
最初のころはできなかったが、俺もVRに慣れてきたのでチャットを文字入力ではなく、念じることで通話、テレパシーみたいなものが出来るようになった。
脳に電磁信号を流しているVRMMOならではの機能だ。
当然ながらリンクチャットを繋いでおく必要があるがそれは転移前にすでに繋いである。
チャットで交信しながら通路を進み、ドワーフ族エリアの噴水広場に出ると、そこではブレイズがモンスター達に囲まれていた。
「! これでもくらえ!」
とっさに〝スノープリズム″を使って動きを止め、〝フレイムボム″で爆散させ道を作り、生き残った連中は再度〝スノープリズム″を通り過ぎる時に発動させながら、ブレイズと合流する。
ブレイズは噴水を背にしていた。見た感じラインはまだ大丈夫のようだが、ロウが盾を展開して他の全員をかばい、カナデちゃんが〔ヒール〕でロウの体力を回復させながらしのいでいるようだ。
「アルケ、か?」
「とりあえずこれで回復しろ!」
〝錬金ポーション″を渡し、目の前の魔族にフレイムボムを投げる。
距離が近いためこのままでは俺たちまで爆風の餌食になるが、爆発する前に〝レインティア″をすぐ手前で発動させ、雨の勢いで爆風を防ぐ。
爆風で視界が悪くなっているところに、〝ライジンディスク″を投げる。
この〝ライジンディスク″は効力Bのアイテムで投げても設置できる付属効果が付いていた。
〝スノープリズム″と〝レインティア″はまだ効力Cしかないので推測にすぎないが、もしかしたら効力B以上には通常よりも特殊な効果が付くのかもしれない。
そういうふうに考えるとあのフレイムボムの威力の高さやデメリット効果があるのにも納得がいく。
なお、〝ライジンディスク″に効力Bがあるのは一番攻撃力が強いため、他のアイテムよりも多く調合してきたためだ。
爆風が晴れ、激怒したモンスターたちがこっちに向かってくるが、そこはすでに空雷原だ。次から次へと、空から落ちてきた雷が彼らに降り注ぎ、次々に消滅していく。
生き残ったモンスターも〝フレイムボム″でご退場してもらう。当然〝レインティア″も使ってこっちにはダメージは無い。
「やっぱり、私たちいらなかったんじゃない?」
アーシェが〝清水″を飲みながら俺を恨みがましい目で見つめてくる。どうやらHP以外にも空腹度も危険だったらしい。
となるとラインやロウもいったん下げたほうがいいな。
そう考え、〝スノープリズム″を辺り一面に投げつける。発生する吹雪の壁で一時的なバリヤーを作り、その隙にラインとロウに下がるよう伝える。
同時に俺は噴水に近づき〝簡易転移石″を発動させ転移ウィンドウを表示させる。そこには確かに見慣れないエリアの表示があった。その名も“監獄エリア”。
試しに文字に触れてみると『転移しますか?』のウィンドウが現れたので転移は可能らしい。ならばすぐ転移したいが、この状況をそのままにしておくわけにはいかない。
明らかに向こうにもモンスターはいるはずなので、追撃で挟み撃ちなんて展開はごめんだ。
〝スノープリズム″の効果が切れた後も継続して〝スノープリズム″の壁を作り、ブレイズが回復するのを待つ。
その後、回復したブレイズと協力し、敵の殲滅が完了した。
「大丈夫か?」
「もう死んでいいか?」
「冗談が言えるなら問題ない」
戦闘が終わって大の字で倒れているラインに〝清水″を浴びさせる。CWOでは汗なんてかかないがまあ気分的なものだ。
もう一本渡し、空腹度も回復させる。
しかし、ここでの戦いはまだ終わったわけではない。というかここからが本番だ。
「疲れているところ申し訳ないのだが」
俺が“監獄エリア”の説明をするとげんなりするブレイズのメンバー。みればラインも「まじかよ」なんて顔をしていた。
「厳しいようなら俺だけで偵察に行くが、どうする?」
「偵察って可能なの?」
アーシェの疑問はその通りだ。しかし、俺にも策がある。まあ、策と言っても俺は少し多めに〝簡易転移石″をもらってるだけなのだが。
正直にそう言おうとして、なぜかためらった。
(ここでそう言ったら一旦帰って体制を整えるなんて言うかもしれないな)
いつものラインならまず言わないことだが、見ただけでも疲労困憊なのがわかるほどなのが現状だ。ラインだけでなく、他のブレイズもしんどそうな顔をしている。
しかし、これ以上シュリちゃんを含むドワーフ族たちを苦しめるのも嫌だし、何より今回のような突撃手段が何度も成功する保障は無い。
そこで俺は冗談を言ってまずは空気を変えようと思った。
「最悪の場合は自爆も一考してあ……」
「皆立つんだ! さもないとアルケによるエリア崩壊規模の爆発テロが起こっちまう!」
「どういうことだ!?」
「カナデ! MPはまだある!?」
「ハイ! すぐに回復させます!」
「だから、どうしてそうなる!?」
「全員〝清水″による水分補給を速やかに済ませろ!」
「「「「「イエス、マスター!」」」」」」
「言うことを聞け!」
なんか俺=悪役になってないか!?
「よし、戦闘準備は整ったな」
「「「「「Yes Sir!」」」」」
「お前ら軍隊じゃないだろ?」
明らかにいつものブレイズじゃない。
「これよりアルケの魔の手が伸びる前にドワーフ族の救助に向かう」
「「「「「応!」」」」」
「無視か、というか俺は魔族か?」
魔の手って何だ。
「皆の者! その手に武器を取れ! 己の正義を示すのた!」
「「「「「イー!」」」」」
「……」
そのセリフは正義じゃないだろ?
俺の存在を無視して噴水へと足を進めるブレイズ。いっそのことここで〝例のアレ″を使ってやろうか?
そんな俺の考えなど知らず、円状になって噴水に集まるブレイズ。その輪に急いで俺も加わった。
そしてラインが声をかけ、全員が一斉にうなづき(一応俺もうなずいておいた)、俺達は〝簡易転移石″で“監獄エリア”へと転移した。
「無事、転移に成功したな」
「そうだな」
転移した先はまさに監獄だった。ざっと見ただけだがいくつもの牢屋が建てられている『みたい』だ。
『みたい』とあいまいになっているのはある意味当然だ。なぜなら俺とラインは牢屋の中にいるのだから。
「そりゃそうだよな。 普通に考えれば、閉じ込めるのにいちばん簡単なのは転移先を閉じ込める場所にしておけばいいんだからな」
そう言うラインの視界の先、対面の牢屋の中にはロウとカナデの姿があった。
「そういう時のために、全員が〝簡易解除道具″を所持していたことは称賛に値する」
「そりゃどうも」
「だが」
俺は鍵らしきものを指す。
「それでも解除できないものがあった場合の対処は何もないのか!?」
「仕方ないだろ! エリア2の序盤までならこれで十分通用するんだよ!」
「そんなの知るか!」
言い争いを続ける俺とライン。しかし、ただ喧嘩していたわけではない。
「で、そっちのほうは?」
「チャットは使えるがだれも開錠に成功していない。ついでに現在位置もわからない」
「つまり?」
「お手上げだな」
実は喧嘩しているふりをして俺は牢屋を調べ、ラインは転移した際に別れてしまったブレイズのメンバーと交信可能か調べていた。
結果としてラインの方は全員無事だったことは確認できたがそれだけだった。
しかし、それだけわかれば十分だ。
「じゃ、全員助けるか」
俺は取り出した“真っ黒な”フレイムボムを牢屋の鍵近くに投げた。
最後のフレイムボムは次回で説明します。
文中の『空雷原』は地雷原の言い換えみたいなものです。雷が落ちてくるので“地”ではないと思ったので、空雷原と言い換えました。




