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VRMMOの錬金術師  作者: 湖上光広
第一章:ダイブイン
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第六十二話:ドワーフ族エリア解放戦

【錬金術】の本領発揮! アイテム祭りの始まりです!

「それじゃ、準備はいいか?」


現実世界での土曜日午後0時。CWO内での時間では間もなく夜明けとなる時間。


俺の問いかけに頷く10人のプレイヤー。


集まった救出隊のメンバーは俺、エルジュ、ライン、ブレイズ主力メンバー(あの館の時のメンバー)、そして後輩三人組の計11人だ。

欲を言えばもう少し数が欲しいが〝簡易転移石″の数が少ないのと【錬金術】のことを信じてくれるのはここにいる全員だけだ。


作戦は単純。

アトリエの転移魔方陣+簡易転移石の力でドワーフ族エリアまで転移して魔族及びモンスターと闘い、ドワーフ族たちを解放する。

転移魔方陣を使うのは少しでも噴水近くに転移させるためだ。実は事前に転移水をこの魔方陣の床に染み込ませておいたのだ。


気休め程度しかならないが、出来ることはすべてやることにしたのだ。


ちなみに何度か実験した結果、魔方陣と〝簡易転移石″を使うと噴水近くには転移できた。他のエリアに行くと他のプレイヤーを驚かせることになるため妖精族エリア限定で行ったが、取りあえず成功と言っていいだろう。


「わかってると思うが、終ったらちゃんと宿題見せてくれよ。 ホントに頼むぞ!」

「「「「「マスター……」」」」」


その性能実験<人体実験?>に付き合ってくれたのは感謝しているが、報酬ほんとにいいのかそれで?


「仕方ないだろ! ここ最近忙しかったのは事実じゃないか!」

「いやそれでも勉強はしろよ。 まあウチにも同じのがいるけどな」

「~♪(明後日の方向を向いて口笛を吹いている)」

「「「さん・ちゃん……」」」

「そんなかわいそうな子を見る目をしないで~」


おもわずリアルネームで三人組から心配される我が妹。

これから行くのは間違いなく戦場なのだが、大丈夫かこのメンバー。人選を間違えたようで少し不安になる。


「では無駄かもしれませんが、お手伝いしましょうか」


アリサさんが杖を俺たちに向け何かを唱え始める。次の瞬間俺たちを光の幕が包み込んだ。


「能力上昇の魔法です。 簡易的なバリヤーも付けましたが、転移先でも有効かはわかりません」

「ありがとうございます、アリサさん」


素直にお礼を言う俺に、続いて感謝を告げる皆。しかし、一人だけ全く別の言葉を口から発した。


「これ【支援魔法】の上級技〔フルバースト〕?」

「「「「「「「「「……え?」」」」」」」」


呆然と呟くカナデちゃんと驚く他の面々。回復や補助を主とするため【支援魔法】を習得していたのでその正体が分かったのだろう。


「あと、これも持って行ってください」

「これもね」


アリアさんとティニアさんからはアイテムをもらった。

ティニアさんからは〝生命の甘露″と〝清水″を。

そしてアリアさんから渡させたのはポーションだが普通よりも色がはるかに濃い。


「私が作れる最高級の〝ハイポーション″と〝マジックポーション″です。お役に立ててください」


「助かります。自前のポーションでは不安だったので」


ドワーフ族たちの救助が目的だが、彼らのHP回復のためや戦闘継続のために〝錬金ポーション″と〝マジックポーション″をありったけ用意した。ここで数が少ないとはいえ回復量の多い回復薬を得られるのは心強い。

そしてティニアさんから受け取った〝清水″はこの日のために浄化作用を強めておいたモノらしく、空腹回復+20%と通常よりも高い数値となってなっていた。

……この間の出来事といい、このNPCたちどう考えても異常なのだが、俺は全く気にしなかった。


俺一人で全部持ってても意味が無いので全員に分配すると全員の戦意が薄れていた。


「どうした?」

「どうした? じゃねえよ! なんなんだよこの連中は!?」


ビシッ! と効果音が付くような速さでアリアさんたちを指すライン。


「なにって。 こういう言い方はしたくないけど、NPCの方々だが?」

「そういう意味じゃねぇ!」


なぜかキレるライン。他の面々もなぜか苦笑いだ。


「他にはって、俺にとって大切な人たち、かな?」

「「「「「「「「「「……」」」」」」」」」」


そう、たとえどんな存在であろうと俺を助け、励まし、支えてくれたのは変わりないのだ。

そう思っての発言だったのだが、なぜか俺を除くプレイヤー全員が固まり、アリアさんは沸騰したように顔を真っ赤にし、ティニアさんとアリサさんも顔を赤く染めた。

唯一ミシェルだけが笑ってる。


「……どうしたお前ら?」

「いや、やっぱお前天然だったんだな」

「兄さん、いつの間にこんなにも大人に。 正直予想以上です」

「?」


ラインとエルジュが何かを言ってるがいまいちよく理解できない。


「と、取りあえずそろそろ逝こうではないか?」


正気に戻った? ロウの発言で〝簡易転移石″を用意する俺たち。老人の協力により一個で最大四人(アイテム発動者を含む)まで同時に転移可能となっている。


「それじゃ、行くぞ!」

「「「「「「「「「「「転移! ドワーフ族エリア‼」」」」」」」」」」」

その瞬間、俺たちは光に包まれた。




なんとか試みは成功し、ドワーフ族エリアには転移できた。


「転移していきなりかよ!」


しかし転移した先で遭遇したのは魔族&モンスターの集団だった。どうやら集まって何かをしていたようだが、そこに俺たちが乱入し、一気に乱戦になった。

……もしかして老人の問いかけってフラグだったのか?


最初こそ動揺したが、次第に俺たちが有利になった。アリサさんの魔法〔フルバースト〕の効果が転移してからも有効だったのも大きい。さすがにアトリエの時に比べると劣っているが。


「あの時以来の歯ごたえのある戦闘だな!」

「だね!」


戦乱の中一際活躍するのはラインとエルジュ。その力を最大限活かし、無くなったMPは〝マジックポーション″で回復していく。〝生命の甘露″はもしものためになるべく使わない方針だ。もはや躊躇いなどどこにもなく、戦う様はまさにバーサーカーだった。


「あっちも似たようなモノか」


〔スイング〕でモンスターを倒しながら周りを確認する。


ブレイズのメンバーたちもあれから鍛えており、俺が一緒になって獲得したあの館の武器で魔族を倒していく。ラインとエルジュには及ばないが、彼らも心配はいらなそうだ。


「となると、問題は彼女たちかな」


後輩三人組も普段から連携を取っているだけあってスムーズに倒しているが、初めて戦う魔族、もしくは大勢の敵ということで緊張しているようだ。


そこで俺は〔スイング〕でモンスターを吹き飛ばすと、〝スノープリズム″を取り出し、周りの魔族の動きを封じる。


その瞬間【速足】で魔族の群れを超え、三人組と合流する。発動したスノープリズムは発動者である俺にはダメージを与えない。


「「「え?」」」

「ぼさっとするな! 目の前の敵に集中しろ!」

「「「は、はい!」」」


突然吹き荒れた吹雪に驚くが、俺の声で次第に冷静になった三人は元の調子を取り戻し、確実にモンスターを倒していく。


やがてモンスターは全て倒し、最後に残った魔族もラインの剣で両断された。

余談だが、ここにいた魔族はみんな大人の男性くらいの身長で全員左右の目の色が異なるくらいでそこまで強いと思わなかった。

とすれば、すでに主力はエルフ族エリアに向かったのか。それとも何かの作業中で力が出せなかったのか疑問はいくつかあるが、今はドワーフ族救出に専念しよう。


援軍が来ないことを確認し、何が行われていたのか探索すると近くに牢のようなものがあり、そこでドワーフ族たちを見つけた。


「大丈夫ですか?」


捕えられていたのは全員NPCだったが、全員傷を負っていた。重症と思われる者には〝ハイポーション″を与え、大抵の人は〝錬金ポーション″で治療していく。

ほとんどがまだ苦痛の表情だったが、ポーションにも限りがあるためむやみに使うことができない。


「救助に感謝する」

「いや、遅くなってすまなかった」


ここのリーダーと思われる男性から感謝されるが、俺は頭を下げる。俺がもっと早く【上級錬金術】を習得していればもっと早く助けられたのだから。


「反省は後回しだ。 他に捕らわれている人たちは?」


俺の内情をよく理解しているラインは俺に一言告げるとそう質問した。


「あっちだ」


すると別のドワーフ族の男性が東の方角を指した。


「ここから少し離れたところが街の中央部だ。 おそらく残った魔族達はそこにいるはずだ」


彼の言葉を聞いて次の目的地を決めたが、さらに別の男性が北を指した。


「すまないが向こうにも同胞が捕らわれている。 彼らも助けてはくれないか?」


同胞、ということは北に囚われているのはNPCなのだろう。もちろん、NPCだからといって見過ごすことなどできるわけがない。


話し合いの結果、俺たちは戦力を二分化させることにした。


エルジュと後輩たちは北へ。俺とブレイズが東に向かうことにする。


「気を付けろよ」

「兄さんたちも」


別れる前に俺は攻撃アイテム各種をそれぞれに渡しておく。さらにもう一つ、特別なアイテムをエルジュに渡しておいた。


「これは?」

「最悪の場合使え。 一応爆弾の一種だ」


その効果をエルジュだけに伝えると恐る恐るアイテムポーチに入れた。


そして俺たちは別れ、それぞれの戦場に向かった。

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