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VRMMOの錬金術師  作者: 湖上光広
第一章:ダイブイン
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第五十七話:現状

調合サイクルを送って現実世界で三日が過ぎた。


もはやフレイムボムは300以上、イグナボムも200以上作っているだろう。

さすがに素材のほうも新しい素材がまだリポップしていないようなので調合はいったん打ち切りになった。どんだけ~。

今後は出来上がったボムたちの配分を協議し、足りない個所があればその分を追加で調合することになった。


ラインやエルジュたちにも引き続き情報を依頼しており、いつの間にか掲示板まで立ち上がっていた。その名も『魔族目撃情報回覧板』。そしてそれは今一番ホットな掲示板となっている。


その理由は前に努が指摘した『イベントの前兆説』だ。詳しく調べてみると結構多くのNPCに目撃されていたのだ。

それらを総合すると『魔族は各エリアで複数人目撃されている』『手に何かを持っている』という情報が上げられる。

確認のためにアリサさんにも訊いてみると、「こっちで目撃された魔族も何を持っていたらしいよ」との言葉をいただいた。


なお、一番目撃情報が多かったのは竜人族エリアということで、多くのプレイヤーが竜人族エリアの環境に慣れるという名目でLvやスキルランクを上げている。

反対に一番少なかったのは俺がいる妖精族エリア。その数は倍近く違っていた。ちなみに、スプライト外れの樹海の中でも少ないながら目撃情報はあった。


この情報はティニアさんを通じてスプライト全域に流してもらってある。フェアリートレードの一番上だけあって情報を扱いに長けていると思ったのだが、話をして数時間後にはすでに浸透していた。まあ数時間といっても現実時間としてなので、CWOのなかではすでに一日経過しているから当然と言えば当然かもしれないが。


多くの情報が浸透し、魔族が本格的に攻めてくるかもしれないとのことでスプライトのあちこちに〝聖樹の樹籠″が設置され始めた。中身はなんとフレイムボム。

万が一魔族が街中に入ったときに対処できるようにと防衛策として新たに設けたのだ。


当然住民には通達してあるのだが、プレイヤーはそれを知らずフェアリーガードの隊員たちに声をかけている姿がここ最近よく見られる。

ちなみに中身については『神が教えて下った妖精族専用のアイテムであり、プレイヤーは使用できないともお伝えくださった』と嘘をついてもらっている。

まだまだ改良の余地がある物を公開するつもりが無いからだ。




「とまあ、現状はこんな感じかな」


俺は聖樹様の近くで薬草の採取をアリアさんとしていた。


アリアさんにも各種ポーションの製作要請が届いており、俺も攻撃アイテムだけでなく錬金ポーションも依頼されているのでこうしてお互い採取に来ている。


警備としてミシェル、そしてアリサさんも同行している。


「ふむ。こういう感じかな?」

「そうそう。いい感じだよ」


その二人は魔法の訓練中だ。その魔法は〔イグナプロージョン〕。名前からわかると思うがイグナボムをヒントに考案された魔法だ。

といっても新たに開発したのではなく〔メテオプロージョン〕という【火属性中級】で覚えられる魔法を改良したモノらしい。調べてみると〔メテオプロージョン〕は【火属性中級】をLvマックスよりわずか下で覚えられる【火属性中級】では最強の魔法だった。それを簡単に使えるアリサさんにも驚いたが、魔法って改良できるんだなと説明を聞いて思わず感心してしまった。


ミシェルの基本スタイルは剣による接近戦だが、いざという時のために魔法も鍛錬しているとのこと。


その実力は魔法特化部隊に少し劣る程度だと聞いている。

実はミシェルはハイフェアリーの子供なのだ。そんな彼がなんでフェアリーガードに所属しているのかというと、幼い頃に樹海で遊んでいる時にモンスターに襲われ、そこをフェアリーガードの隊員に救われたことがきっかけらしい。その隊員が誰かまでは聞いてないがいまでも尊敬しているそうだ。


なお、ハイフェアリーの力は普段封印しているそうだ。それでも隊長になれるだけの実力があるのだが、本人はあの時助けてもらったフェアリーガードに恩を感じており、後輩の育成に力を貸したいと志願し、教官となった。そのため、副隊長なのだ。


「さて、こっちはこれだけあれば十分かな」

「わたしのほうもこれ以上は持てませんね」

「では帰るか」

「私も今日はフェアリーガードに指導しなきゃいけないから一緒に行くわ」


アリサさんは魔法指導のためフェアリーガードに寄ることが多くなった。

アリサさんが指導してくれると聞いてフェアリーガード魔法部隊が歓喜に震えたらしいが、その内容はかなりのスパルタで今では“地獄の特訓”とまで言われている、とミシェルが言っていた。

その発言でアリアさんのことを思い出し「あの姉妹がそろった時は素直に謝ろう」と固く決意した。いくら死なないといっても痛いものは痛いのです。


なおハイフェアリーのほうはすでに大半が〔イグナプロージョン〕を習得しており、今はさらなる威力の向上に力を入れているそうだ。


そんな感じで、所々によっては穏やかながら対魔族への準備は着々と進んでいた。




「とまあ、こっちはこんな感じだ」


場面変わって再び現実世界。今は放課後だ。

お昼は四時限目が体育で片づけに時間を取られ話し合いができなかったので放課後にいつものメンツで集まることにしたのだ。場所はいつのも中庭。


「私は専ら後輩の育成かな。 みんなも含めて」


空の言葉に頷く後輩三人組。どうやらヴァルキリーはLvの低いプレイヤーの育成に力を入れてるみたいだな。仮にイベントが起これば強力なプレイヤーが多いほうが楽になる。そのための布石というわけか。


「こっちも似たような感じだが、育成はアーシェやロウ、カナデがメイン。俺とムルルとスバルは引き続き魔族探索を行っている」

「情報がもらえるのはありがたいが、いいのか?」

「まあ、それなりに鍛えられてる連中だし」


思い出してみればブレイズに入る条件には『ラインに4割のダメージを与える』というものがあったな。そう考えればブレイズにいるメンバーに弱いプレイヤーはいないか。


「というか、だれも竜人族エリアに行かないんだな」


それぞれが鍛えている場所は所属するエリアか共通エリアのどちらかだった。


「まあ、あからさますぎるし」

「うん、絶対他に目的がありそう」


共通の意見を出す廃人二人。この二人が同じことを言うと妙な説得力がある。


「個人的な可能性としてはおそらく狙いは妖精族エリアだと思う」


そんな中、努が怖いことを言った。


「その根拠は?」

「目撃された数だ。 妖精族エリアは一番少なかったからな」

「それだけ?」

「それは逆に言えば密かに行動している可能性があるということだ」

「その意見には同意できますね」


そして二人して議論し始める。こうなると結論が出るまで俺の出番はないな。


「三人は今どんな感じ」

「私は……」


そんなわけで俺は後輩三人組と話をして時間をつぶした。

それから三十分ほど議論していたが、結論は「とりあえず警戒継続」だった。

まあ、それしかできることないしな。

アルケが新しく開発したと思っている〔イグナプロージョン〕は〔メテオプロージョン〕の派生形で【火属性上級】で習得できます。習得できたハイフェアリーは【火属性中級】が【火属性上級】にランクアップしただけです。

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