第五十六話:魔族対策
毎回なぜか発生する誤字に作者のHPがそろそろ限界です。でも、がんばりますよ!
いつもの昼食会。しかしここにいるのは五人だけ。
「空のやつ、まったく」
「なんか、すいません」
「空らしいけどねー! ハハハ!」
「そこは笑ってはいけないと思うよ」
話の内容からわかるかもしれないが、ここには空がいない。その理由は宿題を必死になって写しているからだ。
「ホントだよな」
「ほう? なら今後俺は貸さないからな?」
「今日のカツサンドは絶品だぞ。 よかったら食うか?」
遠慮なくいただく。何やら視線を感じるが無視。失言には十分注意が必要ということです。
「それで、先ほどの話だけど」
確かに美味いカツサンドを噛みながら四人に問う。内容はもちろん魔族のことだ。
「残念ですが目撃例はないですね」
「私も無いな~」
「ごめんなさい、私もです」
後輩三人は全滅っと。まあ期待してたのは努だけなのだが、それは言わないでおく。
「俺のほうではいくつか目撃例を見つけた。 ただ全員違う容姿だったが」
そしてその目撃例を聞いてみるとなんと共通エリア以外の全エリア、すなわち各種族のエリアで目撃されていた。
「ひそかに何かイベントが起こる前兆じゃないかって言われる」
「可能性を否定できないな」
こうなると魔族を見たというハイフェアリーにも話が聞いてみたい。しかし、そこには大きな障害がある。
「場所が分からないんだよな」
ハイフェアリーの里の位置はいまだに不明だ。となれば方法は一つだ。
「『……というわけで里に俺を連れていくことは可能ですか?』これでいいかな」
CWOにログインしてすぐにアリサさんにコミュを送り、返事が来るまではフレイムボムとイグナボムを生産する。
昨日の時点でティニアさんがアリサさんの話をフェアリーガードに連絡し、現在警備が強化されている。その関係で、以前リオン隊長から頼まれていたそれぞれの補充を優先して行っている。
本音を言えば新しい本を読みたいのだが、いつ魔族が攻めてくるかわからない現状なので、戦力を整えておくほうが大事なのは俺でもわかっている。
ある程度作ったところでMPが切れたので休憩することに。同時にアリサさんからのコミュが届いた。
「『本当なら許可を出したいんだけど、今新しい魔法の開発で辺り一面が結構大変なことになってるの。だからしばらく待ってほしい』か」
新しい魔法について詳しく聞いてみたいが、さすがに教えてくれないだろう。というわけで、完成したボムたちを〝聖樹の樹籠″に入れて『水仙』に転移する。フェアリーガード本部は遠いので『水仙』に届けることで合意しているのだ。
そこで俺を待っていたのはいつか見た光景だった。
「……」
取り出した籠を落とすほど目の前の光景に愕然とする俺。
「「あ」」
そんな俺を廊下から歩いてきた二人が目撃する。一人はティニアさん。もう一人は【鑑定】持ちの遊女。名前は……なんだっけ?
「あの、さきほど警備隊の方々がいらして……」
「いや、この光景だけで十分だから」
二人から視線を部屋に移す。部屋に運び込まれた大量の石と草。そう、魔力石と火薬草である。
「すみません、断りずらくて」
「いや、確かに必要なことですから」
俺自身は会ったことも戦ったことも無いが、魔族の力は一体でも相当手ごわいらしい。それに備えるのであればボムを追加するのは当然だし、さらに万全の態勢を整えるのであればさらに数が必要になる。
結果、また素材の山ができるのである。
「まあ、今回は【識別】があるから前よりましか」
さっそく【識別】を発動させる。
その瞬間、俺は気を失った。
「知らない天井だ」
「いえ、何度も見てますよね?」
「こういう場合のお約束なんですよ」
アリアさんの家でも同じようなことを言ったが、今回は【気絶】が発生していないのですぐに上半身を起こす……はずだがやめた。
「本当に大丈夫ですか?」
心配するティニアさんの顔がすぐ目の前に迫る。どうやら顔色を見ているようだがその距離が近い。屈んだおかげで、お胸様の後光がさらに輝いて見える。
「……そこまで考えられるのであれば平気そうですね」
しかしその後光はティニアさんが交差した腕ですぐに収まってしまった。手ごわいな【読心術】!
……今更のことだが、俺はティニアさんに膝枕してもらっている。
そしてその原因もすでに判明している。
「あれからどれほど経ちました?」
「まだ十分も経っていませんよ」
「なら、作業を始めましょうか」
名残惜しくも俺は体を起こすと素材の山を一抱えしてから【識別】を発動させる。
今更かもしれないが、【識別】は目に映る全てを鑑定することが可能だ。そのため、先ほどは目に映った大量の魔力石と火薬草を全て鑑定しようとした結果、俺の脳の認識許容量を超えてしまったので、気を失ったのだ。
例えるならば家電機器を使いすぎてブレイカーが落ちたようなものだ。だから数を少なくすれば問題ない。
【識別】で十~十二個の量を一気に確認し、それぞれを籠に入れていく。
選別をある程度終えると、俺は籠を持ってアトリエに戻る。
【鑑定】による仕分けは遊女の方々でもできるがボムを調合できるのは俺しかいない。
そのため、俺は一定量を選別したらアトリエで調合、完成したボムを『水仙』に納品して選別された魔力石と火薬草を回収してまた調合する。
こんなサイクルをしばらくは送ることになった。
ボム調合サイクル再び♪ アルケファイト!




