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VRMMOの錬金術師  作者: 湖上光広
第一章:ダイブイン
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第五十話:変わるNPCたち

みなさまのおかげで100,000PVを突破しました! ありがとうございます!

*8月15日誤字修正:①アリアさんのセリフ「神から察しがありまして」⇒神から神託が降りまして ②終盤のミシェルのセリフ「会議で会うことはでいないだろう」⇒会議で会うことはできないだろう*

*8月19日誤字修正: 神からの宣告があったから⇒神からの託宣があったから*

「知らない天井だ」


目を開けるとそこには見知らぬ天井が広がっていた。


「ここは?」

「気分はどう?」


横から聞こえてきた声に顔を向けるとタオルを絞っていたアリアさんがいた。


「ここは私の部屋です。 さっきはごめんなさい」


そう言って、俺の頭を抱え、枕とタオルの間にしく。そして頭を倒すと後頭部にひんやりした感触が広がる。

……正直なところ、頭を抱えられた時の胸の感触をもう少し味わいたかった!


「え~と、意識戻ってますか?」

「はい?」

「いえ、話しかけても答えが返ってこなかったので」


すいません。胸の感触に心奪われていました。当然口に出せないので心の内で謝罪する。


「はい、もう大丈夫です」

「よかった。 ところで、なんでこうなったのか覚えていますか?」


アリアさんに言われ、記憶を遡る。教本に載っていたアイテムを全部作成して、新しい本を求めてアリアさんの店を訪れて、それから……


「ミシェル」


その名と共に、ミシェルにしたことを思い出し、布団に顔を埋めて後悔する。


「とりあえず反省しているようなので、私から責めることはしません。 ミシェルさんにも私から事情を説明しておきました」

「なにからなにまですいません。 看病までしていただいて」


意識が戻ったのに寝たままなのはどうかと思い起き上がろうとする。同時に【気絶】のタイマーが0になった。


「はて? いつダメージを受けたんだ」

「!! え~と、それはですね……」


俺の発言に目に見えて動揺するアリアさん。しばらく視線をあちこちに向けてから俺を見直す。

俺は動揺するアリアさんを見て「どうしたのかな?」と思う程度だったのだが、アリアさんは別の意味でとらえたらしく、さらに動揺し、床に置いていたある物を握りしめそれを俺に見せた。


「フライパン?」

「はい、さっきこれでとっさに殴ってしまって」


よく見ると底が少しへこんでいる。……なるほど、これは確かに【気絶】が発生するな。


「って、スプライトの中でダメージ?」


そこでおかしいことに気づく。確かどのエリアでも街中は『ダメージ発生圏外』だったはず。これは説明書にも書いてあることだから間違いない。


「それは、この間神から神託が降りまして『外からの客人への攻撃を許可する』と」


ちなみに、CWOでNPCが神と崇めているのはすべて運営のことだ。他の信仰対象は聖樹のように何らかの形で表現化されている。


「なるほど、これがアップデートというわけか」


そうなると、今までNPCに対してあまりいい対応をしてこなかったプレイヤーはいろいろ大変なことになってそうだな。あとで掲示板を見てみよう。


そこで、今更ながら俺がベッドで寝ていたことに気づいた。


「もしかしてこのベッドって」

「はい、私が使っているモノですけど。 もしかして匂いました!?」

「いえ! そういうわけじゃなくて‼」


単に恥ずかしいだけなのだが、アリアさんは勘違いしたらしく顔を赤く染めた。しかし俺の顔も赤いのを見て理解したようで、今は笑みを浮かべている。

しかしその笑みは微笑ましい物を見る顔ではなく、明らかにからかうための笑みだ。


「なんならもう少し寝ていきますか? それとも添い寝したほうがいいですか?」

「いいえ! 結構です‼」


がばっとベッドから離れると大爆笑する声が聞こえてくる。

振り向くとミシェルが扉を開けていた。


「すまない、様子を見に来たんだが、くくく」


未だに笑い続けるミシェル。羞恥と憤怒から俺は思いっきりのレバーブローを打ちかました。




「さっきはすまなかった」

「いや、俺も失礼だった」


俺のレバーブローは思いのほか効いたらしく、ミシェルはしばらく悶絶していた。


ようやく回復し、今はアリアさんの家のダイニングでくつろがせてもらっている。

ちなみに、ここまでの対応でミシェルの俺に対する対応が前よりもフレンドリーになっていることに気づく。これも好感度システムとやらの効果なのだろう。


「そういえば、家に入れてもいいのですか?」


今までにもプレイヤーの多くがNPCの家に突入しては『侵入禁止』の表示が出ていたらしい。これもアップデートの一環なのだろうが、こんなことができるとは一言も書かれていなかったはずだ。これも好感度システムの影響なんだろうか?


「はい。アルケさんはアリサの恩人ですし」


紅茶が入ったカップを俺に渡しながら、今度は邪気のない笑顔で、微笑むアリアさん。


「ということは、ティニアさんの私室にも入れたりするのかな?」


紅茶を一口味わいながら放った一言が、なぜかこの空間を氷結させた。主にアリアさんの目線で。心なしか背後に般若も見える。


「アルケさん? ティニアをどうするおつもりですか??」

「イエ、ジュンスイナル、キョウミホンイ、イガイノ、カンジョウハ、アリマセン」


壊れたロボットのような発言だが、アリアさんの目は元の暖かい眼差しに戻った。


「そうですか。 ティニアは私にとって妹同然の存在です。 くれぐれもお願いしますね」

「はい、この命に代えても」


どこぞの敬礼を模してアリアさんに返答する。今のアリアさんに逆らってはいけないと俺の心が激しく主張している。


「……ところで、話を戻そうか」


空気を察してくれたミシェルが話題を振ってくれる。といってもここまで何か話していた覚えが無いのだが?


「お前が俺に用があるのだろう? さっき激しく問い詰めていたじゃないか」

「あ~」

「忘れてたのかよ、おい」


恨みがましいミシェルの視線から紅茶を飲み事で逃げる俺。それを見て笑うアリアさん。


「まあいい。で、何を訊きたかったんだ?」


折れて許してくれるミシェル。いい男だ。俺がBL好きだったなら惚れているだろう。

……エルジュには会わせないようにしよう。


「ああ。この前会った総合隊長さんが元錬金術師ってティニアさんから聞いてな。 【錬金術】関連の本を持っていればお借りできないかと思ってさ」

「なるほど。 確かに持ってるかもしれないが、総合隊長はしばらく会議で会うことはできないだろう。 神からの託宣があったからそれについてどう対応するか検討しているみたいでな」

「そうか」


それなら、しょうがない。今は出来るモノを調合してLvを上げることにしよう。


「ただ、本がありそうな場所なら心当たりがあるぞ?」


……え、あるの?

補足として、街にいるNPCからの攻撃ではHPは減りません。発生するのは軽度の状態異常です。その状態でも決してHPは減りません。

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