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VRMMOの錬金術師  作者: 湖上光広
第一章:ダイブイン
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第四話:初戦闘

*8月17日修正:感想にて『大勢のモンスター』では違和感があるとの意見があったので、文字を書き換えました。内容に変化はありません*

「おいおいあんた! そのスキルは取らないほうがいいぜ!」


大声で言う男。よく見ればその指先はある人物を指していた。


「あの人、スキル非表示になってない」


エルジュの言葉を聞き、よく見てみれば確かに選択中のスキルがそのまま映っていた。おそらく初期設定をめんどうだと思って確認しなかったのだろう。個人情報の漏えいだと思う人もいるが、そこらへんは自分で管理するのがVRMMOの常識だと前に努から聞いている。


「お前バカか? 【錬金術】は全く使えないスキルだぜ!」

「何?」


思わず声が漏れてしまう。すると男は俺にその矛先を変えた。


「あんたも初心者か? なら教えてやるよ。俺はカロン。一応βプレイヤーだ」


視線だけで二人に確認をとる。しかし二人も知らないのか首を横に振った。


「一般的なゲームだと【錬金術】はアイテムを作るのに優秀だが、ここでは回復アイテムしか作れないクズスキルだ」

「回復アイテムだけ?」


錬金術は素材があればあらゆるモノを作れるアイテム製造術と言うのがゲームする人にとっての常識だ。カロンもそこのことは否定しなかったがこのゲームではそれが通用しないという。


「俺の友人が興味本位で【錬金術】を取得したんだが、β終了までひたすら調合したにも関わらず、完成したのはポーションばかり。いろんな素材を試したがほぼ失敗。エリア3の素材でやっとミドルポーションだった」


CWOのアイテムにはランクがあり、一番下のランクのモノはアイテム名だけだが、ランクが上がるとミドル<スーパー<ハイ<ウルトラ<スペシャル<レジェンドの順にアイテム名の前にランクが付くことになっている。


しかしここで重要なのは“エリア3”という言葉だ。


β版の情報は正式版発売の前に公式ページに掲載された掲示板でいくつか公開されていた。その中で話題に上がったのがβ期間、約1か月で攻略したエリアは3つまでだったということ。すなわちエリア3とはトッププレイヤーしかたどりつけなかった場所なのだ。


「わかるか? しばらくはNPCのポーションや初期の回復魔法で十分足りるんだ。それゆえにポーションしか作れない【錬金術】は全く意味を成さないのさ」


そう言ってカロンと取り巻きは去って行った。カロンからすればβで苦戦した友人と同じ目に合わせたくないという親切心だったのだろう。

指摘を受けたプレイヤーは【錬金術】を消去し、その場を去った。おそらくスキル非表示設定をするために一度ログアウトするのだろう。

他にも多くのプレイヤーが【錬金術】の仕様に文句を言ったり、中には何かを書き込んでいたりする者もいた。チャットか運営への苦情かどちらかだろうが俺には関係なかった。


むしろ、それは俺にとって挑戦状に等しかった。


「回復アイテムしか作れない? 上等じゃねえか」


笑みがこぼれる俺を、ショックのあまり壊れたのではないかと二人が心配する。二人に大丈夫だと告げ、俺は装備を買いに武器屋へと案内してくれとお願いした。


俺の錬金術への想いがこの程度でくじけるわけがない。

錬金術は万物を改変できるほどの力だと俺は信じてる。

誰もが否定するのであれば、俺がそれは間違っていると証明すればいいだけなのだから。




初期装備は専用のモノがあるわけではなく、“初心者の剣”や“始まりの杖”など戦士系や魔法師系で使えるモノが分かれていた。

とりあえず“始まりの杖”“普通の服”“安物のローブ”を装備し、いよいよフィールドで初めての戦闘を体験しようとした。


しかししばらくして俺は戦闘を止めることになった。


「なあ、一言いいか?」


先導する二人が俺に振り返る。

心なしか顔が青いが、そんなことは知ったことではない。


「βプレイヤーは装備やスキルを受け継げるとは聞いていた。それに対して文句は言わない」


そこまで言って右の人差指で二人を指さす。


「しかし! ここまで違いがあるとチートと言いたくなるぞ!!」


その言葉に同じように初期装備を身に着けたプレイヤーたちのほとんどが頷いた。


「まあ、それは……」

「確かにそう思うけど……」


二人もどうしていいかわからず、互いに視線を泳がせていた。


細かく説明すると、まずエルジュ。

鳥人族の固有能力、通称<ソウル>を使って空を飛ぶのはいいとしよう。しかし! 上空で弓を構えたと思ったら絨毯爆撃のように複数の矢が空から降りそそぎ、現れたモンスターの命を狩る。それもほぼ全部。


残っていたモンスターもラインの剣が一掃する。しかも、本人は剣を一回横に振りぬいただけ! 剣から発した光の刃がフィールド全体に行き渡り、目の前のモンスターは全て一瞬にして消滅した。


「ごめん、つい懐かしくなって」

「以後俺たちは何もしないから」


俺を含む初心者たちからの抗議の視線を感じ、あらゆる方向に謝罪する二人。つい最近見た光景だが、空までもやるとは。やはり二人は気が合うのか?


「そうなると将来俺は努をなんて呼べば……」

「お兄ちゃん♪ 変なこと考えてないよね♪♪」

「イエ、ナニモカンガエテオリマセン」

「よろしい♪」


時々空はエスパーじゃないかと思ってきたが、今後は余計に注意しようと心にメモする。


「さて、リポップしてきたけど戦わなくていいのか?」


ラインの視線の先には復活した野良犬みたいなモンスターがいた。


「それじゃ、初戦闘と行きますか」


昔のゲームのようにぶつかったら戦闘というわけではなく、視線がぶつかったらバトルというわけでもない。ライン曰く「気配を感じたら戦闘開始かな?」らしい。スキルに【隠蔽】があるから完全に間違っているわけではないのだろう。


近づいてきた俺に気づいた犬型モンスターが俺に向かって威嚇する。


慎重に杖を構え相手が近づいてくるのを待つ。


魔法師系は戦士系よりも防御力が低いため正面から堂々と戦うことはできない。ましてや俺の戦闘系スキルのメインは【錬金術】。まだアイテムも作ってない状態では身を守るのは初心者装備しかない。


故に、俺は相手が接近し、カウンターを決めるのが最善手だと考えた。


焦らされたモンスターはいよいよ俺に向かって飛び込んできた。


それを横によけることでかわし【杖】の初級アクト〔スイング〕をぶつける。


アクトとはスキルを取ることで習得できる技のことで、スキルレベルが上がれば、先程のエルジュとラインのように、より強力なアクトを獲得できる。


〔スイング〕が決まり、モンスターがぶっ飛んでいく。先程は待っていたが相手も単純なAIではない。おそらく二回目は通用しないと思って飛んでいるモンスターに向かう。

体勢を立て直したモンスターに再度〔スイング〕をぶつけ、とどめに杖を思いっきり振り下ろす。振り下ろした杖はモンスターの頭に当たり、体力が尽きたモンスターは光の粒子になって消えた。


「ふう~」

「お疲れ」

「最初にしてはいい動きだったぞ」


こうして初めての戦闘は俺の勝利となった。

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