第四十五話:依頼達成報酬
早朝にも関わらず多くの方にご覧いただいてるので最新話を公開します。今日の22時にはまた新しい話を公開予定です。
*8月11日:誤字修正「付和魔法」⇒「付加魔法」
+ルビがおかしくなっていたのを訂正しました*
さて最近いろいろあったが、ようやくフレイムボムの量産に取り掛かる。
ゴミ扱いの素材からフレイムボムの性能をより良くする調合手順は試行錯誤の結果、なんとか判明した。
まずは〝フレイムストーン″。
これは魔力石の魔力量によって品質が決まるので、特にすることはなく【付加魔法】をかけていく。
お次は〝火薬草″。
これは品質が良いモノも悪いモノも使う。品質が悪いほうが調合するときの失敗率が高くなるが、その分ある特殊効果が発生することが分かった。
『炎粉:これを持つアイテムでダメージを受けた/与えた場合【火傷】【防御力低下:小】のバッドステータスが発生する。(確率はランクに比例する)』
【火傷】は【毒】同様HPが減少するバッドステータスだ。効果時間は毒より短い。
『炎粉:E』で発生確率は5%。ランクが上がると+5%される。
効果自体は優秀なのだが、品質が悪い物を使用しているため、当然完成したフレイムボムの品質は悪くなり『HP-』の値は少なくなる。
そのためミシェルに確認したところ「今後のことを考えて両方あるとうれしい」となかなか鬼畜な回答をいただいた。
その時一緒に必要数を聞いたら「とりあえず200」とも言われている。本音を言えば「ふざけるな!」と言いたいが、素材を集めたのは向こうだし、品質や効力を確認するためにどんどん調合していくので【中級錬金術】のLvが上がり続けており、文句は言えないのだ。
とりあえず、攻撃力の高い通常のフレイムボムの方を多く所望してきたので、それを6割、残り4割を『炎粉』付きのフレイムボム、命名〝イグナボム″にすることにした。
MPの限界+失敗作があるので調合を始めてから(現実時間で)十日後、〝フレイムボム″120個、〝イグナボム″80個が完成した。
「それでも上級にはならないのか」
スキルを表示すると【中級錬金術】のLvはようやく20。
【錬金術】はLv 30でランクアップしたのであと少しだろうと思われる。まあ、一度調合に成功したモノは最初に比べて経験値が入りにくいみたいだから、次のランクアップにたどり着くのはいつのことやら。
「とりあえず、納品してくるか」
素材運びの時に頂いた〝聖樹の樹籠″にそれぞれのボムを入れ、ミシェルに報告すると『明日隊長たちと共に“水仙”に向かう』と返信が来たので、一度ログアウトし、食事を採り、少し時間をつぶしてから『水仙』に転移した。
『水仙』でも(位置的に)高い部屋で待つことしばらくして入り口にミシェルがやってきた。その後ろから同じ鎧をまとった警備隊の方々も見える。向こうもこちらに気づいたのか手を振ってきたので返す。
そして玄関を通ることなくここまで飛翔してきた。……いいのか?
全員が部屋に入ってきたので早速受け渡しを始める。
「一応、品質は全て同じだ。大量生産だと品質が一定になるみたいなんでね」
そう言って、フレイムボムとイグナボムそれぞれが入った聖樹の樹籠を長机に置く。
そう、【中級錬金術】に上がって覚えた【連続調合】を使用すると指定した数調合することが可能になったが、その分品質・効力がその平均となってしまった。
それは向こうにも伝え『そのほうが早くできるのならそうして欲しい』と許可を得ているので文句を言う者はいない。
続けて籠の中からそれぞれのボムを取り出し、説明に入る。
〝フレイムボム″・攻撃アイテム・UC
強化された爆弾。大量生産品。
HP-100
効力:C
〝イグナボム″・攻撃アイテム・UC
【炎粉】付きの爆弾。大量生産品。
HP-80
効力C
【炎粉】D:【火傷】【防御力低下:小】発生率10%
「これが注文されて用意した品だ。素材を提供していただければ今後も同じものが提供できると思うが、どうする?」
今回はアリアさんの時とは違い、組織からの依頼だ。ミシェルだけで決めていいことはないので、隊長クラスの皆さんにもお越しいただいた。
反応をみるとうまくいきそうな感じはするが、果たしてどうかな?
「……一つ、質問いいかな?」
隊長たちの中で唯一顔をフードで隠れている男性が尋ねてきた。他の隊長たちに守られるよう囲まれているので、おそらくこの人が一番偉いのだろう。
「なんでしょうか?」
「これを作るのにどれくらいかかった?」
おもむろに左の籠の中に手を入れ、フレイムボムを一つつかむ。
「一個作るだけなら今は3分もあれば作れます」
こうして言うとカップラーメンとフレイムボムの価値が一緒になる気がするな、とそんなことを考えていると俺の答えにフードの男性は驚いたようだ。
「3分でこの出来か。 面白い」
くくっと笑いフードの男性が隊長たちと目を合わす。
ミシェルも含め、隊長たちは全員うなずいた。
「では、これらすべて引き取らせてもらおう」
初の大口依頼が成功して思わず安堵のため息をついてしまう。
そんな俺をよそに、隊長たちは持ってきておいた籠にボムを分けていく。全部で12個あるってことはすでに分配が決まっていたのだろう。
「さて、今後も納品をお願いしたいが、まずは報酬だな」
フードの男は袖から何かを取り出し、長机に置いた。表面に〝フェアリーガード″の紋章が刻まれた小さな黒い箱だ。
「開けてみても?」
フードの男性の頭が下がったので、箱を開けてみる。
箱の中には翡翠色の石、見た目からして宝石が一つあった。
「〝妖精の涙″だ」
「「「「「「!!」」」」」」
男性が石の名前を告げると分配中の隊長たちが一斉にこちらを見つめてくる。
「効果は【全能力向上:中】。 ただし妖精族にしか使えぬ」
またずいぶんチートな物をいただいたものだ。しかし話はそれで終わらなかった。
「そして、それは【錬金術】の極意『世界の源』、通称〝コア・クリスタル″の素材でもある」
「〝コア・クリスタル″? 賢者の石ではなくてですか?」
錬金術の極意といったら賢者の石じゃないのか?
「〝賢者の石″は〝コア・クリスタル″の大元だな。素材となるアイテムたちである『世界の雫』、通称〝ピース・クリスタル″と呼ばれているアイテムをまとめる役割をすると言われている」
「!」
(賢者の石がある!)
個人的作りたいアイテムNo.1があることを知って俺のテンションが過去最高潮になる。一応態度には示さないようにしているが。
「そして、お主はもう〝賢者の石″の原石を持っている」
「………………………………ハ?」
イマ、ナンテ、イイマシタ?
「それが何か教えてやることはできるが、自分で考えるんだな」
ハッハッハっと笑いながら去るフードの男性。
俺、そして警備隊隊長たちはそれを呆然と見つめることしかできなかった。
賢者の石やコア・クリスタル関連の質問にはお答えできません。




