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VRMMOの錬金術師  作者: 湖上光広
第一章:ダイブイン
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第四十三話:防具職人シュリ

「ほんとにすいませんでした」


場所を変えて『始まりの街』の一角にあるカフェに来ている。

このカフェはプレイヤーが建てたカフェ第一号店と言うことで話題を呼んだ人気店だ。


その中でも奥のほう、目立たない位置で俺は例の少女と楽しいお茶タイムを満喫していた。


……すいません、見栄を張りました。ホントはこんな状況初めてなのでとても緊張しています。


「いいよ。でもこれからは注意してね」

「はぃ~」


目に見えて元気がなくなる少女。他人からすれば俺が少女をいじめているようにも見えるので、早めに何とかしなくてはならない。


「そういえば、名前を言ってなかったね。 俺はアルケだ」

「あ、わたしはシュリっていいます」


まあ看板見たので名前は知っていたがそれは言わないお約束だ。

お互いに名乗ったところで店員がオーダーを取りに来たので紅茶のセットを二つ注文した。


「あ、お金」

「いいよこれくらい」

「いえ、わたしのせいですから……」

「ん~、気持ちはわかるけど、子供からおごられるのはちょっと……」


俺の言葉にきょとんとする少女。すると「ぷっ」と吹き出しくすくす笑う。


「すいません。この身長は設定で、現実の私は17です。 高校二年生です」

「……」


完全に忘れていたがここはCWOというVRMMOの中で現実ではない。現に俺だって髪の長さと色を変えたおかげでエルジュとラインに女に間違えられた。


「そうでしたか。 こちらこそすいませんでした」

「いいですよ、もう慣れましたから」


そういうことなら遠慮なくおごらせていただこう。といっても少女、訂正彼女からすれば罪滅ぼしの一環なのだろうが。


「ところで確認なのですが、VRMMOは初めてですか?」

「はぃ。 分かっちゃいましたか?」

「まあ、マナー違反ですからね」


CWOを始める前に空から聞いたことをいくつか説明する。

今回のようにスキルを本人の許可なく口にすることや掲示板などに情報を勝手に公開するなど簡単なマナー違反について説明すると真面目に授業を聞く生徒のように真剣にメモをとっていく。

メモもウィンドウに備わっているが使っている人初めて見たな。


「説明ありがとうござました。やはりゲームは難しいですね」

「そうですね」


ようやく気まずい雰囲気が去り、店内の雰囲気に合った穏やかな空気が流れて出す。


「さて、これからどうするか」


このままお茶飲んで終わりにしてもいいが、せっかく知り合ったんだ。もう少し話をしてみたい。……ナンパじゃないぞ。


「これからお暇なんですか?」


独り言が聞こえてしまったのか、シュリさんが尋ねてきた。


「ええ。攻略組でもないですし、素材は十分集まってるので……」

「素材?」

「あ」


再び目を煌めかせるシュリさん。同じ生産職だと思われ、いくつか質問してきたが、そのどれも俺は答えられなかった。

不審がるシュリさんに、俺は自分のメインスキルが【錬金術】であることを告げる。なんとなく、この人は信頼できると思ったのだ。


「なるほど、そうだったんですか」

「……驚かないのですか?」

「何にですか?」


そう言えばこの人VRMMO初めてって言っていたよな。もしかして掲示板も見てないのか?

確かめた結果、掲示板は知っていたが、自分に関わること以外はあまり見ていないと言うので、一応さっきの言葉の意味も教えると目を見開いて驚声を上げた。


そのせいで店員さんから注意され、さらに縮こまってしまうが、見ている分には面白かったので思わず笑ってしまった。




カフェから出た後、せっかくなのでシュリさんが防具を創るところを見せてもらうことになった。


『始まりの街』には生産者用の共同工房がいくつか存在する。

中には俺のように『配信記念サービスクエスト』で個人工房を獲得したプレイヤーもいるが、シュリさんは共同工房を使用しており、いつも使っている場所があるのだという。


「ここ?」

「はい、ここですよ」


案内された場所は一番大きな工房、しかもシュリさんには個室が与えられていた。


「何となく感じてたけど、もしかしてシュリさんってトップ生産者の一人だったりする?」

「いえいえ! まだまだ素人ですよ!」


シュリさんは両手をぶんぶん振って否定する。


後で知ったのだが、この工房にいる生産者は全員シュリさんのファンでそれゆえにシュリさんは優遇されていた。

さらに屋台で見たように多くのプレイヤーがシュリさんを支えているため、彼女は【鍛冶】スキルをすでにステップ3の【上級鍛冶】まで上げているらしい。

なお、この工房の名前は『ローリ共同工房』……


「さて、それじゃいきますね!」


アイテムポーチからインゴットを取り出し、火が灯った炉に入れる。


しばらくしてから取り出し、背負っていたハンマーを振り下ろす。


何回か振り下ろし、再び炉に入れる。


この作業を繰り返すことで武器や防具は生まれる。なお叩いた数が多いほどランクが高いものができるのだという。


判断基準は十回ごとで、二十回以上でアンコモン、三十回以上でレアと徐々にランクが上がっていく。

また使うインゴットの種類では十五回以上でレアになる物もある。


そして完成する武具のほとんどが運任せだそうだ。一応レシピもあるらしいが現在判明している武具のほとんどが性能がそこそこ程度の武具らしい。


そんな説明を聞きながらシュリさんの作業を見つめる。シュリさんは説明しながらも一度もインゴットから目を離していない。


その目つきはまさに職人で、なんとなく共感できた。

やはり同じ生産職同士ということだろう。


数えて二十二回で防具が完成した。品質はもちろんレア。

しかし完成したモノは性能がそれほどいいモノではなかったようでシュリちゃんはがっかりしていた。


完成した防具をプレゼントしてくれたが、おそらく着ることはないだろう。

しかしせっかくいただいた品だ。売ったりせず大切にしよう。アトリエならまだスペースが余ってるし。

鎧の胸部だったから、飾っておくのもありだな。


最後にフレンド交換して、シュリさんと別れた。


またしても面倒事が発生したが、新たな出会いがあったので今日はいい日だった。

鍛冶の描写について少し設定を加えました。

そして『制限も無しに叩くだけでレア度が上がるのはどうなの?』という質問がありましたが、レア品質の武器を創るには【中級鍛冶】以上の鍛冶スキルが無いとできないなどいくつか設定は考えてあります。

あまり詳しく話すとネタバレにもあるのでこれ以上は言えません。申し訳ありません。

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