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VRMMOの錬金術師  作者: 湖上光広
第一章:ダイブイン
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第四十一話:館攻略(ロウ視点)

*8月15日誤字修正:「習得しれくれないか?」⇒「習得してくれないか?」*

「気になるところがある」


そう言ってマスターのリアルでの友人でもある妖精族の男、確か名前がアルケだったか?が再び歩き出した。


マスターとはβからの知り合いで、その当時から彼のことは聞いていた。


曰く『心に灯った火を絶やすことなく燃やし続けている親友』。


その火がなんなのかは当時教えてくれなかったが、ようやく判明した。それは間違いなく“錬金術”なのだろう。




この館を見つけたのは三日前。私ではなくアーシェとカナデで、マスターから情報があった隠しエリアを捜索中に発見したのだという。


しかし【錬金術】が必要という時点でメンバーは諦めていた。


誰かが作成した『クズスキルランキング』という掲示板情報で【錬金術】は上位に入っていた。すでにその掲示板は運営により消去されているが見ていない者はほとんどいないだろう。

俺のフレンドや知り合いの中で【錬金術】を取得したプレイヤーは一人もいない。どこかの掲示板で見たが、検証組ぐらいしかいないだろうという意見には俺や他のメンバーも同意見だった。

そのため【錬金術】を取得したプレイヤーではなく、NPCの販売品から【錬金術】のアイテムを探そうという話になっていた。


しかし、遅れて到着したマスターが「俺の知り合いが【錬金術】を習得しているから明日話してみる」と言った。

俺はマスターの交友の広さに驚いた。見れば他のメンバーも驚いていたのでそう思っていたのは俺だけではないだろう。


そして<今日20時に『始まりの街』噴水前に集合>のメールが届いた。

CWOのメールは設定しておけば自分の携帯に送れるようにできる。

そしてマスターが信頼するメンバーが噴水前に揃った。正直、カナデの参入には驚いたが、それ以上に驚いたのが現れた錬金術師、アルケだ。


普通魔法系の職業に就いている者はローブを主な防具にしているが彼は皮鎧を着ていた。さらにその鎧には全体的に線が入っており、それに気づいたアーシェがその線が魔方陣であることを見抜いた。

残念ながら効果まではわからなかったが、魔方陣が描かれた全身鎧などβのエリア3でも見たことが無い。

言い忘れていたが、俺はマスターと共にエリア3に入ったことがある。当然βでの話だが。


さらにマスターを攻撃した杖のスピード。

確かに魔法使いには接近されたときように【杖】の棒術を覚えるプレイヤーもいるが、大半の魔法使い系プレイヤーは接近される前に魔法で倒すのが常識だ。そのため、杖の棒術、しかも最初に覚える〔スイング〕をあそこまで鍛えたプレイヤーは初めて見た。


館までの道は俺たちの連携を見ておいて欲しいというマスターの意向で俺たちだけでモンスターを蹴散らした。チラッと見たが俺の戦いはともかく、アーシェやカナデの魔法にも対して興味を示さなかった。

やはり生産職の【錬金術】は戦闘方法も違うのだろうか?


やがて館に到着し、マスターが全員に確認を取るとアルケから【錬金術】で作ったポーションを渡された。

普段使うポーションよりも少し重く感じたが、何とか塀を超え、地面に落ちるタイミングで館に運ばれた。


すると塀の一部が沈み、俺たちは中へと進んだ。


館の入り口を開けると道が三つに分かれていたので、三グループに分かれた。俺はアーシェと組み、いつものように前に出て盾を構え慎重に足を進める。


しかしトラップはおろか、モンスターも出現せず、先に到着していたスバル・ムルル組と合流する。遅れてマスターたちも合流したので情報を交換し合う。


「アルケさんは何か気づいたところがありませんでしたか?」


アーシェがアルケに問いかける。

そういえばここに入る条件には【錬金術】が必要だった。ならばここから先にも【錬金術】が必要だと思ったのだろう。

さすがは“ブレイズ”の参謀役だ。


アルケの提案により俺たちは一度全員で見て回ることにした。

アルケがマスターとカナデが通ったルートには特になんも感じなかったと言うので、俺たちが通った道から回ることにした。途中アルケが何かに反応したそぶりを見せたが、その後も歩き続けたので気のせいだろう。


しかし一周し、元の場所に戻った。再びマスターが問うとアルケは再び歩き始めた。

そして俺が気付いたあの場所で足を止める。


そこは館中に配置されている何かの石が埋め込まれた柱。すぐそばにある別の柱と何ら変わらないが、アルケはその柱をじっと見つめていた。


すると装備していたストラップから同じ色をした石を取り外し、柱の石と交換した。

その瞬間、ガコ! という音と共に真上の天井の一部が落下し、急いで避難するもアルケだけはそこを動かなかった。マスターには悪いが見知らぬ他人と同じギルドのメンバーならメンバーを優先し、盾を扇状に変形させ、全員を崩落から守る。


煙が晴れるとそこには二階に続く階段と、無傷のままたたずむアルケがいた。アルケは一歩も動いておらず、そのすぐ近くに最初の段ができており、アルケはそのまま上へと登っていった。


そう、アルケは気づいていたのだ。崩落しても決してダメージを受けないことを。


アルケの無事をマスターが喜び、どうしてわかったのか聞いていた。どうやら柱に埋め込まれていた石は〝調合石″という【錬金術】で作れるアイテムだという。それがこの柱だけただの石だったのでここが怪しいと思ったのだそうだ。


その後、全員が二階に上がるとそこには多数の部屋が存在した。中には扉にトラップが仕掛けられているモノもあったが、魔法的なトラップだったのでカナデが【解呪】した。


人工物の罠は【解除】が必要だが、これに関しては〝簡易解除道具″という盗賊がよく使う七つ道具のオモチャ版のようなアイテムがある。これだけでも簡単な罠の解除が可能なので、ブレイズのメンバーは全員所持している。

しかし、魔法的な罠は呪いと同じなので回復系スキルを主に使用し、援護・支援役のカナデに「習得してくれないか?」とマスターがかなり前に頼んでいた。

それがこんなところで役に立つとは、さすがはマスターだ。


おかげでいくつかランクが高い武器が手に入った。中にはレアランクの武器もあり、取り分を話し合っているとアルケは「自分は使わないからいらない」と言って話し合いから外れた。

杖もあったのだが、アルケの杖は【錬金術】専用だという。〝錬金術師の杖″とそのままの名前だったので何人か笑ってしまった。

幸いにもアルケは気にしないと言ってくれたが、武器が手に入ったのは彼のおかげだ。今度何かおごることにしよう。


捜索は続き、やがて二階部分も全て制覇したところでまたしても階段が無いという問題に直面した。


【解呪】できるのはカナデだけだったので今回は全員で行動していたから、アルケが見落とすことはないだろう。俺たちから見れば同じ石でも見ただけですぐにわかるのだから、くまなく部屋を観察していたアルケが見落とすわけがない、といつの間にか俺はアルケのことを信頼していた。


再び部屋を回ったが、どこにも不自然な点は無いのだという。仕方が無くここで捜索打ち切りと思い、階段まで戻ることにする。


その時、笑い声が聞こえた。振り向くとアルケが口を大きく開け笑っていた。「何かおかしいことでもあったか」とマスターの問いに、アルケは前方を指さした。

しかしそこには一階に降りる階段しかない。しかしアルケは階段を指した指を今度はその上に向けた。

そして気づいた。階段の部分だけ天井が無いのだ。2階の天井は1階よりも高く見逃していたのだ。


しかしわかったところで階段は下にあるので、結局上る手段が無い。それの対処もアルケはすでに気づいていた。

スバルにお願いして先ほどの〝調合石″を射抜く。パリンと音が鳴り〝調合石″が破壊されると階段が上昇してきた。


そう、天井が落下してきたと思ったさっきのは天井にカモフラージュされた階段が落ちてきたためで、すぐ下にいたアルケはそれを目撃していた。上昇した階段はそのまま三階へ続く階段となった。


三階は一回の食堂規模の大きさがある一部屋だけだった。そこでかなり大きなレア色の宝箱を見つけた。中身は弓・剣・杖そして袋の中に入った宝石。

さすがに杖は渡すべきと意見が一致したがやはり断られた。その代わり、一緒に入っていた宝石は全て譲った。さすがにこれは断らなかった。


【鑑定】持ちがいないので後回しにしようとしたらアルケが簡単に説明し始めた。

なんと【鑑定】のランクアップスキル【識別】を覚えており、さらにポイントが溜まれば次の段階まで進めるくらいにまでレベルが上がっているとのこと。

識別結果は全て魔武具だったので全員が驚いた。備わっている効果はどれも【HP増加:小】だったが、現段階では最高ランクの武器だ。


俺たちが話し合っている間、アルケは本棚に収められていた一冊の本を手に持っていた。俺には字が読めないがどうやら【錬金術】に関わりのある本みたいで「これだけでも来たかいがあったな」と満足げに微笑んでいた。


三階に設置されていた魔方陣が転移ポートだとアルケが言うので、それを起動させると館の入り口に戻った。

アルケによるとあれも【錬金術】の代物らしい。そのことがあの本には書かれていたらしく、マスターが調合を依頼していたが、レベルが足りないと断っていた。

その後で調合成功したら連絡してくれると約束していた。


結果としてランクアップポイントのためのレベル上げにはならなかったが、利益は十分あった。

去り際に全員がアルケとフレンド登録を交わして、アルケは妖精族のエリアに転移した。


また一緒に冒険したいものだ。

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