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VRMMOの錬金術師  作者: 湖上光広
第一章:ダイブイン
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第三話:スキル

ゲームにログインする前にアバターを決めるのがVRMMOで行う最初のステップだ。

まずはアバターネームを決める。それはもう決まっていた。


「アルケっと」


錬金術師=アルケミストを簡略しただけのシンプルなものだが、これ以上にふさわしい名前は無いだろう。


次にVR機器によってスキャンされた俺の身体が映っている。ここから顔の整形や身長・体重の変更など人によっては気に入るまで何時間もかけるらしいが、そこまで興味のない俺は短髪の髪を腰まで伸ばし、色を紫が入った青、確か瑠璃色と呼ばれる色に染めた。


錬金術にもいろんな種類があるが、いちばん基本となるのは窯に素材を入れ、かき混ぜるという黒魔術だと考えているので髪を伸ばして魔女風にし、色は窯の中の水をイメージした。


他の部分は現実と変えず、画面右下のOKに触れる。

最後に種族を決める。想像だが、錬金術は調合する度に魔力、すなわちMPを使うと思ったので一番魔力の高い妖精族を選択する。


最終確認ウィンドウが出てきたので、YESを押してとうとうCWOの世界へとその身を投じた。




「ここが、VRの中か……」


田舎から上京してきた人間のようなセリフだが、初めてこの光景を見たものはほとんど同じことを言うだろう。


現実にはありえない空の色、現実では見ない形状の建築物、歩く人々の格好など全てが“ここは現実ではない”と思われる要素を含んでいた。

今いる場所は共通エリアの街なので、妖精族はさもファンタジー溢れる場所となっていることだろう。


「とりあえず、二人を探さないと……」


右手の腕輪に触れステータスウィンドウを表示させる。慣れた人間ならば念じるだけで出せるらしいが初心者の俺にはそんな芸当はできない。


そこからチャット機能を呼び出し、予め聞いておいたリンクナンバーを入力する。


チャット機能にはだれでも閲覧・書き込み可能のオープンと特定の相手だけで交信するリンクの二つがある。リンクの場合は決められたナンバーを入力することでそのチャットに参加できる仕組みとなっている。また悪用防止のため、そのリンクに入れるのはリンクメンバー全員が認めた相手だけとなっている。この操作はVR機器そのものでも可能のため、初めからリンクナンバーを決めてからプレイする者も多い。


≪今どこにいる?≫


とりあえず用件だけを書き込む。するとすぐに返事が来た。


≪今努さんと合流した。噴水広場に来て≫


指示通り、噴水広場に到着する。といってもサービス初日だけあって人が多い。


≪今到着した。アバターの外見を教えてくれ≫

≪私は金色の長髪に白い鎧を着た天使みたいな翼を生やした鳥人族、努さんが兄さんみたいな黒の短髪に茶色の鎧、左腰に剣、左腕に盾を装備した人族≫


こちらもアバターの外見を教え、二人には動かないでもらった。


すると外見が一致した二人のプレイヤーを発見し、近づく。


「失礼だが、エルジュとラインか?」


エルジュは空の、ラインは努のアバターネームだ。アバターネームは同じものが使えないため、確認手段としては一番信用できる。


「「……」」


しかし二人は驚いた表情をするだけでこちらの質問には答えなかった。


「すいません、ひとちがい……」

「ううん。エルジュであってるよ兄さん……」


立ち去ろうとした俺を女性アバターが引き留める。


「なんだ合ってたのか。どうしてすぐに答えなかったんだ?」


そんな俺の疑問に男性アバター、ラインがある方向を指さした。その先には噴水がある。

疑問に思う俺に「いいから水面を見てこい」というライン。よくわからなかったがとりあえず水面を見下ろす。


「……」


顔は現実の俺のままだし、髪も変更したとおりになっている。どこもおかしいところは見当たらない。


「何が言いたいんだお前ら?」


振り向いた瞬間、二人に怒鳴られた。


「「なんで女になってるの!?」」




「そういうことなら事前に説明しておいてよ……」


大声をあげて注目してしまったため、場所を変えて話し合う俺たち。

なんでも二人は俺が現実と同じ容姿にすると思ったらしく、髪を伸ばした俺を見て俺だとわからなかったらしい。


「顔は変わってないからすぐにわかるだろうに」

「お前、自分が女顔だって自覚してないだろ?」

「そうなのか?」


自分の顔などに関心が無い俺はそんなことを気にしたことなどなかった。その横でなぜかエルジュが打ちひしがれている。


「昔からそうなんだよ兄さんのほうが肌きれいなんだよ何アレこっちはお肌の手入れに相当気を使ってるのに何もしないであの肌は一体何?生まれてくる性別間違えてない?どれだけ私の心に絶望を与えるのよ」


何か小声でしゃべっているようだがあいにく聞こえない。とりあえずこうなるとしばらく帰ってこないのは知っているのでラインにいろいろと聞いてみることにする。


「それで、今日はこれからどうするんだ?」

「ああ、まずは装備とスキルの確認だ。まだスキルは持ってないだろ」


スキルはアバターの動作を確認してから獲得するのがこのCWOのシステムだ。なんでも過去にスキルを取ったがアバターが対応できなかったことがあったらしい。最もそれを引き起こした奴はリアルがガリガリの細腕にも拘らず、アバターを筋肉質の男に設定し、両手斧を武器に選択した結果、腕が折れたらしい。もちろんVRの中なので現実には被害が無いが、それが原因でこのシステムが作られたらしい。ちなみに鍛えたアバターなら細腕で両手斧も可能だ。なので見た目細腕の140cmくらいの少年でも自身の身長の倍ほど長いバトルアックスを自由自在に操ることもできる。


「ああ、動作は問題ない。ここでもスキルを獲得できるのか?」

「いや、スキル屋に行く必要がある。至る所にあるからそんなに時間はかからないだろ」


ラインの案内でスキル屋を目指す。その際に置いていったエルジュは後から追いついて俺の腰にビンタした。なんか理不尽だ。


「それを言うなら私の心のダメージのほうが大きいよ……」


そんなやり取りをしながらスキル屋に到着する。多くのプレイヤーがスキルを選んでいたがある一定の距離に近づけば店員に言う必要はないらしい。


「ウィンドウ開いてみろ。スキル表示があるはずだ」


ラインに言われた通りにウィンドウを表示する。画面右上にスキルの文字が点滅しているのを発見し、触れると前に見たようなスキルリストが表示された。


「出来たか? そこから欲しいスキルを選ぶんだ。決定パネルはリストの一番下にある。好きに選んでいいが、初期段階だと最終的に選べるのは6つまでだ」


初めの段階では『メイン』となるスキル枠が4つ。『控え』となるサブスキル枠が2つとなっている。


ラインの言葉を聞きながら興味があるスキルに触れていく。触れるとそのスキルの色が変わる仕組みで、決定するまではいくつ選んでも問題ないようだ。

一つ一つ確認し、最後のスキルまで確認したところで決定に触れる。


『エラー! スキルが多すぎます!』


俺が選択したスキルは計12個。ここから半分にしなくてはならない。

(まず【錬金術】は確定だ。あとは武器として【杖】もいる)


問題は残りの4つを何にするかだ。【杖】は杖を使った攻撃も含まれているので戦闘関連はもう必要ないだろう。さらにどのスキルをメインでどれをサブにするかも考えなければならない。

(攻撃系が必要無いとすると候補は移動系と補助系。錬金術は魔法師系統だから装甲が薄いと思うからここは移動系にするか?)


何回か試行錯誤を繰り返してスキルを選別し、ようやくスキル選びを終了させる。


結果、メインのスキル構成は【錬金術】【杖】【鑑定】【速足】の四つにした。サブスキル枠二つはそのまま開けておき、選択で残ったスキルを一度保留して、後で決めようと思う。


俺のような初心者のために現在のVRMMOの全てのソフトにはスキル保留システムが存在する。これは初めてスキル選びをする際、スキルを選ぶのに迷ったプレイヤー用の救済処置で、期間は異なるが、初めてスキルを選んだ際に『保留ウィンドウ』にスキルを保管できる。そして期間内であればどこでもそのスキルを選択できるというシステムだ。しかし、選んだスキルは確定され、期間が過ぎるかスキル枠がいっぱいになると保留ウィンドウは自動消滅する。


つまり、一度は保管できるが、選ぶと後には戻れないということだ。


ようやく選択が終わったところで一息つき、二人を見つめるとどうやら待っていてくれたようだ。


「悪いな遅くなって」

「いいよ。一応スキルの確認をしておこうか」


そう言ってこの場所から離れようとする。


「おいおいあんた! そのスキルは取らないほうがいいぜ!」


その声に振り向くと両手剣を担いだ男とその取り巻きと思われる集団がいた。

変更点

 スキル枠の設定にメインとサブを加えました


(今回のように大きな変化がある場合は一応記入しておきます)

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[気になる点] 唐突にネカマになるのキモ 錬金術錬金術って言ってたのに前触れ無さすぎるでしょ てかネカマ、ネナベはネットゲームでは普通だけど自分の声で話して面と向かって人と接する未来VRで性転換す…
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