第三十三話:純粋と汚染
「これはいいですね」
「すご~い!」
「きれいです」
これがアトリエを見た後輩三人の感想。
「これがサービスクエストで手に入れた個人工房!?」
「反則だろこんなの!!」
こちらが廃人二人の感想。
とてもわかりやすく分類できる意見ですね~。
「お兄ちゃん、早く中に入れてよ!」
「そうだ! さっさと中を見せろ!」
「はいはい。今開けるよ」
廃人二人に急かされて先にアトリエに入る。そしてドアに近づき出入り許可ウィンドウを表示して五人の名前を入力する。
「「「おじゃましま~す」」」
「おお、中もすごい!」
「これを個人で所有できるのか!」
一斉に入ってくるも後輩は入り口でとどまり、廃人はいきなり部屋のあちこちを見て回る。
「少しは落ち着け……て無理か今更」
廃人たちはほっといて後輩三人を座る場所が無いのでベッドに腰掛けるよう言う。三人は素直に従い、世間話に花を咲かせる。
ようやく落ち着いた二人も会話に加わり、俺はアリアさんからもらった教本を読むことにする。
「それは?」
「錬金術の本だよ。例の依頼の報酬としてもらったんだ」
アリアさんからではないがそこは言わないことにした。そういえば俺はゴブリンキング討伐の報酬を確認してなかったことを思い出す。
アトリエにしまったアイテムウィンドウを表示し、手に入れたアイテムを確認する。
〝ゴブリンキングの核″・触媒アイテム・R
ゴブリンキングを討伐した者のみ入手できるアイテム。
武器・防具に組み込むことで【威圧】を習得することができる
他にも〝ゴブリンの肉″なんてのも手に入れたが気持ち悪いのでそれはそのまましまう。
後に食材アイテムを使う調合が出てきた時に活用することにしよう。
……ゲテモノ料理しか浮かばないが。
「なあ、二人はゴブリンキング討伐の報酬何だった?」
「私はお金だけだよ。タンクとかメイジからのドロップはあるけど」
「俺も同じだな。何か出てきたのか?」
「いや、俺も出てきてないから二人にあるのかと思ってな」
「何も無いの? やっぱりあれは突発イベントだったのかなぁ?」
突発イベントとは不意に起こるイベントながら報酬は少ないというプレイヤー泣かせのイベントだ。しかも大抵出てくるモンスターはフィールドボスクラスなので全滅することもよくある。
「それだと割に合わないから一つ試してみるか」
俺は依頼の帰り道で採取しておいた魔力込みの石を〝フレイムストーン″にし、火薬草を規定数入れ混ぜ合わせる。
後ろから五人分の視線を感じるがここで振り向いて手を止めると失敗するので手を休めず混ぜ続ける。色が変化してきたところで〝錬金ポーション″を加える。
まあ、加えなくても錬金釜の中には調合水が入ってるから必要ないのだが念のために。
さらに色が変化し、元は群青だった調合水が赤く染まっていく。そして一瞬光り、フレイムボムが完成した。
〝フレイムボム″・攻撃アイテム・UC
フレイムストーンの特性を引き継ぎいだ爆弾。
HP-55
効力:D
完成したのは少し品質の高い〝フレイムボム″。やはり錬金ポーションを入れたのは正解だったようだ。
欲を言えばもう少し効果が高いモノがいいが、こればかりは今後の研究次第だろう。
同じものをもう一個作り、エルジュとラインの二人にプレゼントウィンドウを出す。
「いいの?」
「それなりに経験値が稼げたらから無理しなくてもいいぞ」
「それくらいなら問題ない。 まあ、今回の護衛依頼の報酬と思って受け取ってくれ」
そう言うと二人も受け取ってくれた。後輩三人がエルジュから話を聞いて欲しいと言ってきたので、使うときは周りに誰もいないことを確認することを厳命させ、プレゼントした。
さすがにこれ以上は研究材料としても必要なので追加は断る。
「ちなみに、あの時の威力はいつ出せる?」
「それはわからん」
もし、あの時と同じ数の火薬草を入れたらほぼ間違いなく失敗するだろう。あれは錬金石の効果があったからこそ出来た調合だ。
残念そうにするエルジュには申し訳ないがいつかできたら渡すと言って納得してもらった。
その後は雑談を交わし、そろそろログアウトしようという流れになった。
「さすがにエリアに戻るのは面倒だな。宿屋どこにある?」
「スプライト中央部に戻らないとないな。この近辺は職人街だし」
というわけでみんなで中央部に戻る。一度だけお世話になった宿屋に到着し、五人分の宿泊料を聞く。
「おい、自分の分を忘れてないか」
「俺はアトリエからログアウトできるから」
その言葉で再びアトリエの説明をすることになる。
「こうなったら豪華なギルド創って後悔させてやる~!」
「そうだな! アトリエなんて目じゃないもの建ててやる!」
負け惜しみなのかよくわからないセリフを言って二人は部屋に飛び込んで行った。
呆然とする後輩三人に「早く行かないと部屋入れなくなるそ」と注意する。
防犯上ログアウトした部屋には入れなくなるため、このままだと後輩たちは自分たちがログアウトするために新しい部屋を借りなくてはならなくなる。そのことに気づいた三人がお礼を言いながら部屋へと走って行った。
ちなみに同じ部屋に男女一緒はどうなんだ? という意見もあるが、今回はログアウトするだけだ。アバターも一緒に消えるのでラインが犯罪者になることもない……はず。
騒がしい時間を過ごし、アトリエに戻って少しの間フレイムボムの調合を研究する。
魔力込みの石(めんどうなので今後〝魔力石″と呼ぶことにしよう)をフレイムストーンにし、この段階でランクを確認し、ランクごとに選別する。そして火薬草もランクごとに分け、調合を繰り返した。
この日は最大で-80までしか完成しなかったが、【錬金術】が次の段階に進めるとアナウンスが入った。アナウンスに従い【錬金術】を【中級錬金術】にランクアップする。
まだ防具は修理中なので、明日教本のアイテムを調合してみることにしよう。




