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VRMMOの錬金術師  作者: 湖上光広
第一章:ダイブイン
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第二十五話:無双

*8月11日誤字修正:「タンカーゴブリン」⇒「タンクゴブリン」*

*8月19日誤字修正:疑問に思ないようだ⇒疑問に思わないようだ*

“いくらβプレイヤーでも、ランクSRの薬草が生えているフィールドのモンスター相手では少しは苦戦するんじゃないか。”


実は内心そんなことを考えていた過去の自分に言ってやりたい。


「お前は廃人という人種について何も知らない」と。




「あははは♪ 久しぶりに骨のある相手だよ!」

「ああ! 体中が歓喜に震えている!!」


今目の前で戦っている相手は、こういう冒険系のゲームではおなじみのゴブリンさん。名前もそのままゴブリンだ。

強いモンスターと聞いていたので登場するのは例のオーク関連だと思ったがこの付近ではオークは出現しないらしい。


しかし、通常クラスは一匹もいない。全員『~~ゴブリン』のように頭に何かを付けている。一番多いのは『エリートゴブリン』。次に『アーチャーゴブリン』。たまに『メイジゴブリン』や『タンクゴブリン』なんてのもいる。


確かにこれは初心者では相手にならないだろう。ゴブリンはエリア1の終盤に登場する初めての人型モンスターでこれまでの動物型とは一味違う。

というかなぜそのゴブリンがここにいるのかが謎だが、それについては誰も疑問に思わないようだ。……まあ、“そういう仕様だから”ということだろう。


さすがに終盤に登場するだけあって動きやHPなどもそうだが、彼らは全員何らかの武器を持って襲ってくる。武器も剣や槍、もしくはナックルのようなモノと多種多様だ。


しかも通常より強い上位種。明らかにこんな序盤で出てくるモンスターではない。


しかし、対峙するはエリア3まで進んだβトッププレイヤーとそれに匹敵するゲーマーの廃人コンビ。


「無駄だよ! 〔ホークショット〕!」


メイジゴブリンが魔法の詠唱を始めるも、翼を広げ上昇したエルジュが放った矢で消し飛ぶ。


「オラオラどうした? この程度か?」


一方ラインは一旦武器をしまい、片手剣から大剣に持ち替えた。大剣は攻撃力が片手剣より上で、それ自体が盾の代わりとして防御することもできるほど大きい。その分重いため、どうしても動作が遅くなる。


「はぁっ!」


その重さを感じさせない素早くも豪快な一振りでエリートゴブリン数体を一気に殲滅する。


「ハハハ! もっと来い!! もっと血を流させろ!!!」


と言うか、狂乱してないか?


「【錬金術】を習得しているのにも驚きましたが、お仲間のお二人も非常識ですね」


アリアさんも二人が奏でるハーモニー、正確には狂戦士たちのデュエットにドン引きしている。というか、その中に初心者の俺を入れないでほしい。


「まあ、無事に薬草が採取できそうなのでいいじゃないですか」

「そうですね。 そう考えたほうが幸せですね」


「「あははっはははっははははははははははははははっははははははっははっはは」」


さらにヒートアップする二人に対し、俺たちは不干渉を貫き、ついでに俺は近くの薬草や解毒草、木の実などのアイテムを回収していく。

木の実は空腹回復以外にも様々な回復効果があるが、あまり見つからないし腐りやすいので使われることが無い。精々【料理】スキル持ちが材料とするくらいだろう。

しかし俺にとっては【錬金術】の素材となる可能性があるので見つけ次第採取している。

ついでにたまに見つかる毒草も一応採取している。

そうなるとすぐにアイテムポーチが満タンになるため、ここしばらくは見つけては捨て、見つけてはポーチの中のアイテムを捨て、ということを繰り返している。

それでもモンスターは廃人二人組が相手をしてくれているので全く影響はない。


ちなみに、さすがにランクSRが生息する場所だけあってどのアイテムもそこそこランクが高い。しかしその中でも特に高いのが〝麻痺草″(=毒草)というのは少し残念だが。

まあ、中には火属性関連を強化させる〝火薬草″など新しい草も発見したので良しとしよう。




「「いやーすっきりした!」」


あれからも虐殺? とも思われる戦闘が繰り返され、目的地まで残り半分くらいのところにあった休憩スポットで休息をとることにする。フィールドやダンジョンには必ずこういうところがあり、ここに逃げ込めばモンスターに襲われる心配はない。


「とりあえず回復はしておけよ」


二人に〝錬金ポーション″を渡す。二人とも自分で用意していると思うが俺は戦力にならないのでこれくらいしかできることが無い。


ここにいるメンバーで一時的にパーティーを組んでいるため、左上にはメンバー全員のHPバーが表示されている。二人のHPがきちんと回復されているのを確認して俺は地図を確認しているアリアさんに今後の行動を確認する。


「さて、ここから先はどうしますか?」

「本来ならここから先はモンスターの出現率が上がるのですが……」


アリアさんの視線が二人に向けられる。あれを見た後ならばモンスターに襲われる心配はしていないだろう。心配があるとすればあの状態の二人をどう静めるかということか?


「なら、問題ないですね。さっさと出発しますか」


五分足らずだが、しっかり休息は取った。むしろアリアさんの発言を聞いて再び火が付いたと思われる二人の手綱をしっかり握らないと。

そう思い、二人を見ると、そこには誰もいなかった。


「まさか……」


視線をこれから進む予定の方向に向ける。

そこにも誰もいないが、その奥からかすかに戦闘音が聞こえてくる。


「「……」」


アリアさんとしばらく見つめ合い、急いで二人の後を追う。


ゴブリンたちがリポップしたら俺たちに戦う力はない。


「とりあえず、あいつらには後でOHANASIが必要だな」


どうしてやろうかと考えていると黒い感情が俺を覆う。それを見て「やはりこの方も同類」という呟きをアリアさんがしていたことに俺は気づくことはなかった。




無事に虐殺中の二人と再会し、順調に進んでいく。


奥に行くにつれてゴブリンたちが襲わなくなってきたので二人は少々不満顔になっている。


その反対に俺は嫌な感じがしていた。


(さっきアリアさんは「ここから先はモンスターの出現率が上がる」と言っていたのに出現頻度が休憩エリアに到着する前よりも少ない)


目的地まではあと少しだが、ここにきて急にモンスターが出てこないのは明らかに何かのフラグだろう。


(……もしかして、これって隠しクエスト扱いだったのか?)


今更ながら思いつく。


CWOには通常のクエスト以外に特殊クエストと呼ばれるクエストがある。

提示された条件を満たすことで発生する限定クエスト。

そして条件が不明な隠しクエスト。

さらに、クエストにもランクがあり、隠しクエストは少なくてもランクB以上。一番簡単な通常クエストのランクがEなのでいかに難易度が高いかは言うまでもない。


そもそも依頼を頼んできたのは“NPC”のアリアさんだ。


さらにはだれも気づかなかった隠しエリア。俺以外にも“紋章付きの〝フェアリーサティファ″”を受け取ったプレイヤーはいる。そのだれもが気付かないなど起こりえるのだろうか?


ここまでそろっていてこれがただのクエストであるわけが無かったのだ。


(ということは……)


視線の先、おそらくそこが目的地だろうと思われる広場の入口が見える。


その手前に不自然に広い場所がある。


ここまでくればこの先に待つのが何かは言うまでもないだろう。


「二人とも戦闘準備は?」

「問題ないよ」

「当然だな」


頼もしい返事を聞き、アリアさんも頷いてくれた。


そして全員が広場に到着すると出入り口が光の幕で閉ざされ、大勢のゴブリンと一際大きなゴブリンが現れた。

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