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VRMMOの錬金術師  作者: 湖上光広
第一章:ダイブイン
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第二十三話:目指すべき目標

「「行く行く! 絶対行く!!」」


ログアウトした俺は努を家に招待し、夕飯を振舞う。そして今回の件を告げると二人とも勢いよく承諾してくれた。


「ありがたいけど、そんなに反応することか?」

「何言ってるのお兄ちゃん!」

「そうだ! そんな情報を聞いて黙ってられるか!」


自分で頼んでおきながら、すでに俺を置いて意気投合する二人。この夕飯は努を誘いやすくするための事前報酬的なものだったのだが、もしかしたら必要なかったかと思ってしまう。


「そんなわけなるべく早く行動したい。二人とも予定は……」

「「そんなもの無い! 今すぐ行こう!!」」

「少しは落ち着けお前ら!!」




落ち着いた二人に話を聞くと二人ともギルドのための資金稼ぎや新規加入者獲得および育成ばかりで満足に戦えていなかったらしい。確かに初日で見た二人の戦闘を思い出すと、序盤のモンスターじゃ相手にならないもんな。


さらにこの二人が指導者としてあまりよろしくないのは現実で知っている。自分ができてもなぜできるのかを理解していないため、人に教えることができないからだ。

そんな光景を昔から見てきているため(実際二人から教えてもらっても俺のゲームの腕は上がらなかった)二人とも暇を持て余しているらしい。


そんな二人が強いモンスターがいると聞いて反応しないわけがなかったのだ。


「それじゃいったん帰る。帰ったらすぐ連絡するよ」

「焦って自転車転ぶなよ」


夕飯を食べ終えた努はそのまま帰った。空は片づけを手伝ってくれ、俺たちもVRの準備をする。


「努さんから連絡来たよ。これからダイブするって」

「了解。俺たちも行きますか」




再びアトリエで目が覚める。


アイテムウィンドウを呼び出し、調合したポーション各種があることを確認し、装備も確認し直す。


【錬金術】で作ったポーションは個人的にはまだ未完成品だ。しかし万が一の事態を想定して回復量の多いポーションがあったほうがいいだろうと一応持っていくことにした。


なお、調合品は自分で名前を変更できたので〝錬金ポーション″〝錬金キュアポーション(毒)″と名付けている。


「そういえば、杖どうするか」


〝錬金術師の杖″も悪くないが、これから行うのは戦闘、しかも相手は強いモンスターと聞いている。そう考えると少し不安が残る。


「もしも頼りで行ってみるか」


二人とも装備やアイテムを整えると言っていたので、集合するのはもう少し先になる。俺はあの老人の店に寄ることにした。




「悪いがここは初級者には扱えるモノは無いよ」


入って早々、現実を思い知らされた。どうやら時期早々だったみたいだ。


「すいません、出直してきます」


踵を返そうとすると店主だろう思われる老人が俺に待ったをかける。


「今のお前さんではここにある武器は使えないのは事実じゃが」


そう言って老人は俺を見つめてきた。その眼には見覚えがあった。そう初日に見たあの眼だった。


「お前さんはこれからも【錬金術】を極めていくのか?」

「当然です」


即答で返す。前にも言ったが錬金術は俺の全てだ。ならばそれを極めるのは当然のことだ。


「例えそれが認められなくてもか?」


それを聞いてアリアさんから聞いた話を思い出した。

この老人は逆境の中で生きてきた。いや今も生きているのだろう。

その経験があるからこその問い。


「当然です」


しかし、俺もすでにその欠片を体験している。

全3万人のプレイヤーの中で唯一のアトリエ保持者なのだ。

それだけでいかに自分が他人と違う行動をしているのかがよくわかっている。

もちろん、俺が受けている苦痛など老人が受けた苦痛に比べればほんの小さな欠片でしかないだろう。


「……そうか」


老人の双眸が俺を見つめる。

しかしその眼は初めて見る目だった。例えるなら“孫を心配するおじいちゃん”のようなまなざしだ。


「なら、せめてこれを持っていきなさい」


老人がポケットから取り出し、渡されたのは赤い宝石が付いたストラップ。

受け取るとウィンドウが表示された。



〝錬金石のストラップ″・アクセサリー・Sp

【錬金術】で産み出した希少な鉱石〝錬金石″が填め込まれたストラップ。



「埋め込まれている〝錬金石″の力は“一度だけ無条件で【錬金術】を使用できる”。 そして効力:Aの効果は“必ず成功する”じゃ。 儂も二回しか調合に成功しておらん」

「いいんですか? そんな大事なもの……」

「道具は使われてこその道具じゃ。 それに目標が目の前にあったほうが燃えるじゃろ?」


似合わないウインクをする老人と見て思わず笑ってしまう。


「せめてもの餞別だ。 がんばりなさい、若人よ。 そして忘れるな。 “【錬金術】は不可能を可能にする”ことを」

「はい。ありがとうございます」


ストラップをアクセサリー枠に装備し、店を出た。

変更点:〝錬金石″の能力と効力の説明を付け足しました。


補足:〝錬金石″を調合するには最低でも【錬金術】のランクが4以上ないとレシピが入手できず、偶然組み合わせに成功してもレシピを知らなければ確実に失敗する最上級品のアイテムです。老人の言う通り【錬金術】の“目標”ともいえるアイテムの一つです。


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