表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
VRMMOの錬金術師  作者: 湖上光広
第一章:ダイブイン
23/229

第二十二話:依頼受諾

ハイフェアリー。

同じ妖精族でありながらより魔力量が多い種族。しかし彼らはスプライトよりもさらに奥の里に住み、その姿を見た者はほとんどない。


これは努から事前に聞いていた情報だ。俺が妖精族でプレイすることを伝えた時に「こういうのもいるんだぜ」程度の軽い感じで説明されたが、まさかここでのその名前を聞くことになるとは。


というか俺は【錬金術】で遊びたいだけなのになぜこうも想定外の事態に巻き込まれる運命にあるのだろうか。


「……そのハイフェアリーと妹ということはアリアさんも?」

「いえ、私は妖精族です。そもそも彼らも同じ妖精族であり、単に魔力量が多いだけなのです」


詳しく説明してもらうとアリアさんと例のハイフェアリーである妹(アリサさんという名前らしい)は元々仲の良い姉妹だったが、数年前の誕生日アリサさんの魔力量が格段に上昇し、ハイフェアリーとして認定されハイフェアリーたちの里に移住した。

交流を禁止しているわけではないが他の妖精族からの羨望や嫉妬の視線を感じ、それからは手紙のやり取りを交わしていた。


しかしここ最近手紙が途絶え、気になったアリアさんがハイフェアリーの里を訪れると複数の石像になったハイフェアリーたちを発見。その中にアリサさんもいた。


彼らは森の奥で薬草の採取をしていたが、運悪くメイジオークに遭遇し石化の魔法をかけられた。オークはこの樹海に登場するモンスターでは最強種の一つで、様々なタイプが存在する。メイジオークは一番変異種で、名前の通り魔法を使うことができる。

偶然他の場所を採取していた別のグループによってメイジオークは討伐されたものの、石化された彼らにはハイフェアリーたちの回復魔法でも効果が無く、現在それなりに使い手の者達が樹海の奥で回復魔法のレベルアップに努めている最中だと言う。


意気消沈したアリアさんはスプライトに帰還したのが数日前。それから家の書物をあさり対石化用の〝キュアポーション″を見つけるも調薬するには素材が無く、【錬金術】も依頼先が無いため断念したのが昨日の夜。


そして今に至る。


「報酬は何でも払います! どうか引き受けていただけないでしょうか!?」


再び頭を下げるアリアさん。できることなら助けてあげたいが今のレベルではギリギリ効力Cが限界。効力Aとなるとよほど品質のいい素材が必要となる。


そのことを告げるとアリアさんは一枚の地図を取り出した。そこにはいくつか印が書かれている。


「これは?」

「樹海入り口付近の地図です。印がある場所は薬草や解毒草などが多く採取できる場所です」


よく見れば入り口付近の印の地点は、以前教えてもらった“薬草の畑”だ。

そしてアリアさんは印の中で唯一赤い個所を指さす。


「この付近は通常よりも強いモンスターが出現する場所なのですが、ここにはランクSRの薬草があります」

「ランクSR!?」


思わず印の場所を凝視する。場所的に樹海の端になるが、“薬草の畑”までの距離と比較すると、ここから歩いて三十分程度で到着する。しかし妖精族、さらに特殊な証が無いと入り口が見えない仕組みになっているらしい。それについてはすぐに解決した。


「その証はいくつかありますが、アルケさんの首飾りでも十分証になります」


俺の首にはミシェルからもらった〝フェアリーサティファ″がある。さすがランクSpだなと別の意味で感心してしまう。


「もし受けてくださるのなら私も同行します。これでもそれなりの実力がありますし、薬草の見分けなら得意ですから」


確かに、駆け出しの俺よりもすでに何度も薬草を見てきたアリアさんのほうが見分けるのは早いだろう。


「一つ質問です。他の種族、といっても私の関係者ですが、彼らに応援を要請しても問題ないですか?」


非戦闘要員二人だと戦力的にモンスターを突破し、薬草が生えてる場所までたどり着くのは厳しいと思ったのだ。ミシェルにも協力してほしいが彼は警備隊だ。個人的な用件で彼を借りることはできないだろう。

そこで考えたのがラインとエルジュに協力してもらうことだ。


「……本来ならご遠慮いただきたいのですが、彼らは口が堅いほうですか?」

「それは問題ないでしょう」

「であれば、責任は私が取ります」


責任というからにはバレたらやばいのだろうが、それでもアリサさんを思う気持ちが勝ったようだ。


「わかりました。お引き受けいたします」

「ありがとうございます!!」


その言葉と共にアリアさんは俺に抱きついてきた。アリアさんの抜群のスタイルで抱きつかれ、今度は俺が固まってしまう。アリアさんはそんな俺を気にすることなく抱きしめ続け、お礼を言い続けた。




しばらくしてようやく離してもらい、羞恥に顔を赤くしたアリアさんから〝キュアポーション大辞典″を譲ってもらい、俺はアトリエに戻った。

事前に〝キュアポーション″だけでも作っておこうと思ったからだ。


「素材は解毒草か」


薬草以外にもアイテムとなる草は多い。中には毒があるのもあるが。

アリアさんは色や見た目からどんな種類か判断できるらしいが俺にはまだ無理だ。そこで必要な解毒草もいくつか譲ってもらった。



〝解毒草″・状態異常回復アイテム・C

食べると状態異常“毒”を治す



これを薬草同様三枚入れると一般的なキュアポーションが完成した。



〝キュアポーション(紫)″・状態異常回復アイテム・C

解毒草の効果を抽出したポーション。

状態異常“毒”を治す

効力:E



〝キュアポーション(灰色)″に必要なキュアポーションは“効力:D以上”だ。ならばと〝ポーション″を作る際に成功した粉末1:ちぎった葉:2の割合で調合した結果、やはり同じようなものが出来た。



〝キュアポーション(紫)″・状態異常回復アイテム・UC

毒消しに回復効果を加えたキュアポーション。

状態異常“毒”を治し、HP+10

効力:C



毒消しにHP回復効果が付いたこの〝キュアポーション(紫)″。

これを市場に出せば爆弾になることは間違いない。事実、今存在する初期の状態異常系の回復アイテムや回復魔法にHP回復効果がある物など一つも無いのだから。


「ある意味で【錬金術】とんでもないな」


そして依頼用の〝キュアポーション(紫)″とせっかくなので自分用の〝キュアポーション(紫)″を調合し、この日はログアウトした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ