第三十七話:懐かしいモノ
大変お久しぶりです。予想はしていたのですが、やはり久しぶりに書くとあまり手が進みませんね。正直自分が一番驚いています。ここまで書けないのかと。そしてここまで物語が思いつかないのかと。
そう考えると、やはりプロの作家さんたちは偉大だなと改めて思いました。
では、本編どうぞ。
流通都市アレイス。
かなり大きな都市で王城を含めあらゆる街へとつながる道が多く整備されているかなり重要な都市らしい。その近辺および街中で行われた解放戦はゲーム時間で一日かけて行われ、解放できたときはかなりの歓喜の声が響いたらしい。魔族の指示に従ってそこで生活していた人たちは特に解放された喜びが強かったことだろう。
そのアレイスは現在プレイヤーであふれている。そのほとんどが職人プレイヤーで復興作業や武具または食事供給などあちこちで行動している姿が見られる。
「そんな中、なんで俺は街の外を【看破】しながら歩いているんだ?」
「お前はルーナ王女様救出クエストを発見した功労者だからな。みんな期待してるんだよ」
隣で護衛として一緒に行動しているラインを軽く殴ると改めて遠くを見つめるようにしながら【看破】を発動し続ける。
だが一周してしまい、結局何も反応は無かった。
「そう簡単にはいかないですか」
「ご期待に沿えず申し訳ない」
「いえいえ。こちらから無理を言って頼んだことですから」
門の付近で俺たちを待ってくれていたのはクオンさん。すっかり忘れていたがギリアムと共にこの解放軍プレイヤーサイドの隊長みたいな人だ。
なお、あの時一緒に行動したティグルやアステルさんの二人は現在単独行動中で街の外の探索をしているらしい。
二人の他に個人として優秀なプレイヤーがいろいろ探索中で、いくつか新しい素材が見つかっている。木材とか草系とか木の実とか、つまりは街の西に広がっている森を中心に範囲を広げているそうだ。しかも西方向の先には王城があるので、そこへ進軍するための下見も兼ねている。
「さて、俺はもういいのか?」
「ええ。今日はこれで大丈夫です」
「今日は?」
「今日は、です。また何か進展があればその時は協力をお願いします」
その笑顔がすごい怖いですよー。
ルーチェに戻ってきていよいよ大詰めとなった新アイテムの調合を続ける。
混ぜる強さとか素材を投入するタイミングとかいろいろ試行錯誤を重ね、何回も失敗を繰り返し、ようやく完成させることができた。
〝アースブルーム″・攻撃アイテム・R
大地に花を咲かせるように着地点の周辺に大地の槍を生やす。
HP-80:ただし、刺さる場所や刺さっている数によって数値は変動する(左の数値は最低値)
効力:B
う~ん、ちょっと凶悪な感じになったな。まあ、フリーズディスピアを調合してるから今更だよな。
「これが完成形ですか?」
「ええ、効果はこんな感じですね」
興味津々で近づいてきたエイミさんに完成したばかりの〝アースブルーム″を渡し、効果を説明する。ただ、アスフィリナが見せてくれたように【土属性魔法】に同じような魔法があるせいか、反応はいまいちだった。
「ちなみに、その魔法って誰でも使えるのですか?」
「そこまで難しい魔法ではないのですが、さすがに【土属性魔法】が使えないと無理ですね」
となるとプレイヤーでも使える人多そうだからこれは売り物にはならないかな。
おっと、いけない。だんだん思考が売れる売れないになりつつある。俺は錬金術師、錬金術師、商人じゃない、商人じゃない……
「とりあえず、俺に必要な分だけ生産しますか」
素材も今のところはドリアードの里に行く必要があるから大量生産はできないし。
さて、これでなんとか目標を達成できたので、次の調合は何にするか決める必要があるのだが、どうするか悩んだので棚に向かう。ここには教本を置いてあるので、そこに載ってるまだ作ったことないアイテムでも作ってみるか。面白そうなのが無ければ【魔法陣魔法】の習得に挑戦してもいいし。
「あ、これは」
教本の中に紛れ込んでいた一冊の本。そういえばこんなのあったなとそれを手に取る。
それは初めてブレイズのギルドメンバーと共に冒険したあの館で見つけた本だ。
あのころはまだランクが低かったからほとんど読めなかったが、今ならどうだろうか?
「何々? 〝壊れにくい食器″〝よく燃えるろうそく″〝透明すぎるグラス″って何だこれ?」
その後も読み進めていくが、そこに書かれていたのは錬金アイテムというよりも暮らすための道具類だった。まあ、これはこれで役に立ちそうだが……
「あ、ちゃんと錬金術っぽいのもある」
どうやら分類別になっていたようで急に〝ポーション″や〝キュアポーション″の類が出てきた。しかもまだ持ってない〝ハイポーション″のレシピもある。
実は〝上級錬金術教本″に書いてあるのだが、素材がまだ〝???″と記されているのが一つあるので調合できないでいたのだが、こっちのレシピは全て読める。この差はなんだろう?
「必要なものは〝ミドルポーション(効力B以上)″と〝高品質の薬草″、それに〝錬金水″か。〝調合水″はあるけど、こっちは聞いたことないな」
こういう時セリムさんに聞けば一発で答えがわかると思うが、それはダメだよな。
「他には〝クレンメタル″? 新しいインゴットかな?」
説明によると熱することで形を変えやすくなり、熱してから一気に冷ますと鉄以上の強度を持つ金属らしい。これは復興作業の大きな力になるんじゃないだろうか?
「必要なのは〝鉄″と〝土″と〝火属性アイテム″か。なら〝レッド・アイ″が使えるな」
「〝レッド・アイ″がどうかしましたか?」
俺の独り言が聞こえたようでエイミさんが声をかけてきた。そこで俺は今見ていたページをそのまま見せる。
「なるほど。では、取ってきますね」
「ありがたいですけど、この前結構もらいましたよ? まだあるんですか?」
「ええ、むしろ使ってくれるならいくらでも使ってほしいくらいです。そうすれば倉庫が空くので他の必需品が置けますから」
そういうことなら遠慮なく使わせてもらおう。というわけで、いっしょに転移魔法陣からフェアリーガード本部のエイミさんの部屋へ転移。
すると、ちょうど部屋には書類を届けに来ていた部下の人がいた。
「お、お疲れ様です!」
「お疲れ様。急ぐものはありますか?」
「いえ! あ、伝言を預かっています!」
「伝言? 誰からですか?」
「リオン隊長からです! 『例の詳細は一番上の用紙に書いておいた』とのことです」
「わかりました。ご苦労様です」
立派な敬礼をして部屋を出ていく部下の人。エイミさんは一番上の書類も含め、すべての書類に目を通しておく。
「では、行きましょうか」
「いいんですか?」
「ええ、もう済んだ用事で、その後処理についてでしたので」
そういえば前に〝フリーズヘル″を渡したな。もしかしてその時つぶやいていたことと関係あるのかもしれないな。
まあ、深くは尋ねないほうがいいかなと思って〝レッド・アイ″が溜まっているという倉庫に向かい、いつも通り〝聖樹の籠″に入るだけもらった。本当に便利だこれ。
そしてルーチェに戻ってきて調合開始。そこまで難しいレシピじゃなかったのですぐに完成品ができた。
〝クレンメタル″・インゴット・R
熱すると形を変えやすく、一気に冷やすと強度が増す【錬金術】でしか作れないインゴット。
へぇ~、【錬金術】でしか作れないって初めて見たな。他にもこういうのありそうだなと思って一旦調合を止めて本を読み進めてみる。
しかし少し読み進めていくと、素材の項目に〝???″と表記されているのが多くなっていく。やはりまだ【錬金術】のレベルが足りない……今俺ランク4だよな? それで足りなっていことはおかしくないか?
もしかして、まだ獲得していないとかまだ実装されていないエリアにあるから表記できないとかそういう意味かもしれないな。この本自体、どれくらいの価値なのかいまだにわからないし。
これはもう少し読み進めてみる必要がありそうだな。
次回の内容はなんとか思いついているので、次回は一週間以内の投稿を目指します。
では、また。




