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VRMMOの錬金術師  作者: 湖上光広
第三章:希望を照らす想い
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特別話:チョコへの欲望

ギリギリセーフ!

みなさんはチョコ食べましたか?

2月14日。その日は人によっては試練の日であり、人によっては覚悟の日であり、人によっては残ったチョコどうやって売ろうかと悩む日でもある。

そんな人によって呼ばれ方が変わる日だが、CWOにとってはまさに運命の日となっている。


そもそもの発端は運営から通達された『バレンタイン限定イベント』の告知である。いつも通りモンスターを狩るイベントなのは予想通りだったが、その報酬がとんでもないモノだった。


『今回は三種類のドロップがあります。それぞれ〝チョコの欠片″〝ピンクチョコの欠片″〝オレンジチョコの欠片″となっています。それぞれの欠片は集めることによってアイテムへと交換できます。

〝チョコの欠片″=プレイヤーにあげられる普通のチョコ

〝ピンクチョコの欠片″=男性NPCに手渡しできるチョコのレシピ

〝オレンジチョコの欠片″=女性NPCにチョコを作ってもらうためのメッセージカード


*ピンクチョコで交換できるレシピに特定のスキルは必要ありません。素材を集めてレシピをイベントエリアの調理室にいるNPCに渡せばチョコがもらえます。

*メッセージカードは渡すだけで十分です。素材を集める必要はありません。ただし、ある程度の好感度が無いとカードを受け取ってもらえません。また好感度によってもらえるチョコが変化します』


この通達により男性だけでなく女性のプレイヤーたちもやる気がMAXどころか「上限なんてものは壊せばいい!」みたいな感じとなり、イベントが始まるまでレベリングがあちこちで行われた。そのおかげでルーチェの売り上げもかなり良かったのは言うまでもない。





そして訪れたイベント当日。今年の14日は平日ということもあり、11日の土曜日から13日の月曜日までの三日間行われる。レシピやカードも13日の23時59分まで有効であり、それを過ぎると意味のないアイテムとなってしまう。


朝食を食べ終わってさっそくダイブインしたが、ここ最近の売り上げ急増によりルーチェの在庫が少なくなっていたこと。今回のイベントエリアでは露店も出せるみたいなのでそれ用の錬金アイテムを調合していたが、予定数が終わってなかったこと。この二つの理由によりイベント開始1時間後にようやく転移泉へと向かった。


転移泉から転移してきたイベントエリアではすでに多くのプレイヤーでにぎわっている。特に出店できる広場ではすでに露店を出しているプレイヤーもいて、まるで朝市みたいだ。


「えっと、露店出すには場所を選ばないといけないんだよな」


キョロキョロすると広場の入り口付近に『露店案内』という看板が見えたのでそちらへと向かう。むぅ、人混みが激しくてなかなか進めないな。

ようやく到達して看板の下にいたNPCの一人に話しかけると露店MAPが表示される。ここから露店する場所を選択するみたいだが……


「広場、そしてゲート近くはすでに全滅か」


広場にある露店設置可能エリアや討伐するモンスターが出現するエリアに向かうためのゲート付近はすでに黒一色だ。こうなると離れたところにするしかないな。

そんな風に考えていたらなぜか一番離れている露店エリアの一つが黒く塗りつぶされていた。つまりここに誰か露店を出しているということだ。


なんか気になったのでこの人の隣を選択してみる。せっかくアイテムがよく売れるチャンスをふいにしてこんな場所を選んだのだ。いったいどんな人なんだろうか。








「えっと、なんで?」

「あ、あははは」


目的の場所にあったのは鍛冶屋。そして店主は魔法少女みたいな服装をした女性。そう、ここを選んだプレイヤーとはシュリちゃんだった。

意外すぎて理由を聞いてみるとエリア選択中に後ろにいた人に押され、その際にこの場所に指が触れてしまったらしい。なんと哀れな。


「でも、なんでアルケさんまでこんなところに?」

「用意する予定のアイテム数が足りなくて今イベントエリアに転移してきたばかりでね。そしたらこんな場所に露店を開く人がいるみたいだからどんな人なんだろうと思ってね」

それを聞いて顔を赤らめて俯くシュリちゃん。ちょっと意地悪だったか。


びっくりはしたが露店の準備を進めていく。今回用意したのはグレンダイム500個のみ。ポーションのほうが売れると思ったが、討伐系だから攻撃系のほうがいいだろうと考えた。一種類にしたのは数種類用意できるだけの時間がないと思い、それなら一種類で数を増やそうという作戦の結果だ。


露店は運動会などで使われるようなテントを設置し、商品を並べるだけ。テントの生地には自由にプリントができるため、俺は錬金窯をプリントしている。錬金術と言えばこれだろう。

もちろん窯だけだとわかりにくいからそれを棒で混ぜている様子をプリントした。


ちなみにシュリちゃんのテントにはハンマーがプリントされている。露店の感じを見るに、回転砥石が置いてあることから販売よりも【研磨】重視みたいだな。


「さて、人は来るかね?」

「どうでしょう? ここまで来るほうが珍しいと思いますから」


周りを見れば草木ばかり。それも当然、ここはイベントエリアの端に近い場所だからだ。


「まあ、せっかくだからいろいろ話でもしようか」

「そうですね」


俺はともかくシュリちゃんは生産職においてトッププレイヤーだ。いろいろ情報をもらおう。










「ただいまグレンダイムは一パーティー10個までとなっております!」

「はい、研磨終わりました! 次の方武器を貸してください!」


あれから30分後、ものすごく忙しくなっている。


最初の客はだいたい10分前くらいに尋ねてきた。

そのプレイヤーは俺同様「こんなところに露店出すの誰なんだろう?」と思ってここまで来た。そして俺たちを見て驚き、シュリちゃんの露店に回転砥石があることに気づいて感謝した。どうやら武器の耐久値が厳しくなったようだが、広場やゲート付近の鍛冶露店は何処もいっぱいで時間つぶしに来たらしい。


それを聞いて思わず「いったん転移してまた来ればよかったのでは?」と尋ねてしまったが「イベントエリアを出るとパーティーが自動解約されるので、また組むのが面倒なんですよ」と答えてくれた。そこまで時間を気にするのかと思ったが、その後愚痴で「欠片でねぇ」と呟いていたので何となく理解した。やはりドロップ率低いのか〝オレンジチョコの欠片″。


そのプレイヤーが広場に戻り俺たちがいることが広まったため、男女のプレイヤーたちが殺到してこうなっている。正直ここで並ぶよりも少しでも多く各種の欠片を探しに行ったほうがいいと思うのだけどなぁ。


「あ、在庫無くなった」


本日の成果。グレンダイム500個12分で完売。はえーよ。


その後はシュリちゃんの露店に並ぶ人たちの列整理をした。新たに調合しようと思ったのだが、後方で割り込みがあったらしく喧嘩どころかお互いの武器を持ち出していたので、慌てて俺が列を整理することで穏やかに進めるようになった。


その後2日間も準備しておいたグレンダイム500個を売ったが、一度決めたら露店場所は変更できないので、両方10分もしないうちに完売してしまい、今回のイベントは列整理たまに商売という感じだった。







そして迎えた2月14日当日。

俺は去年同様アリアさんたちや遊女の皆様、セリムさんやエイミさんなどからもチョコを頂く。いくらVRゲームだからと言ってこんなにたくさん食べられないな。また数日に分けないと。


その後、ラインを含むメッセージカードを受け取ってもらえなかったブレイズメンバーと騒ぎまくった。その連中もカエデちゃん手作りのチョコをもらって発狂していた。


その時知ったのだがほぼ全員がルーチェの売り子さんたちにカードを渡していた。

さらに『カードを渡したい女性NPCランキング』という掲示板が作成されており、上位陣は一部を除いてルーチェの従業員が占めていた。

なお、アリアさんもトップ20入りを達成している。そこそこ知名度あったんだな。




こんな感じで今年のバレンタインもなんとか無事に終わった。


余談だが、現実では後輩三人組やクラスメイト数人からチョコをもらい、努は空が失敗作のチョコをプレゼントしていた。まあ、失敗作と言っても少し形がいびつなだけなのだが。

もらった努が感動の余り教室で誇らしげに掲げてしまった語ってしまったために、その場にいたチョコ0の男子生徒たちと物理的なお話を繰り広げていた。


「俺、なんであんなのと友達なんだろうな」

「努さんだもん。しょうがないよ」


その様子を空が水筒に用意しておいたホットチョコレートを飲みながら見ていた。今日も世界は平和だ。

最後の余談は実際に作者が高校生の時にあった出来事です。その時は努=友人で下級生からもらったチョコを自慢してOHANASIに発展しました。ちなみに私もその下級生からチョコもらってました。

ぶっちゃければ、部活の後輩なんですけどねw


では、次は本編で。

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