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VRMMOの錬金術師  作者: 湖上光広
第三章:希望を照らす想い
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番外編:クリスマスイベント;運営からの挑戦状

大変お久しぶりです。この小説を投稿後、活動報告も書きますので、そちらも見ていただけるとありがたいです。

「諸君! 今年はもう終わるが、俺たちの闘いはこれから始まる!」

「「「「「「「「「「然り! 然り! 然り!」」」」」」」」」」


何処からか集まってきたプレイヤーたちが各々の武器を掲げている。当然全員男性プレイヤーだ。


「この聖戦は、来たる血のバレンタインへの前哨戦である。だからといって、気を抜くなどあってはならない!」

「「「「「「「「「「然り!! 然り!! 然り!!」」」」」」」」」」


毎年思うが、一体どこからこういう人たちは集まってくるのだろう? そういえば努もよくあの集会に混じっていたような……


「今回はかの有名なギルドマスターからも協力を得られた! 諸君、感謝の言葉を!」

「「「「「「「「「「ブレイズ! ブレイズ! ブレイズ!」」」」」」」」」」

「ありがとう! 同士諸君たち、いや戦友たちよ!」


おい!?


「それでは皆の者よ! これよりイベント領域へと出陣する!」

「全員この俺に続け! ブレイズの名の通り、俺たちの勇気を運営に見せつけるのだー!」

「「「「「「「「「「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!!!!!!」」」」」」」」」」


……


「さて静かになったところで、調合を再開するか」

「ほんとうにうるさかった」

「窓も扉も閉めているのに聞こえてくるってすごいですね」


頼むから集合場所をルーチェの前にしないでくれ。そして調合アイテムを買ってくれたのはうれしいが、その目的を考えると悲しくなってくる。






本日は12月25日。いわゆるクリスマス当日。

本来ならキリスト教の大切な祭事なのにいろんな大人の都合によってお祭り騒ぎの聖夜となったこの日、当然ながら今年もイベントが開催されている。


前回の討伐イベントが男性プレイヤーVS女性プレイヤーになってしまった影響を受け、今回は[男性専用エリア][女性専用エリア]そして[カップル専用エリア]の三つのエリアが作られている。さらに討伐系と採取系の二つからクエストを選択できるので、前回参加できなかった生産職プレイヤーも参加しており、かなりにぎわっている。


そんな中、とある情報が運営から発表された。

「今回【男性専用エリア】では非常に魅力的な隠しボスを用意した。その名も『イケメン』。名前の通り女性スタッフ総出で完成させた最高の男性像をモデルとしている。さらに強さも最高級品で今の君たちでは手も足も出ない。万が一倒せたら素晴らしいアイテムを手に入れられるが、所詮独り身の男性プレイヤーではそれを手にすることは永遠にないだろう! ハッハッハ」


どこからツッコミを入れるか、むしろいろんな意味でこれはいいのか的な気がする内容だが、これが男性プレイヤーたちの闘志を燃やしまくり、本日大討伐が決行されることになった。


「それにしても、一体何の意味があったんだか」

「あれ? 知らなかったの?」


暇だからとルーチェに遊びに来ていたエルジュが俺のつぶやきに応える。振り向くとパルセードを抱きながら足をブラブラさせていた。


「去年のイベントだけど『男性プレイヤーの暴走によって楽しめなかった』っていう苦情が山のように届いたそうだから、今回はそういう男性プレイヤー用に専用のクエストを用意するって」

「初耳だぞ?」

「……あ、そうか。兄さんって男性プレイヤーだっけ。女性プレイヤーにしかメッセージ届く仕様になってたの忘れてた」


おい待て、我が妹よ。 少しOHANASIが必要のようだな。

そんな俺の考えを悟ったのか慌てて土下座するエルジュ……この場合は空か。


「それにしても、調合ってケーキ作れたんだね」

「それに関しては同意だ」

「???」


俺たちの視線を受けたセリムさんは不思議そうな表情を浮かべながら完成したばかりのケーキを箱に入れる。この箱はシュリちゃんお手製で冷蔵効果もある。ここまでくれば想像がつくと思うが、調合で作った鉄を材料としている。そのためそこそこ重いのが欠点だ。


このケーキもステータス向上効果があるが、なぜかランダムで効果がつくので販売はしなかった。今作っているのも【錬金術】レベリングの一環で、作ったケーキはこの後ルーチェのみんなでささやかなクリスマスパーティーを開いて食べる予定だ。

あ、エルジュはしっかりと自分用と後輩三人組用を確保している。


「……ん? ラインからメール?」


急に届いたメールに驚くもウィンドウを呼び出して開く。もはや慣れた操作になったものだと思いながら開くと『救援求む!』とだけ書かれていた。


「さて、もうひとがんばりしておいしいケーキ作りますか」

「さらっと無視してない? いいの?」

「俺が行ったところでどうにもならないだろ」

「でもアルケさん? もう素材が……」

「尽きた」


なんてこったい。







転生泉から【男性専用エリア】を選択して転移。そして事前に知った、正しくは聞こえてきた目標地点へと向かう。道中凛々しい顔のゾンビやら無駄にスマイルしてくるサンタやらが登場してきたが全員〝フレイムボム″で爆砕。例の『イケメン』以外はそこまで強くないようだ。


「念のためにと討伐クエスト受けておいてよかったな」


本来なら採取系のクエストを受けるべきなのだが、アイテムだけ渡したらすぐに戻ってケーキの素材集めをする予定なので採取する時間はない。

ならばとせっかくなので討伐クエストだけは受けておいたのだ。そのおかげで最低ラインの報酬は獲得できそうだ。


「そろそろだったような……あそこだな」


視線の先に見える丘から上る煙と聞こえてくる爆発音。その規模の大きさからこの先で間違いないだろう。


そして丘の頂上へとたどり着いた俺の視界に映ったのは、下の平原で戦う大勢のプレイヤーたちと巨人たちだった。


「って、ボスって巨人なのかよ!? 確かにイケメンだけどさ!」


おそらくボスと思われる最長の巨人の顔は間違いなくイケメンだ。しかし、今いる丘の頂上より少し低いくらいってあれだとイケメンにした意味ないんじゃないのか? ついでに手下と思われる巨人は『イケメン』の半分くらいだ。


「あ、アルケ! 早くアイテムを!」


チャットを通じてラインが話しかけてきたので了解の意味を込めて手を振っておく。

あれ? なんだかプレイヤーたちが武器を手放して泣き始めてるんだけど、何で?


「え!? 錬金術のお姉さんって男性なのか!?」

「う、うそだー!?」

「俺たちの天使がー!?!?」


ああ、そういうことか。ここで素直に「私は男性です」と言ってもいいが、このままだと男性プレイヤーたちが自滅しそうだ。ラインも慌ててるからフォローは期待できないし、どうするか……よし。


「同士諸君! 私はアルケではない!」

「「「「「「「「「「!?」」」」」」」」」」

「は?」


「私は錬金術のお姉さんから錬金アイテムを預かったとあるプレイヤーである。この姿は錬金術のお姉さんが作り出したアイテムの力で変身しているだけだ!」

「「「「「「「「「「おぉ!」」」」」」」」」」

「……」


ライン。頼むからその目はやめろ。もとよりお前のせいだぞ。


「同士諸君! このアイテムを受け取れ! これが錬金術のお姉さんからのプレゼントだ!」


とりあえずアイテムを適当にばらまく。丘から離れているが、そこはすぐ下の後方部隊が前衛へとトレードで送っているようで安心。


「よっしゃー!」

「これさえあれば無敵だ!」

「さすがは女神さまだ!」

「あいつ、やるなぁ」


さて、これでやるべきことは終わったからさっさと帰るとする……なんか視線を感じる?


「OHHHHHHHHHHHH!」


なんか『イケメン』が雄たけび上げながらこっちに走ってくる!? あ、手下の巨人が一体踏まれた。ついでにポリゴン片になったから死んだっぽい。


「あの野郎、錬金術のお姉さんを狙ってやがる!」

「なんだって!? さっさと殺せ!」

「女神さまには指一本触れさせねえぞ!」


これまたよくわからないが男性プレイヤーたちが急にやる気を見せ、先ほどばらまいた錬金アイテムを使って集中砲火を浴びせ、様々なスキルが『イケメン』にダメージを与えていく。

さらに部下の巨人に攻撃していた部隊も『イケメン』に攻撃を集中させている。そうなると必然的に何人か踏みつぶされているわけだが、そんな犠牲は二の次とばかりに『イケメン』へ攻撃をしている。


「くそ! このままじゃ足りないぞ!」


誰の言葉かわからないが、確かにこの感じだとおそらく『イケメン』が倒されるよりも前に俺に到達するだろう。何で向かってくるのかわからないが、巨人ゆえに歩幅が広いから逃げようとしても追いつかれそうだ。


仕方なく〝リィムダガー″を装備し、【投擲】スキルを使えるようにする。そしてアイテムを選択し、握って思いっきり振りかぶる。


「〔オーバーライトニング〕!」


名前だけなら凄そうなスキルだが、実際は大きく振りかぶってストレートを投げるだけ。一応名前通りその軌道は稲妻のように光っており、投擲距離もかなり長い。


そのまま俺が放った〝フリーズディスピア″が顔面に命中。吹雪が発生し、本来ならそのまま全身を凍てつかせるが、あまりに巨大すぎて頭を凍らせるしかできない。


それでも効果はあったようで『イケメン』はその場で停止する。さらに男性プレイヤーたちからの集中攻撃を浴びた『イケメン』は倒れ、砕け散った。







「それで、それがうんえ、いが言ってた素晴ら、しいアイテム」

「笑いたかったら笑え」

「あはははははは、げほ」


俺が手にした素晴らしいアイテムを見て大爆笑するエルジュ。俺もまさかこんなアイテムだとは思わなかった。


「『女性NPCと一日過ごせるチケット』……これ、大丈夫なのか?」


どうやら参加した全員に配られたようでその後の歓声はとてつもなかった。期限も年末までなので誰を選ぶか考える時間もきちんと用意されている。


「それで、姉さんはどうするの?」

「どうするって、俺には意味ないだろ」


こんなアイテムはさっさと捨てる。こんなもののためにアイテム枠を一つ使うのはもったいない。


「それにしても、明日から大変だねルーチェの売り子さん。絶対にそのチケットのターゲットに含まれているよ」

「それに関してだが、きちんと有効範囲も記されている」


そう、対象となる女性NPCは『プレイヤーと関わりが少ない女性NPCに限る』とされているのでルーチェで働いている遊女の皆さんは間違いなく対象外だ。そうじゃないと例えばルーチェみたいに女性NPCを売り子としているプレイヤーが困るからな。




そしてしばらくニヤニヤ顔の男性プレイヤーたちとそれに付き合っている女性NPCという組み合わせ、ついでに逆で嬉しそうな、あるいは照れてる女性プレイヤーと男性NPCのカップリングをよく見かけるようになった。


さらに言えばおそろいのマフラーを装備しているカップルプレイヤーも見かけた。


なにはともあれ、どうやら今年は良いイベントになったようで何よりだ。

読んでいただきありがとうございました。この後活動報告でも書きますが、来年からは執筆を再開できる予定です。


では、よい年末年始をお過ごしください。

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