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VRMMOの錬金術師  作者: 湖上光広
第三章:希望を照らす想い
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第二十六話:真価

結局時間に間に合わなかった。理由はアイディアが絞れなかったからです。錬金術ならまだアイディアあるのになぁ。

〝清鉄″が作り終わり、いよいよ新装ルーチェで発売する新商品の開発を進めていく。

だがその前にある実験をしたいので、それ用の素材を集める必要がある。


「今日はよろしくお願いします。あ、アルケさんこれ例の布です」

「よろしくお願いします。ちょっと一度戻りますね」

「よろしくね~。いってらっしゃーい」


同行者はアリアさんとエイミさん。アリアさんは俺と同じく採取目的でエイミさんは護衛だ。このメンツで気づいたと思うが、今回向かう場所は聖樹様の広場だ。

その前に用事を済ませ、五分ほどで戻り改めて出発する。


「それにしても、護衛が必要なんですか? 少し前から樹海にも多くのフェアリーガードの方々を見ますが」

「実は新たな敵も現れまして、一応念のために」


なんだって?


「エイミさん、その新しい敵というのは?」

「夜にしか現れないのですが、コウモリを大きくしたような感じです。闇と同化しているので発見が難しいのですが、強さは弱い部類に入るので、万が一遭遇しても問題ありません」


ここで注意しなければならないのは『フェアリーガードが言う弱い』=『俺にとっては普通レベル』ということだ。こっちは戦闘職じゃないんだよ。

まあ、夜にしか出ないのなら問題ないだろう。





予想通り道中特にハプニングは無く無事聖樹様の広場に到着した。ここに来るのもずいぶん久しぶりだ。よくよく思えばここに来るクエストで錬金アイテムの価値に気づいたんだよな。


品質の高い薬草を採取し、十分な量を確保して帰ることになるときに少しの間待ってもらうことにしてもらった。

聖樹様に近づき、そっとつぶやく。


「初めましてと言っても二回目ですね。アルケと申します、サクラ様」


つぶやきの返事は葉が風で揺れる音だけ。やはり名前を知っているだけでは交流できるわけないか。諦めて入り口付近で待ってもらった二人と合流する。


「もういいのですか?」

「ええ、確認できましたから」


二人とも頭に?マークを浮かべたような表情だが、さすがに聖樹様の名前を知っているなんて言えないからな。

とりあえず「夜になる前に戻りましょう」と言って帰宅を促す。例のコウモリが出てきたら俺にとっては面倒だからな。




『この世界とは異なる人の子よ。もう一度一人できたときに』


「!?」


急に聞こえてきた声に振り向くもそこにいたのはいきなり振り向かれて驚く二人だけ。いや、もう一本あるな。


「先ほどから大丈夫ですか? 何か飲みますか?」


アリアさんが俺の行動が状態異常ではないかとキュアポーションを何本か出してくれたが丁重に断った。しかし、指の間に一本ずつで四本だがすべて色が違うのはさすが様々な薬品を扱う薬剤師ということか。【魔法陣魔法】に使う予定のスキル枠が無ければ【薬剤】を取得していろいろ教わりたい。






さて、ルーチェに戻ってきた俺は採取した薬草を丁寧に選別し、出かける前に清水に入れておいた布を確認する。出発する前にアリアさんからもらった布だが、アリアさんの伝手で布職人の方にお願いし製作してもらった特注品だ。

清水は井戸水を〝聖樹の枝″が入った壺に入れて作っている。清水ということでかなり高品質なのだが元が井戸水なので不純物も当然混じっているだろう。そこでこの布を使ってその不純物を取り除いた正真正銘の清水を作ってみたのだ。


清水に漬けておいたのは単純に「清水に漬けておけば布自体も何か効果付くかな?」という単純な思考からだったのが、どうやら意味はあったようだ。



〝清らかな加工布″・素材・R

元々は特殊な加工された布だったが、清水に漬けたことで清められた。




これを作って服を作れば何らかの効果が付きそうだが、俺は布装備じゃないのでこのまま布として使う。

早速取り出してしっかり絞る。そしてこちらも清水で洗浄した桶を用意して布をかぶせ、ゆっくり清水を流してみる。それを桶に溜まるまで行ったが、どうなった?



〝清純水″・水・HR

清水から不純物を取り除いた純粋な清水。余計な物が入っていないので本来の性質を発揮できる。




ふむ。『本来の性質』と書いてあるが効果自体は無い様だ。まあ、調合してみれば何かが変わるかもしれない。



では事前準備が長引いたが、早速実験を始めよう。と言っても、試すのは〝ポーション″だ。

以前高品質の薬草を使っても効力はAが限界だった。おそらく俺の実力不足だと思ったので、【特級錬金術】まで成長した今の自分なら効力Sもできるのではと思ったのだ。


さっそく、品質HRの薬草を使って実験開始。錬金窯の中の調合水も〝清純水″を使って新たに調合し、まさに最初から作り直しという感じだ。

そして完成したポーションは気のせいか光って見える。


「……何ですかソレ?」

「こちらとしてはその反応が気になるのですが?」

「いや、そんな神々しいポーション見たことないですよ」


作業を守っていたエイミさんがすごい視線で見てくる。やはりこれとんでもない物のような気がする。




〝ヒーリングポーション″・回復アイテム・HR

高品質の素材を使い、作り手の技量も合わさったポーション。その出来はポーションの概念を覆すものである。

HP+120

効力:S 【ヒーリング】:10秒ごとにHP+10される。効果時間は100秒間。




……どうしよう、コレ。なんかいろいろヤバい。

回復量だけならそこまで注目されないが、自動回復能力とか今まで聞いたことない。しかも『効力:S』の隣に書いてあるってことは、効力Sの効果なのだろうか。


俺とエイミさんが〝ヒーリングポーション″に釘付けになっていると「ただいま~」と言ってセリムさんが帰ってきた。帰ってきたセリムさんは俺が持っている〝ヒーリングポーション″を見ると「あ」と発する。


「もうそこまで出来るようになったの?」

「ええ。素材のおかげですが」


俺の回答に「素材?」と返されたので採取した薬草や〝清純水″を見せるとなぜががっかりされた。


「まだまだ」

「それってセリムさんならこの素材じゃなくてもアレが作れるんですか?」


エイミさんが〝ヒーリングポーション″を指しながら問うと、セリムさんは俺がいつも使ってる薬草を手に持ち、セリムさん用の錬金窯に入れる。

そこに調合粉末を入れて混ぜ始める。あれ? なんか混ぜるスピードが違うし、何度か逆回転してる?


「はい」


完成したポーションは俺と同じく光って見える。【看破】を発動させてみれば〝ヒーリングポーション″で俺よりも回復量が高い。


「これくらいできないと私の願いは叶えられない」


そう言うといつものようにフェアリーガードに卸すための〝フレイムボム″を調合し始めた。前々からセリムさんは俺に比べると別格だと思っていたが、どうやらそれは俺の想像でしかなかったようだ。


「日々、精進だな」


俺は再び採取してきた薬草と〝清純水″を取り出し〝ヒーリングポーション″を作り始めた。今はこれでいい。今はこれの調合を完璧にすることが俺の目標だ。


(焦ることはない。いつかきっと、その背中をとらえ、追いついてみせる!)


俺は決意を新たに、錬金窯に〝錬金術師の杖″を入れて回し始めた。

次回こそ、目指せ22時投稿!


では、また。

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