第二十三話:テイム+α
何時もの時間に間に合わずごめんなさい。
なお、今回の文字量はいつもの倍くらいあるのでご注意ください。
夕食も終わり、食器も洗い終わってようやくCWOにダイブイン。現在ルーチェは閉店中なのでゆっくり時間が取れる。でも、そろそろ営業再開したほうがいいよな。
思考を切り替えてテイム目的のためにルーチェを出ようとするとエイミさんに止められる。
「どうかしましたか?」
「一つご相談がありまして。アルバーロで新たに古代魔法陣が見つかりまして、それが転移魔法陣であることが分かりました。それで、こちらの転移魔法陣の転移先にアルバーロを追加してもよろしいでしょうか?」
「ぜひお願いします」
「ではさっそく」と言って転移魔法陣に見たことない筆で何やら文字を書き始めるエイミさん。筆先が光っていることから魔力か何かを流しながら書いているのだろう。こうやって魔法陣は作られていたんだな~。
「これで大丈夫です。一応確認してきますね」
筆をしまうと転移魔法陣に立ち、そして消える。しかし数秒後姿を見せたことから無事に成功したようだ。
「そういえばアルバーロのどこにつながっているのですか?」
「入り口から少し離れたところにある遺跡です。アルケさんが【融合】の魔法陣をその身に受け継いだ遺跡に近い場所です」
あそこか。なんか懐かしいなって【融合】で思い出した。
「もう一度【魔法陣魔法】に挑戦してもいいですか? 今なら習得できるような気がするんですよ」
「ええ、構いませんよ。しばらくは私もアルバーロのほうに向かうことになりそうなので、その後でよければ」
「ありがとうございます。今からアルバーロへ?」
「そのつもりですが、アルケさんも?」
頷くと「では行きましょうか」と一緒に転移する。
転移した先は全く知らない場所だったが、その遺跡から出ると俺が【融合】を会得した遺跡が少し先に見えた。
「では、私は向こうのほうに用がありますので」
「それじゃ、また後で」
一礼するとエイミさんは奥の遺跡へと向かっていく。俺は反対に入り口に向かい、ある意味いつもの場所を目指す。
「さて、いつもならこの辺りで見るんだけど……」
見回しても何もいないから仕方なく森の中へと入っていく。だがしばらく歩いていくも全くその姿を見ない。もしかしていなくなってしまったのだろうか?
そんな不安を感じつつも歩いていくと木の根元にようやく見慣れたキノコを見つけた。まあ、あの子とは限らないので要注意だ。
「やあ」
声をかけるとキノコが震えるので間違いなくパニヤードだろう。前に話しかけたときは声に反応してこっちに駆け寄ってくれたが今回は震えるだけ。つまり、別の子ということだ。
さてどうするか悩んでいると視線が合った。さっきのキノコの持ち主、生やし主?が顔を上げてきたのだ。
「ア」
「あ?」
オウム返しのように発せられた声を返すとキノコごと根元の後ろに隠れてしまう。また出てくるかなと待っているも何も起こらないので近づいてみる。根元にかなり近づいたが何の反応もないのでそのまま根元を見下ろせる位置まで近づくも、すでにそこには何も無かった。
「さて、どうしよう?」
少し考えたがこのまま帰るのもなんだかなぁ~と思って先に進むことにする。
こういうところは先に進むとモンスターも強くなるのがお約束なので一応装備とアイテムを確認しておき、慎重に進む。
すでに10分は過ぎたと思うが何も出現せず。こうなれば行けるところまで進んでやろうと思った矢先、またしても木の根元にキノコ発見。しかも6個。
「あれ全部がパニヤード? いや、さすがにそれは無いな」
いくつかは同じ個体のキノコ、つまり同じ帽子から生えてるものだろうと推測しながら進むと一斉にキノコが引っ込む。驚かせたかなと思っていたら根元の横からパニヤードたちが出てきた。その数6人。わぉ。
その6人はなぜかこちらを睨んでいる。なんかしたか、俺?
「ヤッパリキタ」
「やっぱり?」
「オネェチャン、マモル」
「姉?」
何を言っているのかよくわからないが、とにかく目の前のパニヤード6人から何かしら恨まれているのは確かなようだ。
しかも3人は手に石を持っている。小さいパニヤードが持てるくらいの小石だがさすがに当たったら痛いよな。
どうするか困惑していると「こら!」と急に声が響く。その声に驚く俺以上にビクッ!と震えるパニヤードたち。
「もうすぐごはんなのに何してるの!?」
言葉からパニヤードたちの親かな?と思っている俺の視界の先、茂みから一人の少女が姿を現した。
背丈はパニヤードとあんまり変わらない。多少背が伸びたくらいだ。
服装は葉の模様が描かれた黄緑色のワンピースにパニヤードと同じくキノコが生えた帽子をかぶっている。
見た目的に一番の特徴なのがペンダントだ。蔓のネックレスに宝石のようなものが付いている。
「一体何をして……あ」
パニヤードたちしか見ていなかった瞳が俺の存在に気づく。そのまま視線が合うと一瞬で顔が赤面し、ボンという音と共に頭から煙が出る……って大丈夫か!?
「な、なんでここに!?」
「へ? 俺のこと知ってるの?」
あの少女とは一度も会ったことはないはず。可能性としては前にも会ってたあのパニヤードから聞いているというくらいだ。でも、それだけであんなに動揺するか?
考え事をしているとパニヤード6人が少女の周りに集まり、その手前でみんながこっちを見る。どうやら少女を守ろうとしているようだ。
「え? みんなどうしたの?」
「「「「「「マモル!」」」」」」
「え? えぇ?」
……あれ? 守ろうとしているんじゃないのか?
俺まで困惑していると「……あ」という声が少女の口からこぼれる。そしてパニヤードたちに微笑むとゆっくり頭を撫で始めた。
「大丈夫。任せて」
少女が言うもパニヤードたちはその場を動こうとしない。「しょうがないなぁ」なんて声が聞こえてくるが、こっちは現状を全く理解できないので説明プリーズ。
「あの~、聞こえますか~?」
少女が声をかけてきたので「聞こえますよ~」と返答する。それを聞いてなぜか喜ぶ少女。
「お久しぶりです。お元気でしたか?」
「久しぶり?」
俺の言葉に疑問の表情を浮かべるも、少女は自らを見下ろすと納得したような顔を見せた。
「……そういえばこの姿で会うのは初めてでしたね。以前あなたにキノコを差し上げたパニヤードです」
「…………はい?」
まさかの発言に思わず【看破】を発動させる。なんとか少女にピントを合わせるようにした結果、その名前が判明した。
〝アスフィリナ″
地の精霊の一体。普通は姿を見ることはなく、森林の奥に住んでいる。アスフィリナが住んでいる森は植物の成長力が高く、そこに生える植物は普通よりも効果が高いと言われている。
「アスフィリナ」
「あ、名前知ってたんですね。さすがです!」
なんかすごい感動されてる一方、パニヤードたちはさっき以上に睨んでくる。そういえばさっき「オネェチャン」って言っていたな。つまり、彼女たちはあのパニヤードじゃなくてアスフィリナの姉妹ってことか。そりゃ守るよな。
「えっと、え~っと」
何から困惑しているアスフィリナだが、こういう状況ならさすがにテイムできないな。仕方なく帰ろうと足を動かすと「待って!」と声をかけられ、振り向けばアスフィリナがこちらに向かって歩み寄ろうとしている。その足をパニヤードたちが抑えているのでゆっくり以上に遅いが。
仕方ないのでこちらかも近づき、あと二歩歩けば手が届くくらいの距離まで近づいた。
「どうかした?」
見下ろす感じはあまり良くないと思ったのでしゃがんで目線を合わせる。するとさらに赤面しもじもじと指をいじり始めるアスフィリナ。
そして顔を上げるとさらに一歩近づいてくる。
「わ、私をお供にさせてくだちゃい!」
「ちゃい?」
多分嚙んだのだろうと思うが、かなり恥ずかしかったのか両手で顔を抑えてしまうアスフィリナ。それを見てパニヤードたちが俺の足を蹴り始める。地味に痛いな、精神的に。
とりあえず、現状を整理しよう。
アスフィリナはさっき「お供」と言った。言葉通りなら俺と一緒にいたいということだ。
しかし、彼女の姉妹たちであるパニヤードたちはそれを妨害している。彼女たちからすれば今まで一緒にいた姉が俺に奪われると思っているのだろう。
少し考えたが、ふとあるアイディアを思いつき、それが可能かエイミさんにコミュをつなぐ。以前に隊長および副隊長たちと会談した時に登録しておいてよかった。
≪はい。どうかしましたか?≫
≪よかった。無事繋がって≫
≪本当になにかあったのですか? 位置さえ教えていただければすぐに向かいますが?≫
≪いや、質問があるんだ。転移魔法陣って俺たち以外にも使えるのかな?≫
≪……少々お待ちください≫
少しの間返答がない。魔法陣を管理している人たちに聞いてくれているのだろうか?
≪お待たせしました。生命があるモノなら大丈夫とのことです。食料などもすでに魔法陣から送られているようなので≫
≪食料って生命あるモノなのか?≫
≪共に自然に生きるモノですから≫
なるほど、そういう考え方なのか。ともかく俺がまさに知りたかった情報を得ることができた。
≪すみませんがアルバーロ入り口付近で待っていてもらえますか? 俺以外にも転移魔法陣を使う人たちを連れていきますので≫
≪はぁ。よくわかりませんが、わかりました≫
コミュを切り、今度はパニヤードたちに目線を合わす。結構低いので仕方なく地面に膝をつく。
「みんなはアスフィリアと離れるのが嫌なんだよね?」
「「「「「「ソウダソウダ!」」」」」」
「じゃあ、みんなで一緒に行くのはどうかな?」
俺の問いかけに五人は沈黙し、お互いの顔を見つめる。しかし一人だけ、真ん中右側にいたパニヤードだけはジッと俺を見つめている。
「……デキルノ?」
「ああ。任せてくれ」
迷いなく俺が答えたことで「ワカッタ」と言ってくれたパニヤードはどうやら周りのパニヤードたちをまとめ始めた。もしかしたらこの子は次女なのかもしれないな。
「というわけだが、いいかアスフィリ……な?」
目線を上げるとまたしても両手で顔を覆っている。しかし、指の間からは水が流れている。
「いいのですか?」
「え?」
「こんなにたくさん、大丈夫なのですか?」
流れる涙をぬぐいもせず、俺を見下ろすアスフィリナ。どうやら彼女も姉妹と別れるのは辛かったようだ。
ゆっくりと立ち上がり、同じ高さになったところで目元をなぞる。
「約束する」
その一言でさらに泣き出し、抱き付かれてしまう。離すこともできず、その頭を撫でることになった。
なんとか泣き止んだアスフィリナと付いていくことになった6人のパニヤードと共に森を出てアルバーロの入り口に向かう。
エイミさんが見えてきたので手を振れば、ものすごい勢いで駆けてくるエイミさん。
「ど、どうしたんですか、この子たち!?」
「えっと、さっき話した俺以外に転移魔法陣を使う子たち「この子たちが!?」……そうです」
余りの迫力に怖気づくもなんとか伝えるとエイミさんはうっとりした表情になる。
そのころになって思い出したが、エイミさんってパニヤード見て鼻血出して倒れたこともあるくらいパニヤード大好きだった。
「待っててください! すぐに許可をもらってきますから!!」
それだけ言うとすぐに引き返し、その姿はすぐ二門の向こうに消える。それは門を守っている兵士たちが全く反応できないくらい早かった。さすがはフェアリーガード六番隊隊長ということなのだろうか?
それからしばらくしてエイミさんが戻り、許可証を俺にくれ一緒に転移魔法陣を目指す。アルバーロにいるほぼ全ての妖精族が見物に来ていたようでものすごく見つめられているが「気のせい気のせい」と自己暗示を続け、ようやく転移魔法陣に到着。
すぐさま転移したかったが、さすがに全員一度に転移すると魔力が足らなくなることからまずは俺が転移してセリムさんに事情を説明。
「わかった」と一言だけで了承を得た俺は再びアルバーロに転移し、パニヤードを一体ずつ抱きかかえてルーチェに転移。転移したルーチェで待ってもらうように言おうとしたところでセリムさんがお菓子を持って登場。すぐにパニヤードは見たことが無く、おいしいと知ったお菓子に夢中になるが、どこで調達したの?
疑問は残るがまずは全員転移させるのが先だと思い、アルバーロとルーチェを行き来してようやく最後、アスフィリナの番となった。
「じゃ行くか」
「その前にやることがあります」
?を頭上に浮かべる俺にアスフィリナは頭を下げる。
「私の姉妹まで面倒を見てもらうことになり、ありがとうございます」
「いや、それは」
「だからこそ、私は一生、ご主人様にお仕えします」
「おい待て」の言葉もむなしく、全身光出したアスフィリナは目の前でパリンと割れ、地面にリングが落ちる。……これってテイムでいいのだろうか?と考えたが、思い出してみればパルセードの時も同じような状況だったのでいいのだろう。
リングを拾い上げ、装備欄のアクセサリーを開く。すでに三つの枠は埋まっていたので〝チャーム・ロッド″を外し、〝アスフィリング″を装備する。
「あれ? エイミさんは?」
「すでに転移したぞ?」
転移魔法陣を守護している妖精族の方にそう教えられた俺は急いで転移。このままではエイミさんが死ぬのではないかと思ったからだ。
そして転移先、ルーチェで見たのは……
「どうしたの、それ?」
「勝手に倒れた」
血だまりにうつぶせになるエイミさんとお菓子を上げているセリムさんだった。
こうして俺はテイムに成功したのだった。
で終わればよかったのだが、
「あれ? なんで二体目が可能に?」
「その答えは私から話そう」
急に世界から色が消え、俺の背後に白衣を着た謎の男が出現したのだ。
果たして謎の男の正体は!? 次週に続く!
アルケ「多分、バレてるよな?」
謎の男「私が言うのもなんだが、読者気づいているだろうな」
作者「それよりもなんであんなに増えたんだろう? アスフィリナだけ出して終わるはずだったのに?」
アルケ・謎の男「それは作者がロリ……」
作者「それは一理ある」
他の女性キャラ一同「私たち出番減る!?」




