第二十話:レシピ本探し
この話から以前と変わらない展開が続きます。
今日は学校があったので放課後夕食の下準備をしてからダイブインした。
まあ、一時間後にはダイブアウトだが。さすがに食わずにそのままダイブする気力は俺には無い。
ダイブした俺はスプライト中央部に向かい、雑貨屋を目指す。
この世界に図書館なんて便利なものは存在しないため、レシピ関連の本はNPCから買うかもらうかしかない。
そう考えるとあの老人なら持ってる気がするが、今使っているアトリエはもともと老人の物だ。そこに無いということは老人が使っているアトリエにあってもおそらくもらえないだろう。というかもらえるのなら初めから置いてありそうだし。
そういうわけで新たなレシピを求め、アイテムを扱う雑貨屋をめぐることにした。
一時間後、収穫=0。
「なんで無いんだ……」
いくつか売ってる本はあったが【薬剤】や【鍛冶】などメジャーどころばかりだった。試しに店員に聞いてみても【錬金術】の本は無かった。
とりあえず一旦ダイブアウトして夕食を食べてから再び捜索することにしよう。
再ダイブしました。本見つかりません。
「なんでさ?」
懐かしい言葉が口から洩れる。しかし最初のダイブも含めて十五店舗回って一冊も無いとは思わなかった。
「もしかして、【錬金術】って妖精族では珍しいのか?」
確認してみたいがフレンドリストに載っているのはラインとエルジュだけ。さすがに頼りっぱなしはどうかと思い、自分で歩いているNPCに話を聞いてみることにした。
その結果、仮説が正しいことが判明した。
妖精族は魔力に長けた種族であるため、魔法で何でも解決しようとする傾向がある。そのため、回復もアイテムよりも回復魔法を主に使う。それ故にアイテムを使う機会が少なく、アイテムの生産を主にする【錬金術】はここでは廃れたスキルなのだそうだ。
「言われてみて納得できるが、はいそうですかと諦めるわけにはいかないからな」
あの掲示板を思い出す。そうすると沸々とやる気が満ちてくる。
そう、見返すのだ! そして【錬金術】の力を証明するのだ!
決意も新たに俺は雑貨屋めぐりを再開した。
「……で、最後に残ったのがここか」
俺は一軒の雑貨屋の前に立っていた。
正直この雑貨屋だけには頼りたくなかった。
そう、俺が赤っ恥をかいたあの店だ。
「でも、ここの店主の女性が教えてくれたから薬草を手に入れたんだし」
一度両頬を叩き、気合を入れる。
「男は度胸! すいませ~……」
「あら、いらっしゃい」
ドアを開けたらすぐ目の前にあの女性がいました。
「……」
「……」
交差する視線。
そして俺が取った行動。
「すいません。 間違えました」
ゆっくりその扉を閉めました。