第二十話:予想GUY
決闘者「このカードは自分フィールドにモンスターがいないとき……」
作者「自分の次元に戻れ!」
全員が無事に地下へ転送できたので先に進むことにする。
「いやちょっと待て! 俺への詫びは無いのか!?」
「いつもどおりノートじゃダメか?」
「それもありがたいけど、さすがに別のが欲しい!」
まあそうだよな。一瞬【フレイムサイト】でいいかなと思ったが、アレを渡してみるか。
「なら、これならどうだ? 一応新作だ」
取り出したのは理科室でよく見る薬品の瓶だ。中身は当然液体で色は真っ黒。もはや言うまでもなく毒々しいというか、明らかにヤバそうな感じだ。
「な、なんだそれ」
何が出てくるのか期待していたラインも引き気味だ。というか俺以外の全員が「何アレ?」という目をしている。まあ、自分も逆の立場だったら間違いなく同じ目をしていただろう。
「これは〝パーリィードラッグ♪″。毒、麻痺、やけど、昏睡、凍結、混乱、暗黙、そして混乱のいずれかが発生する劇薬だ」
おおぅ。みんなの俺を見る目が犯罪者を見つめるような目だよ。いや、結構有用じゃないのか?
「というわけで、コレいるか?」
「……一応受け取っておく」
恐る恐る受け取ってすぐさまアイテムボックスにしまうライン。ええと、せっかく作ったんだからちゃんと使ってくれよ。
改めて地下通路を進んでいく。隊列は騎士団の皆さんが外側に展開し、ラインたち戦闘組もそこに加わる。そして中央が俺というさっきと変わらない編成だ。
ただ、地下通路自体が狭いので何人か斥候として先に進んでもらっている。
「今のところは何もないな」
「ああ。【看破】持ちも何も言わないから間違いないだろう」
そして先行しているメンバーからも連絡が無い。しかし、あんなわかりにくい場所にあった転移魔法陣だ。まさか外れなんてことはないだろう。
そんなことを考えながら進めていくと前の騎士団メンバーが急に焦りだした。どうやら面倒なことが発生してるみたいだ。
「うーん、それは知らないな」
「私たちも見たことないですね」
最前線メンバーですら見たことないモノか。これは定番のボスモンスターとかいうやつか?
「どんな状況なんだ?」
「ああ。どうやらこの先にライオンみたいなモンスターが寝ているみたいなんだ」
「ライオンですか。危険性は?」
「……『正直わからない』というのが先行メンバーの意見だ。しかし、全長3mくらいはありそうだから弱くはなさそうだ」
うーん、でも他に連絡が無いってことは他の横道は無いってことだ。あとは先行メンバーに追い付くまでに【看破】持ちが他の道を探してくれることを祈るしかないか。
「そして何事もなく合流っと」
「誰に言ってるんだ?」
「お約束ってやつじゃないのか?」
おかしいな。こういう時にはこう言うって前に聞いたような気がするが。
「……まあ、それは置いといて。あれが例のライオンか」
ラインの視線の先にいるのはまさしくライオン。見た目的にはサー○ルレオ○ンだな。立派なたてがみに聞いていた通り3mはありそうな体長。そして赤く光るツメ。
……これはヤバそうだ。
「それで、どうするんだ?」
「正直戦いたくない」
「同感」
「多分全員そう思ってる」
俺も、というか俺が戦ったら瞬殺されるだろうな。それでも戦闘は避けられないとみんな装備を確認して、戦闘体制に移行しようとしている。
しかし、俺には違和感がありまくる。
「なあ、ゲーム初心者として質問していいか?」
「うん? 今更どうした?」
俺のリアルを知っているラインは普通に反応するが他のメンバー、エルジュと後輩三人組以外はとても驚いている。中には武器を落としそうになる人もいるんだけど、そんなに驚くことかね?
っと、今はそれじゃなかったな。
「こういうクエスト系でああいう風に出てくるモンスターは倒すのが前提なのか?」
「悪い。質問の意味が分からん」
「つまり、アレに王家の生き残りまで案内してもらう可能性は?」
俺の発言に俺以外全員の視線が寝ているライオンモンスターに向けられる。
何名か忘れているかもしれないが、ここは王家が脱出用に用意していた地下通路。そんなところに強力モンスターを配置するとはとても思えない。
脱出するなら当然装備は不十分の状態だ。さらに言えば現状は魔族に支配されているのだ。さすがにその状況で装備万全の状態で地下通路に入るとはとても思えない。
となれば、不適切な存在がいるとすればそれは何らかの意味があるということだ。
「……可能性がなくはないが、かなり危険な賭けだぞ?」
「それはわかってる。だから一つ賭けをしてみていいか?」
ライオンモンスターはいまだに寝ている。俺はそこに静かに近づいていく。他のみんなは後方で見守っている。
「……グゥ?」
「あ、起こしちゃったか? 悪いな」
あくまで敵対する意思がないことを示すために軽い口調にする。あら、当然のごとく警戒されてますね。
「グルルルル」
「典型的な鳴き声なんだな」
無駄にAIが強化されているCWOだから面白い鳴き声を期待してただけにちょっと残念だ。っと、また本題からずれたな。
「なあ、質問していいか?」
「グル?」
「前に王宮で庭師をしていたアニエスという人の伝言を預かっている。ぜひ第三王女ルーナ様にお伝えしてほしいと」
「!?」
お、表情が浮かんでるぞ。それでは門番としてはダメだぞ。
だが、効果はあったようでライオンモンスターは立ち上がると横の壁に向かって歩き出し、一言吠える。洞窟内なのでかなりうるさく響いたが、それによってなんと横壁が動き出し、横道ができた。
どういう仕掛け?
さらにライオンモンスターは横道に入っていくと尻尾を振って中に入るよう誘導してくる。さすがにここで罠が待ってるということは……ないよな?
「おーい、そろそろ来てくれー!」
振り返り後方で呆然としている皆を呼ぶ。おいおい、口をあんぐり開けてるやつもいるぞ。
「いや待て待て!? どうやった!? 何かしたのか!?」
一番早く現実に帰ってきたラインが俺に詰め寄る。思いっきり近づいてきたので思わず反射的に両手で押してしまい、ラインが尻餅をついてしまった。
「あ、悪い」
「いや、俺も慌て過ぎた」
その様子を見ていた他のメンバーの笑い声が聞こえてきてラインが思わず「うるせぇぞ!」と怒鳴るのと同時に「ガゥ!」と一鳴きするライオンモンスター。そういえば待たせてましたね。
「このクエストの依頼主である老婆と今回の目的である第三王女様の名前を言ったのさ」
「なるほど。それが合言葉だったわけか」
「それは私たちじゃわからないわね」
続々と集まってくるメンバーがようやく普段通りに戻ったのでさっそくライオンモンスターの後を付いていくことに。
「な!?」
「なぜラファエロがここに!?」
その先には人が二人いた。どちらも鎧を着ていて兵士のようだ。いや、兵士なんだろう。手には槍を持ってる。もしかして魔武器かな?
その二人もこちらの存在に気づいたようで槍をこちらに向ける。そのしぐさに迷いや無駄がない。後方から「あの二人相当強いぞ」とささやく声が聞こえてくる。
「貴様ら! 何者だ!?」
「なぜラファエロが貴様らを連れてきた!?」
戦闘職でない俺にもわかるくらい濃厚な何か。これが殺気というやつなのだろうか。
だが、今はそれに怯えている場合じゃない。
「庭師アニエスの伝言を第三王女ルーナ様にお伝えに来た!」
「何ですって!?」
突如別の声、若い女性の声が聞こえてきたと思うと奥からドレス姿の少女が飛び出してきた。もっとも、美しかったドレスは所々やぶれ、髪も手入れできていないのかぼさぼさだ。しかし、明らかに美しいと言える美貌を持っていて、その目はきつく力強い。
「あなた!? アニエスからの伝言ってどういうこと!?」
おそらく探していた第三王女ルーナ様だと思うのだが、いきなりジャンプすると首を掴まれた。あ、死ぬ……
いよいよ登場王女ルーナ様。さっそくアルケを殺しに来てます。いいぞもっとやれ。
アルケ「おい、主人公殺すな」
作者「今後の展開を考えた結果、ちょっと嫉妬してるからいいの!」
アルケ「ええー……」
ではまた来週です。
 




