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VRMMOの錬金術師  作者: 湖上光広
第三章:希望を照らす想い
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第十二話:情報提供……のはずだった

二話連続投稿した際に第十一話と順番が逆になってしまったので再度投稿しています。

ご指摘を頂いた多くの読者の皆様に感謝を、そしてご迷惑をかけてしまった多くの読者の方々、本当に申し訳ありませんでした。

老婆の家を出た俺はすぐにラインにリンクチャットを飛ばした。


≪どうした? 悪いがあまり時間は取れないぞ?≫

≪そんなに忙しいのか?≫

≪ちょうど今会議中でな。どうやら洞窟に向かった連中が苦戦しているようなんだ≫


うーん、これはさすがにタイミングが悪かったかな。でも王族の生き残りがいるかもしれないんだ。あまり時間はかけられない。


≪その会議を中断することは可能か? それくらい重要なんだ≫

≪……お前がこういう時に冗談を言うやつじゃないのは俺が一番よく知ってるからな。直接来れるか?≫

≪場所さえわかれば≫

≪よし! こっちは任せろ! カナデちゃんを向かいに寄こすから転移泉で待っててくれ≫


それを言うとチャットが切れる。

俺は指示された通り転移泉で待っているとすぐさまカナデちゃんが走ってきた。


「お、お待たせしました!」

「いや、大丈夫。それより案内お願いできる?」

「はい! こちらです」


カナデちゃんの後を追うように走り出す。普段は笑みを浮かべているカナデちゃんがここまで焦っているとなるとあまりよくない状況だというのが言われなくてもわかる。

まあ、洞窟に向かった連中の救援会議を中断させたんだ。会議している者たちの中には洞窟に向かった連中のフレンドやギルドメンバーがいるかもしれないから当然か。


走ること5分。周りの家とは明らかに造りが違う建物に入る。そこには30人くらいのプレイヤーが大きなテーブルを中心にしていた。なんかアニメとかでよく見る光景だな。


「アルケ!」

「ライン、すまないな」

「いいってことよ」

「今度俺にノートのコピーくれてやる」

「マジか! よっしゃー!」


普段はしないコントのようなことをする。だって、あまりにも空気がピリついているからこうでもしないと会話にならないと思ったからだ。


「……それで、そっちの嬢ちゃんか? わざわざ会議を止めてまで待ってたのは?」


声が聞こえたほうに振り向くとラインよりも身長が高く、全身を鋼色の鎧で纏った大男がいる。周りにも人がいることからおそらくどこかのギルドのマスターなのだろう。


「ああ。一応自己紹介したほうがいいかな?」

「その必要はないわよ、錬金術のお姉さん」


その男の右側に立っていた女性から声がかかる。右側と言っても俺から見てそうなだけで実際は少し離れている。彼女もどこかのギルドマスターなのだろう。


「あ、私はバタフライっていうギルドのマスターよ。名前はクオンって言うの。よろしくね~」

「は、はぁ」


なんだか苦手だなこういう自分から積極的に向かってくるタイプ。すると先ほどの大男が背負っていた大剣の切っ先をクオンと名乗った女性に向ける。


「お前が話すと長くなる。少し黙ってろ」

「いけずね~……死にたい?」


口調が変わったと思ったらクオンさんも腰に差していた双剣を握りしめている。おい、一瞬で雰囲気変わったぞ。なんなんだこの状況。


「先に説明しておくが、あの二人は犬猿の仲というやつでな。それでもここに集まった中では相当強い部類に入る」

「具体的には?」

「俺なんかでは足元にも及ばねえよ」


ラインの強さを正確に知ってるわけではないがそれでもCWOプレイヤー全体からすれば強いはずだ。そのラインが赤子のような存在か。やばいな。


「お二方。なれ合いはそこまでです」


緊迫した空気を一蹴するかのような凛とした声。その声は俺の後方、つまり入り口から聞こえてきた。

振り向くとそこには白い修道服のような恰好をした少女がこちらに向かって歩いてくる。手には神社のお祭りなどで巫女さんが舞う時に使う神楽鈴を持っている。


「遅れてすみませんでした。それで、どういう状況ですか?」


その少女はまっすぐにテーブルへと向かう。それを誰も止めないことからこの少女はこの中でも特に高い地位のプレイヤー、あるいはあの二人と同じく強者なのだと直感する。


「救援会議は中止だ。そこの奴が話があるのだとブレイズの頭が俺たちに言ってきやがった」


大男がつまらなそうに言う。そういえばこの男の名前知らないままだな。

なんてことを思っていたら少女の視線が俺に向けられる。その瞳は夜空のように漆黒に輝いている。じっと見つめていたら飲み込まれそうだな。


「あなたが? 錬金術を使う人がこちらにどのような用件ですか?」


その言葉に俺以外の全員の表情が驚愕に染まる。え、なんで?


「アルケ。お前この人に会ったことあるのか?」

「あるわけないだろ。どうせルーチェを利用したことがあるだけじゃないのか?」


俺としては一番可能性があることを言ったつもりだがラインはすぐさま首を横に振る。


「ありえないな。この人は自分以外の誰も信じない。そういう人だ」


その言葉を聞いて改めて少女を見つめる。意志が強そうではあるが、初対面でわかるわけないか。


「だからって俺を知っててなんでそれがそこまで驚くことなんだ?」

「それは私のことをよく知っているからです」


俺の疑問に答えてくれたのは少女自身だった。


「私は武器も防具も、そしてアイテムも自作した物以外使いません。そして普段からソロプレイを貫いています。今日ここに来たのも今どういう状況なのか伺いに来ただけですから」

「なるほど。つまり他人と関わりを持たないどころか他人に興味が無いと思われるあなたが自分のことを知っていたことにみんなは驚いた。そういうことですか?」

「はい。間違いありません」


となるとなんで俺のことを知っていたのか疑問に思ったがその答えもすぐ少女の口から紡がれた。


「私とあなたは似ているからです」

「似ている?」

「私はソロを貫いています。一方であなたはプレイヤーよりもNPCとの友好が多い。どちらも他のプレイヤーとの関わりが少ないプレイスタイルですから」

「いやいや、こいつみたいに知り合いはいますよ?」


ラインを指しながら答えるも、少女は首を横に振る。


「それでもNPCの知り合いの方が多いはずです」

「……参考までにそう思った理由を訊いても?」

「ルーチェには何回か変装して伺いましたが、店番をしているNPCが一人ではありませんでした。それだけでもCWOにおいても異常と言えるのですよ」


そういうものなのかと思ってラインを見ると頷かれた。俺としては知り合いになったのはティニアさんだけで、売り子のみなさんとはそこまで友好な関係ではないと思うのだけどな。


「話を折ってすみませんでした。それで、用件とは?」

「おっと、そうだった。フォレスワードから少し離れたところに地下通路が隠されている。その地下通路は王城まで伸びていたらしいからもしかしたら王族の生き残りが隠れ生き延びている可能性がある」


俺の発言に先ほど以上に驚く面々。これは予想外だったらしく少女ですら驚愕の表情を浮かべる。


「それは本当ですか?」

「クエストを受諾したから間違いない」

「なるほど。それは会議を中断するに十分価値がある話です」


少女は頷くと俺の元へと歩み寄る。そして指先を動かすと俺の視界にウィンドウが表示された。



『アステルよりパーティー申請が届きました。パーティーを組みますか?


Yes/No』



「へ? 俺とパーティー?」

「「「「「「「「「「!?」」」」」」」」」」


これまで見てきた中で一番の驚愕を浮かべる会議に参加したプレイヤーたち。しかしその中で別の表情を浮かべた者もいた。


「おい待て。俺たちとは組まないのにその嬢ちゃんとは組むのかアステル?」

「ギリアム。あなたと彼女は異なる存在ですから」


あ、ギリアムっているのねあの大男。アステルさんの発言を聞いたギリアムさんは明らかに怒ってますと誰もが見てわかるような表情になった。


「納得いかねえな。確かにその情報は貴重だが、今はそれ以上に魔武具のほうが重要じゃねえのか? 組むのなら俺たちと、じゃねえのか?」

「私は今の装備でも問題ありませんから」

「そういうことを言ってんじゃねえ!」


大剣が振るわれその風圧が部屋全体に広がり、離れているはずの俺でも思わずのけぞる。なるほど、ラインが足元にも及ばないといった理由が少しわかったわ。


「ここで魔武具が作れるようになればこの先の攻略が楽になる。そう思わねえのか!」

「ですから、私は他人に興味などありません」

「……ギリアムの意見に同意するのは嫌だけど、あなたの力があれば洞窟の魔族殲滅率は格段に上がるわ」

「先ほども言ったように今の私には関係ありません。それより早く受諾してくれませんか?」


おいおい、なんで情報を持ってきただけなのにこんな修羅場みたいな状況になってんだよ。

では、来週の水曜日にまたお会いしましょう。

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