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VRMMOの錬金術師  作者: 湖上光広
第一章:ダイブイン
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第一話:全ての始まり

改めて、よろしくお願いします。

*8月19日修正:斎藤努のルビが友人にも付いていたのを直しました。*

-錬金術-


それは万物を理解し、世界を感じ、理をその身に刻み込んだ者が行うことのできる“常識の上書き”を可能とした魔術である。


しかし、それ故に扱える者は少なく、その力は、名前は時が流れるにつれ薄れ、消えていった。





それから長い時が流れ、錬金術はその名を再び人々は認知する。


魔術と対を成す存在――――――――――――――――――――科学によって。










「CWO?」


「そ、Cross(クロス) World(ワールド) Online(オンライン)。 名前ぐらいは知ってるだろ?」


いつもの昼休み。購買部から帰ってきた小学校の頃からの友人である斎藤(さいとう)(つとむ)はパンの袋を開けながら言った。


「そりゃ、明日発売の最新のVRMMOだろ。 TVで散々CM聞いてるよ」


俺、高槻光子郎(たかつきこうしろう)は弁当箱のふたを開けながら努の質問に答える。


「知ってるなら話は早い。 一緒にやらないか?」

「気軽に誘うな。 そもそも手に入るわけないだろ」


VR機器自体はすでに何年も前に発明され、手に入れにくいが必ず手に入らないわけじゃない。しかし、CWOは別だ。


「明日の発売を待てなくてすでに待機組が長蛇の列を作ってると今朝報道されてたぞ」


いつもならどこぞで起きた事件や芸能関係から始まるニュースだが今日はどの局も同じ話題を流していると確信できる。それだけ大きな話題となっているからで、ニュースで取材を受けている人の中には三日前から販売店の前で待っている人もいた。


「確かに正規の方法では、ん、今からではどんなにがんばっても無理だろう」


話している間に食べていたカツサンドの最後の一口を口に入れながら努が俺を見る。


「正規?」

「そ、正規だ。つまり……」


一度声を溜めるのはなにか大事なことを言うときの努の癖だ。たいていの場合がゲーム関連のため俺には興味が無いことだが。


「俺はそのCWOを二つ手に入れることができる」


普段なら大声で発表するが、今回に限りギリギリ聞こえるくらいの音量だった。それもそのはずだと思う。明日発売の、おそらくゲームに関心を持つ者ならだれでも欲しがるモノを二つも確保しているのだから。


「……だから?」


それは凄いことだが俺にはどうでもいい。そもそも俺はあまりゲームには興味が無いので、箸でつまんだ卵焼きを口に入れた。お、なかなかいい味に出来た。


「……まあ、お前がそんな対応取るのは長年の経験から知っていた」


知っていたという割には本気で落ち込んでいる我が幼馴染。

しかし、再び上げた顔には『いかにも悪だくみをしている』と誰もが思うほどの笑顔を浮かべていた。


「このゲーム、どういう内容か知ってるか?」


卵焼きを水筒のお茶で流しながらCMの内容を思い出す。


「確か、いくつかの種族があって、それぞれが独自のフィールドを形成し、その他にそれぞれのフィールドを繋ぐ共通エリアがある。で、その共通エリアの先には魔族のエリアがあって魔王を倒すために各種族が戦う……だったか?」


うろ覚えの知識だったが努が頷いているので間違いではないようだ。


「さらに説明すると種族の他にスキルがあり、種族の固有能力とスキルを活かしてプレイするってところか」


さらに話を聞いてると、スキルの中には特定の種族しか取れないモノもあるらしく、そのスキルが無いと進めないエリアもあるらしい。


「で、なんでそのCWOが二つも手に入るんだ?」


本題に戻すと努は偉そうに胸を張る。


「それは俺が……………………CWOのβプレイヤーだからだ!」


今度はいつものように大声で発言する。予め予測できていたので両手で耳をふさいでいたが、驚いたクラスメイトたちから罵声が響き、ペコペコと各方面に頭を下げている。


「……すまない、話が途中だったな」


律儀に全員に頭を下げ終わった後、再び俺に向きあう。


「βプレイヤーにはタダで製品版が送られる。 そしてβプレイヤーの中でも優秀な成績を収めた俺のようなプレイヤーには感謝としてもう一本送られてくるというわけさ」


「なるほど、納得した。 で、それをなぜおれに言う?」


ゲームに興味が無い俺よりも、他のゲーム好きなやつらに渡せばいい。もしくは所属しているゲーム研究会に寄贈すれば今後の地位は約束されたものになる。そんなことよりも俺にCWOを渡すメリットが見当たらない。


「単純にお前と一度遊んでみたいと思ったんだよ。 VRMMOでな」

「物好きなやつ」


思わず苦笑する。自分に利益が無くても、相手のために行動する。それが斎藤努という男であることをすっかり忘れていた。


「で、どうする?」

「申し出はありがたいが……」


ここまで言ってくれているのだからOKを出したいが、俺のゲーム技術でプレイできるかどうかは心配だ。昔有名だった某勇者RPGでも序盤のボスに勝つのに通常Lv10あれば勝てるモノをLv20まで育ててやっと勝てたのだから。それぐらい俺とゲームの相性は良くない。


「そういうと思ってとっておきの情報を教えてやる」


それをよく知っている努は一枚の紙を見せた。


「これは?」

「公式ページで昨日発表されたCWOのスキルリストだ。」


スキルリストを受け取り眺めていく。【剣】や【杖】のような武器系に【火属性魔法】【時空魔法】のようなファンタジー関連、さらには【ジャンプ】や【隠蔽】など行動関連、そして【騎士】や【呪術師】などの職業も記されていた。ざっと見ただけでも50以上はあるだろう。いくつか“New”と書かれたスキルもあるがこれは正式版で追加されたスキルだろう。


「これがどうか……」

したのか? という声は喉から出なかった。俺の視線がある一つのスキルの名前に集中している。


「そういうことだ。興味出てきたろ?」


食べ終えたパンの袋を丸め、一緒に買ってきたパックジュースごと教室の隅にあるゴミ箱へと投げる努。美しい放物線を描くそれを見ることなく、俺はスキル欄に書かれていたその職業を口に出した。


「【錬金術】」


言葉を発し終えたと同時にゴミ箱が音を鳴らした。

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