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VRMMOの錬金術師  作者: 湖上光広
第三章:希望を照らす想い
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特別話:チョコ聖戦

初めに謝罪を。すっかり忘れてましたバレンタインデー。なので急きょ書き上げました。


感想コメント頂いた灯狩蜥蜴様。本当にありがとうございました!

「2月14日。そう、この日は男にとって最も大事な日だよな?」

「俺としてはどうでもいいな」

「なのに! なぜ! なんでその日が日曜日なんだよー!?」

「うるさい」


何時ものようにCWOのルーチェの中で調合しているときにいきなり入ってきたライン。知り合いは自由に入れるように設定しておいたのを今は後悔している。


「しかし、今回のイベントは面白いな。チョコをサルから奪うなんて」

「申年だからってこれはないよな」


今年のバレンタインデーイベントだが、去年同様運営から女性プレイヤーにはチョコが一個贈られ、女性NPCからは好感度によってランクが異なるチョコをもらえる。

しかし去年もらえなかった男性プレイヤーからの要望によって今年はだれでもチョコを獲得するチャンスがある。


それが『チョコ争奪! サル狩り合戦』だ。

運営が用意した特別なフィールドにはサルがいたるところに存在して自由に行動している。そのサルを倒すと〝○○からのチョコ引換券″が手に入る。○○には女性NPCの名前が入っており、その人に渡すとチョコがもらえるという仕組みだ。

これだけなら平和なイベントだったんだが、このイベントが『争奪』になっているのがポイントだ。実はサルの数=女性NPCの数となっているので仮に人気者の女性NPCがいるとその人のチョコが欲しい人たちで殺し合いが始まってしまうのだ。


そう、ルーチェでお世話になっている売り子の皆さんのチョコ目当てなプレイヤーによる殺戮がすでに予想されているのだ。

他にも有名な女性NPCは当然いるが今回の殺戮はそれだけではない。

せっかくチョコを獲得しても「これだれ?」となってしまうプレイヤーも当然いるだろう。普段なら掲示板とかで質問できるが、このイベントに参加するのはチョコがもらえず、チョコが欲しいプレイヤーばかり。そんな人たちに質問できるはずがなく、自分で探すしかない。そして諦めてそれを放棄すればそれをめぐって殺戮が始まる。

……いったい誰だこんなイベント考えたのは。





そして当日、去年同様女性NPCの皆さんからチョコをもらう。となれば当然イベントに参加する必要はないのだが、サルが多く生息するフィールドということで森林フィールドとなっている。つまり、俺が知らない草のアイテムがあるかな~と思いフィールドにお邪魔しています。


「おお、すでに始まってる」


予想通りこれまで獲得したことのない草を【看破】で探しながら歩いているとあちこちから聞こえてくる爆発音、武器同士の甲高い音、そして怒号。


「すばしっこすぎるだろ!」

「なんだあのサルども!?」

「おとなしくチョコ寄こしやがれー!」


俺も数回見ているがサルはかなり動きが素早い。そのため聞こえてくる怒号のほとんどがサルに対してのものだ。中には「チョコGET!」「そいつ寄こせ!」からの戦闘音という連鎖もあるが。


「あれ? アルケさん?」

「おや? カナデちゃん?」


次の場所に移動しようとすると前方からカナデちゃんが歩いてきた。どうしてここに?


「あ、アルケさんも薬草を採取に?」

「ああ、そういうこと。いや、俺は薬草以外にも使えそうな草をね」

「そういえばそうですね」


それとカナデちゃんは乱戦の様子を見ておくことでどういうタイミングで回復・支援系の魔法を放ったらいいかのイメージトレーニングも兼ねているようだ。これはラインの指示らしい。


「でも、怖くない?」

「私のチョコはすでにアーシェに渡してありますし、そのことをラインさんが初めに大声で宣言しているので私にチョコを求めてくる人はいませんよ」


ほう、ラインにしては上出来だ。今度ホットココアでもおごってやろう。


その後はカナデちゃんと仲良く薬草摘みだ。そして十分な薬草と毒草、あと鑑定できない草も一緒に採取してルーチェに戻った。








「で、これは何だ?」

「俺に訊くな」


俺とミシェルの視線の先、ルーチェにはフェアリーガードの隊員たちが列をなしている。そして出てきた隊員たちはみんな幸せそうな顔をしている。

その顔を見て察した。


「売り子のみんなはそっちにも人気なんだな」

「当たり前よ。『水仙』の遊女なんだから」


俺の声に応えたのはエイミさん。彼女の立ち位置は列整理という名の制裁役だ。万が一割り込みなんてしようとしたら遠慮なく丸焦げになる。

周辺で転がっている男性プレイヤーのように。


「でも、今回はフェアリーガード限定なんだな。チョコの配布」


今年ももらえることを期待していた男性プレイヤーたちの表情はまさに絶望だった。あの顔はしばらく忘れられそうにないな。


「去年サービスしたおかげでたくさんの客人の方が来店してくれましたので、今回はフェアリーガードの方を対象にしてますよ」


にっこり笑うティニアさん。その笑みが少し怖いです。


「チョコといっしょに割引券付けて『水仙』にも来てもらう。商売人ですね」

「これでもフェアリートレードをまとめてますからね」

「あまり絞らないでくれよ」

「それをティニアさんに言っても意味ないでしょ」


まあ実際は今回のイベントの関係上、女性NPCに勝手にチョコを作られるとイベントそのものが成立しないからなんだろうけど。


そしてフェアリーガードの隊員たちが去っていくと次に訪れるのは売り子の皆さんのチョコ引換券を持ってきたプレイヤーたち。

それを二階の窓から見ている俺はかなり呆れた顔をしている。


「いや、直前まで戦闘なのかよ」

「これはすごいですね」

「バカばかり」


いっしょに見ているのはティニアさんとセリムさん。

そういえば全女性NPCのチョコ引換券があるのでセリムさんのも間違いなくあるはずなんだろうけど、この人を見つけられる人まずいないだろうな。ティニアさんのを持ってきた場合は売り子の方から連絡が来るようになっている。


そして店に入れば戦闘終了。もし店にまで被害が出るようならだれも通さないと事前に伝えておいてよかった。念のためにミシェルとエイミさんには引き続き警備をお願いしてもらっている。あの二人なら問題ないだろう。


その後も同じような光景を見ながら日付は変わり、こうして俺のバレンタインデーは終わっ……ラインからチャット?






*ライン視点*(少しだけ時間軸が戻ってます)


「ふぅ~。なんとか三つゲットだぜ!」

「ッチ、マスターだからって遠慮したのが失敗か」

「おいこら聞こえちまうぞ」


いや、聞こえてるからな。後で覚えてろよ。

しかし、知ってる名前でよかったな。でもせっかくならやっぱりあの売り子さんたちのチョコ欲しかったなー。


「そういえば知らずに残ってる引換券があったな」


アイテムボックスから出すとそこに書かれているのは〝パロンからのチョコ引換券″と書かれている。

実は終了1時間前、つまり23時の段階で手元に持ってて所在地がわからない人からの引換券は掲示板に掲載することを男性プレイヤーたちで決めていた。知ってる人がいれば一番最初に名乗り出たプレイヤーに渡すことも同様にだ。


当然誰も知らない女性NPCの名前も存在しており、その一つが俺が持っていた引換券だ。すでに15日になっているのでもう無効だが、せっかく獲得したのならどんな相手か知りたい。


(そういえばアイツは女性NPCとの接点多かったな。今更だが訊いてみるか)


俺はまだダイブインしていることを確認してからアルケにチャットをつないだ。


≪おう? どうした?≫

≪悪いな。実は誰も知らない名前の引換券があってな。パロンって名前に心当たりあるか?≫

≪……いや、聞いたことないな≫

≪そっか。用件はそれだけだ。じゃあな≫


さすがにアイツでも知らないか。さて、明日からまた攻略がんばりますか。

チョコは大事に取っておこう。



*ライン視点終わり*




翌日パロン様を尋ねると「あ、アルケさん。一日遅れましたがこれどうぞ~」とチョコをもらいました。すごくおいしかったです。

すまんライン。明日絶対にホットココアおごるよ。

アルケ「いったい誰だこんなイベント考えたのは」

はい。私ですw


皆さんもよいバレンタインデーをお過ごしください。

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