第五話:新たな調合、ではなく……
新年あけまして、いやあけ過ぎておめでとうございます。
今年もCWOをよろしくお願いします。
CWO「あれ? 正月回は?」
作者「作る余裕がなかった」
アルケ「まあ、いつも通りだな」
作者「ご期待してくれていた読者の方々本当にごめんなさい!」
錬金術ギルドと連携を約束した次の日、いつも通りに授業を受けていると隣の席から紙を渡された。
「努から? 今日ダイブインしたら相談がある?」
なんでわざわざこんな面倒なことをするのかはわからないが相談があるのなら後で聞こうと返事を書いて隣に渡す。
無事に届いた紙を見て振り返りなぜかガッツポーズをする努。気持ちはわかるが今受けてる授業を忘れてないか?
「ほう? ずいぶん余裕があるんだな?」
「……」
こちらに表情を向けているので冷や汗が流れているのがよくわかる。その目が「助けて」と叫んでいるが残念ながら俺にできることはない。
「くそ、あの鬼教師。本気で殴りやがった。今度体罰で訴えてやる」
「その前に授業を聞かなかったお前が親に怒られるぞ」
場所変わってブレイズのギルド、ラインの個室にいる。訪れるのはコロセリムの時以来だがあれからも人数が増えてるのでかなり広くなっている。
部屋数も増えて古参メンバーにはそれぞれ個室が強化され、他にも有力なメンバーにも個室があるそうだ。
ラインの個室にも前にはなかった剣の収納棚があり、そこには俺ではまず持てないと思われる大きさの剣が三本も飾られている。
「それで? 相談は何だ?」
今日から新たな錬金術を試そうと思っていたからさっさと終わらせたい。そんな気持ちが顔にも出ていたのか、ラインも真剣な表情になった。
「実は今攻略しているエリア3の件でお前にも手伝ってほしいんだ」
「俺が?」
「ああ。当然戦闘ではなく錬金術を使ってだ」
話しが見えないので詳しく事情を訊くことにする。
エリア3全体に関わると言われているとエリアクエスト『魔族対戦! 王城を奪還せよ』。最初の街以外は魔族に占拠されていることは聞いていたが、実は最初の街も城壁が崩れている部分があり、そこを補強しようと考えているらしい。
それだけではなく質のいい金属を投入して強化したいらしく、そこで俺に鉄を大量に生産してほしいということだった。
「それなら昨日の錬金術ギルドに頼めよ」
「彼らが作る鉄だとエリア3で採取できる鉄と同品質なんだ。それだと強化にはならない」
ほう。エリア3でも鉄が採取できるのか……あれ? エリア3といえばアレがあるんじゃないのか?
「前に話してた魔武器を作る鉱物で強化できないのか?」
「それなんだが……採取できる洞窟も魔族がいる。しかも簡易な砦みたいなものまで造ってるから簡単には採取できないんだ」
「なら先にそこを攻略すれば……」
「それはすでに他のギルドに任せてる。俺たちブレイズは拠点防衛チームに属してるからそこには関われないんだ」
へぇ~。ラインたちが攻略に参加しないのは珍しいなと思っていたらその理由を聞いて驚いた。
「魔族の進行?」
「ああ。近いうちにあるんじゃないかと思う」
なんでも斥候のような存在を見かけたプレイヤーが複数いたので強力なプレイヤーは進行に備えているらしい。話を聞いていると過去のジャイアントデーモンの時を思いだすな。
「なら、これを渡しておくよ」
「なんだ? 新兵器か?」
兵器は間違いないがせめて調合アイテムと言ってくれないかな?
「覚えてるか? 檻に捕まったことがあっただろう?」
「ああ、そういえばそんなことも……おいまさか?」
「そのまさかさ。この間偶然できた代物だ」
トレード画面を表示し、そこにブラックボムを2本入力する。扱いを間違えるととんでもないことになるが、ラインならちゃんと活用してくれるだろう。
「おお! これは助かる! もしかしたら、これで何とかなるぞ!」
「は?」
喜んでくれるのはうれしいがそこまでか?
「だってよ! これがあれば砦だって粉砕できるだろう!?」
「いや、耐久値が無いとだめだぞ?」
「大丈夫だって! NPCとはいえ人が造ったものだ!」
すまん攻略組の面々。とんでもないことになるかもしれない。
俺は顔も知らない攻略組の面々に静かに祈りをささげた。
アトリエに戻ってきて今日の補充分を調合する。すでに錬金術ギルドがフレイムボムなど売ることは知らせているが、販売するのはもう少し先だ。そのためもうしばらくは忙しい日が続くことになる。
「そういえば鉄を頼まれてたな。素材は……あるな」
今日の調合を終えて新たな調合をしようと思ったが、さすがに頼まれたのをやらないのは失礼だなと今ある素材で作れる鉄を調合していく。
その結果、作れた鉄は30個程度。これだけあれば十分だろうと思ったらアナウンスが入った。
『鉄の調合が100回を超えました。〝職人の心得″の解放条件を満たしました』
アナウンスを見て〝職人の心得″を出してみると本が眩しく光っている。開いてみると新たな調合、いや進化した調合が書かれていた。
〝黒鉄″・R・インゴット
重さは鉄と同じだが鋼よりも固いインゴット。
調合方法『〝鉄(ランクR以上)″×1+〝黒曜虫の甲羅″×2』
「ここでこんなものが出てくるのか。これも熟練度みたいなものかな」
調合方法も出てきたが、黒曜虫なんて聞いたことないな。
「こういうのはラインに訊くのが一番だな。あいつの目的とも一致してるしな」
さっそくリンクチャットを開いてラインと連絡を取る。
《どうした、急に?》
《実は鉄よりも強いインゴットがあるだが……》
《鉄よりも固い? 鋼か? まさかのアダマンタイトか?》
最後のやつは知らないが、後で聞いておこう。
《いや、黒鉄っていうインゴットだ》
《聞いたことないぞ》
《鉄を調合したらほんの新しいページが解放されたんだ。そこに載っていたインゴットだ。鉄と同じ重さで鋼よりも固い》
《マジか!? すぐに作れるのか!?》
《いや、黒曜虫の甲羅が必要なんだが、知ってるか?》
《……すまん、わからないから周りにも訊いてみる》
どうやら他にもプレイヤーがいるみたいだな。しかも結構聞いてる。
というか、先にリンクチャット切るのがマナーじゃないのか?
その後しばらく他のプレイヤーに質問してる様子がリンクチャットから聞こえてきたが、ようやく手がかりを聞くことができた。
《というわけだ。聞こえてたよな?》
あ、わざとだったんだな。切らなかったの。
《ああ。ドワーフ族エリア第二の街郊外の森林だな》
《悪いが俺は協力できない。ブレイズの他のメンバーも同様だ》
《了解。こちらで何とかしてみるよ》
最後に《すまない。頼んだ》と言ってリンクチャットは切れた。ドワーフ族エリアとなればアリアさんたちの協力は得られないし、ドワーフ族の知り合いはシュリちゃんとリンネの二人だがどちらも生産職だ。戦闘は期待できない。
さて、どうするかな?
いよいよ始まります新エリアのお話です。新たな錬金術も出していきますので、改めて、今年もよろしくお願いします。
では、来週の水曜日にまたお会いしましょう。




