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VRMMOの錬金術師  作者: 湖上光広
第二章:新たな力
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第九十八話:新生活

水曜日投稿できず申し訳ありませんでした。火曜日から「風邪」さんがいきなり同居してきたのでそれの対応をしてました。


では、後日談スタートです。

大規模クエストが終わってすでに三日。俺は前のように楽しい錬金術生活を送っている……一応は。


「あとはポーションだけか」

「アルケさん、今納品に行ったらさらに50本ほど追加して欲しいって」

「……」

「合計300本超えてますね。大丈夫ですか?」


声をかけてくれるエイミさんに笑みを見せ安心させる。いや、意味ないのは知ってるけど。




こんな状況になった原因はもちろんあのクエスト。

まず、俺が作ったポーションは効力の効果で普通よりも回復量が高い。そのことをあの時ポーションをもらった人たちが気づき、今も買いに来てくれている。リピーターだっけ、こういうの?


さらにそこから話が掲示板にまで広がり『回復量が高いポーションが妖精族エリアの〝ルーチェ″という店で買える』と話題になった。

今までも来店している客に加えさらに客が増え、おまけに新しい人たちに古くから来ている人たちが売ってる商品、つまり錬金アイテムについてご丁寧にレクチャーしてくれたおかげでポーション以外も売れるようになった。


こうなればわかるようにまたしても掲示板で話題になり、今や『初心者は冒険に出る前にルーチェで買い出し』が常識となりつつある。あ、冒険っていうのはフィールドに出るという意味だ。たまに聞く「うれしい悲鳴」を自分で体験するとは夢にも思わなかった。




そんなわけで前とは違って忙しくなったが当然デメリットだけじゃなくメリットもある。


実はラインたちによって強制的にポーションを作らされたあの日、【上級錬金術】のレベルがカンストし、残っていたランクポイントを全て費やして【特級錬金術】にランクアップした。

そのとき新たに身に着けた付属スキルが【調合短縮・強】だ。調合時間が半分になるこのスキルのおかげで今も何とか注文を品切れなくこなせるようになっている。

そして作った分県検知が増えていくのでレベルは少しずつ上がっている。それが俺にとってのメリットだ。レベルが上がればその分難しい調合もできるようになるしな。


「よし、300本終わり!」

「行ってくる」

「行ってらっしゃーい」


俺が作ったポーションが入った〝聖樹の籠″を背負ったセリムさんが転移魔法陣でルーチェに向かい、エイミさんがそれを見送る。この3日間で日常になりつつある光景だ。


「さて、ダリル茶でも淹れますか」

「さらっと高級品が出てくるのが怖いですね」

「パロン様からの差し入れですので」

「本来あり得ないですよ? ハイフェアリーの長と知り合いになるなんて」


そう言いながらもエイミさんの目は入れたばかりのダリル茶に釘付けだ。

フェアリーガードの隊長なのでそこそこのお給料はもらっているらしいがそれでもダリル茶となるとうかつに手が出せないらしい。それをミシェルから聞いてしまったのでいまだにダリル茶の市場価格は知らない。知ってしまったら飲めなくなるかもしれないからな、恐れ多くて。


それに感謝を込めて毎日アイスを送っている。転送魔法陣は便利ですね~。






そんな日々が続き、早一週間。この日、とんでもない出来事が起こった。


「そうじゃ、悪い提案ではないじゃろ?」


突然ルーチェに訪ねてきた例の老人がある提案を話してきた。その提案は俺にとってもとてもうれしい提案だった。


「でも、大丈夫なんですか?」

「さすがにいきなりは無理じゃ。だからわしのほうでもう少し指導してからになるの」

「はい。よろしくお願いします、おじいさま」


最後の言葉で気づいたかもしれないが、今ここには俺と老人ともう一人、マリルさんがいる。

マリルさんがいるのは、老人の提案の要となるのが彼女だからだ。


「それで、いつごろの予定ですか?」

「早くてあと三日かの」

「ずいぶん早くありません?」

「さっきおじいさまが言ってましたよね、もう少しって。実は少し前から指導を受けていまして、昨日からようやく調合を始めたんです」


マリルさんの話によると、売り子をするようになってますます興味がわいたマリルさんは父親に内緒で【錬金術】のことを聞くために老人の家を訪ねていた。

それが昨日父親に見つかってしまったのだが、「遊女になった時にも言ったが、お前が決めた道なら文句は言わないよ」と父親が自ら老人に指導をお願いしたらしい。


関係を断ったはずの親子が孫によってその絆を取り戻す。まるでドラマみたいだな。

実際のところはまだお互い心を完全に開いたわけではないみたいだが。




そんなわけでCWO時間にすると五日後、現実時間からすると三日後にマリルさんは老人から合格をもらった。

その翌日、ルーチェは緊急閉店。買いに来てくれたプレイヤーと妖精族NPCの方にはフェアリーガードから借りてきた仮設テントみたいな感じの物を使って臨時営業した。


閉店の理由は『増築工事のため』と立て看板を用意しておいたので反論は無し。どうなるかは後のお楽しみとさせてもらった。


大工もできるというのでオウルとその弟子たち、そしてクエストで知り合った『カーペンターズ』のみなさんにもご協力してもらい、今までの1階建てから大幅増築して3階建てになる。


なお、今回の増築は来週行われるアップデート対策も兼ねている。なんとアップデートにより俺のアトリエやシュリちゃんの工房のような施設を『自分が設計した家』を条件に移築できるようになるのだ。

そこで「自分の店だから外装や内装は決めたい」と意見を言い、それが認められて俺の設計で自宅を作ってもらうことにした。


中には当然店とアトリエスペースを作り、さらに3階部分には売り子の方々専用の自室も作った。これには三人とも「もったいないです!」と反論してきたが、「皆さんが自由に使っていい部屋という意味です。言わば各自の休憩場所ですのでもらってください」と言って納得させた。




そして現実時間でさらに三日後、いよいよ新しい自宅がお披露目となる。


家には巨大な布がかぶせられ、それを火属性魔法で燃やして姿を見せるのが妖精族の伝統らしい。そのため家の素材は全て水属性魔法で補強されている。

そんなことすると余計にお金がかかると思いきや「これは当然の対処なので一切料金はかかりません」とのこと。案外太っ腹ですね妖精族。



家の前には当然俺がいて、従業員のマリルさんとクララ&クラリスの姉妹、さらにお披露目に参加してくれたNPCとしてティニアさん率いる遊女全員、一名除いてフェアリーガードの隊長&副隊長全員、そして老人がいる。

見目麗しい女性がたくさん+見るからに強そうなNPCの集団ということで周りにはどういう状況なのか見学している大勢のプレイヤーがいる。上から見たら本当にゴミみたいに見えるかもしれないな。


「現実逃避するのはいいけど、そろそろ始めるみたいだぜ」


関係者枠ということで俺の近くにはラインたちブレイズのメンバーがいる。加えてエルジュたちとなぜかアポリアさんたちもいる。「面白そうだから見に来た~」と言って歓迎した少し前の自分を殴りたい。あなた方いるから周りから「あいつ何者!?」的な視線をすごい感じる。


「では、いきま~す!」


そんな俺の心境とは真逆の満面笑みで一番高い屋根に立つエイミさんが頭上に火の玉を出現させ、それを布に向かって落とす。本人は着弾前に背中の翅で空へと飛び、火の玉は布に当たり布全体に火が灯る。


火はしばらくの間燃え続け、やがて消えて新しい家の全体が現れる。


1階部分は店と奥に錬金術ができるスペース。これはマリルさん用と緊急補充用の小規模なスペースで、俺やセリムさんが錬金術をするためのスペースは全て2階にある。

ぶっちゃけルーチェを1階に、アトリエを2階に移築して、3階にそれぞれの自室を付けたのが新しい家となる。設計のセンスなんて俺にはなかったのさ……


それでも集まってくれた人たちから「おめでとう」の言葉をもらい、早速開店した新装ルーチェは過去最高の販売額を記録した。


アトリエを移転できるのはもう少し後だが、こうして俺の新たなCWO生活が始まったのだ。

次回は水曜日投稿できるはず……です。



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