第九十四話:一難去ってまた一難?
戦闘回ばかりだったので一度ブレイクタイム。
*間違って23時投稿になっていました。本当にごめんなさい!*
転移した先は要塞遺跡の入り口近くだった。同時に腕に抱いていたパルセードが消える。
慌てる俺の前にウィンドウが表示される。
『召喚可能時間が過ぎたため【召喚】されたモンスターは自動的にリングに戻りました』
『再召喚可能時間は以下になります。
パルセード:6時間後
スフィレーン:30日後』
再召喚までの時間長いなぁーと思いつつ、戦闘でしか召喚できないのか確認するために〝パルティリング″を調べてみる。
〝真・パルティリング″・特殊アクセサリー・Ld
パルティリングが覚醒した状態。パルセードが【召喚】可能となっている。
*【召喚】:特定の条件を満たすことでモンスターを味方として登場させることができる。素の強さやLvによって召喚できる時間や再召喚までの時間が変化する。
*パルセード*
Lv.1
装備:無・無・無
【夕立】:前方に強い雨を降らせる。相手の動きを止めることができる。
【時雨】:全方位に雨を降らせる。状態異常を回復できる。
【雨の加護紋章】:特殊条件を満たすことで得られる特殊な特別な紋章。
確認した結果わかったのはパルセードのことばかり。どうやらスフィレーンはあくまで呼び出せるだけらしい。これが契約していないということか。
あと、どうやらパルセードは何かを装備できるよう。これは後で要検討だな。
そして先に遺跡の外に出ていたみんなと合流し、一度北の集落に戻ることにする。
その道中、ティニアさんがなぜかそわそわしながら問いかけてきた。
「あ、あの。アルケさん。先ほどの、パルセードみたいな方ですが……」
「ああ、スフィレーンがどうかしましたか?」
その一言を聞いた途端、ティニアさんは驚愕の表情を浮かべ、アリサさんも「うそぉ!?」と大声を上げる。
一方で後輩二人はいきなり大声を上げたアリサさんの声に驚いて耳をふさいでいる。
復活した二人に謝るアリサさんをほっといてティニアさんに訊いてみるとやけに興奮している。
「スフィレーン様と言えば水の聖霊様の寵愛を最も受けている大精霊です! スプライトのあちこちにその存在を祭った像があるくらいですよ!」
「え、どこに?」
「……『水仙』の入り口にもあるのですが……」
マジか。今度ちゃんと確認しておこう。
その後もスフィレーンにまつわる様々な話を聞き、改めてその存在の偉大さを知る。そういえばスフィレーンの説明文に『天の女神』って書かれてたな。あれは誇張じゃなかったんだな。
そんなこともありながらたどり着いた北の集落はまるでバーゲン会場だった。
奥にある巨大なテントを到達点として、数えるのもばからしいくらいの人が長蛇というより長竜みたいな感じで列を作っている。
一体何があったのかと思った矢先、ラインからメールが届く。
『よう、今どこにいる?』
それに対し『今北の集落に着いたところ』と返すとある宿の名前を伝えられ、そこに来てくれないかとお願いされた。事情を説明し、みんなの了解も得たのでその宿に向かう。
着いた宿で教えられた部屋番号を伝え中に入る。そこにはラインと一緒に上様攻略に向かったブレイズのメンバーがいた。
「よう、どうした?」
「いや、今の状況を説明したほうがいいと思ってな」
やけに親切だが、こういうときのこいつはよくないことを考えていることが多いんだよなぁ。
「今ここすげぇ人だろ?」
「確かにな」
「実は、前に居座ってた回復薬販売集団が消えたんだよ」
「消えた?」
あいつら最後まで粘ってそうだったよな。どういうことだ?
「あいつらの本当の目的は装備だったんだよ。ここの素材で作れる強力な装備を獲得するためにアイテム作れる奴と手を組んでたんだ。そして「装備を集め終えたからもう来ない!」って叫んで出て行ったんだ」
なるほど。確かにここの敵は強いから当然その素材で作った装備は強い。それが目的だったわけか。
消えた理由はわかったがそうなるとあの膨大な人達はいったい?
「その集団が消えたということは回復薬を販売できるようになった。さらにもうすぐクエストが終わるから多くのプレイヤーが集まってきてあの有様さ。俺たちも上様倒して戻ってきた圧倒されたよ」
「よし。これで謎は解けた。じゃ、俺たちはこれで……」
「待て待て。これからが本題だぞ」
そう思ったからここで話を終わらせたかったんだよ。
「というわけで、今ここには回復薬を欲しがるプレイヤーでわんさかだ。つまり、稼ぎ時じゃないか?」
「つまり、ポーションを作ってそれを売れば俺は儲ける。そしてお前たちがその手伝いをしておこぼれをもらう……そんな感じか?」
俺の指摘に横を向いて口笛を吹く仕草をするライン。俺たちは小学校時代からの付き合いだぞ? それくらいお見通しだ。
「……いいじゃないか! 金はいくらあっても足りないんだよ!」
とうとう本音を見せるラインと同じく頼み込んでくるブレイズのメンバー。まあこうなると思ってすでに対策はしておいた。
「というわけなので、後はお願いしていいか?」
振り返って声をかける。開いた扉から見える姿はおなじみアーシェ。
さて、いつかの再現になる前に帰りますかと扉に向かったがアーシェが動かない。
「アーシェ?」
「ごめんね、アルケさん」
言葉は優しいがその手には見たことない鞭。どうやら新しく手に入れた鞭らしいがなんでそれを持ったまま動かないの? そしてなんで俺に謝るの?
「悪いがアルケ。この案はアーシェには事前に伝えておいて了解も得ている」
「というわけで、ブレイズのためによろしく♪」
……えぇ~!?
結局断り切れず、俺もポーションを販売することになる。前にも売っていたことがあったからか顔が知られていたらしく、すぐさま売る側へと通される。
「では、この場所でお願いします。道具等はお持ちですよね?」
「はい。大丈夫です」
巨大なテントの持ち主でもあるギルド〝リアルショッパー″の一人に案内され、34番と書かれた販売台にて待機する。その間に〝簡易錬金窯″を準備する。他にも必要となる水と薬草は一旦手持ちで何とかする。足りない分は今ブレイズのメンバーが回収に向かっている。
なお、後輩二人とティニアさん、アリサんさんは何をしているかというと……
「この格好必要なんですか?」
「でも、かわいいじゃん」
「面白い服装ですね」
「これが客人の世界の召使いの服なんだ。ちょっと動きにくくない?」
最後のアリサさんの声で分かる通り給仕服、いわゆるメイド服で前のように列整理と売り子をしてくれる。衣装は〝リアルショッパー″の方が貸してくれたが、いったい誰だ作ったの。
その後予想を超えたプレイヤーたちの襲来によりかなりの額を稼いだ。本当なら要塞遺跡を終わったらそのまま最後の遺跡に向かうつもりだったがあまりにも時間がかかってしまったので明日になった。
ちなみに、メイド服はそのままくれたみたいでティニアさんはさっそく『水仙』で使ったみたいだ。
「反応はどうでした?」
「それが、前のほうがいいと言う方が多くて」
どうやら妖精族ではメイド服よりも着物らしい。
しかし需要が無いわけではなく、メイド服は『水仙』の遊女の方々が外出用の服として活用していくそうだ。
アリサさんもそのまま活用するらしい。
一方、後輩二人はさすがに恥ずかしいらしく今後は着ないらしい。ちょっと残念だな。
次回で最後の遺跡。そして残り数話で二章は終わりです。
では、土曜日にお会いしましょう!